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“次世代チルドレン”誕生か。韓国代表、イ・ガンインら若手躍動に期待が集まるワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
イ・ガンイン(写真:ロイター/アフロ)

“次世代チルドレン”の誕生となるのだろうか。10月のW杯予選を2連勝で終えた韓国代表で若手の躍動が著しい。

ホン・ミョンボ(洪明甫)監督率いる韓国代表は、10月の北中米W杯アジア最終予選でヨルダン代表にアウェイで2-0、イラク代表にホームで3-2といずれも勝利し、3勝1分の勝ち点10でグループB単独首位に浮上した。本大会ストレートインとなる2位以内の確保へ、順調な歩みを進めている。

(参照記事:危機の韓国サッカー、W杯予選3連勝の“反撃”。ブーイングも消えたホン・ミョンボ監督は何を語ったか

勝利よりもさらに価値があったのは、“未来の動力”を確保したことだろう。

韓国代表は直近5年間、ポルトガル出身のパウロ・ベント、ドイツ出身のユルゲン・クリンスマンと2人の外国人監督が指揮を執る過程で“主力固定化”の現象が繰り返された。

「後方からのビルドアップ」というスタイルを完成させるため、頑なに主力メンバーを変えなかったベントは、2022年カタールW杯で目標であるベスト16進出を達成させた。ただ、韓国サッカーの未来のビジョンを見据えたときには疑問視されたのも事実だ。

ベントの後任としてバトンを受け継いだクリンスマンも、カタールW杯メンバーを中心にチームを構成したことで、チーム内競争力が低下したという批判を受けていた。

監督の起用に応えた若手たち

一方のホン・ミョンボ監督は、就任後初めて指揮を執った9月の2連戦(パレスチナ代表、オマーン代表戦)では既存の主力を中心にメンバーを組んだが、10月のW杯予選で大々的な変化を加えた。

MFペ・ジュノ(21、ストーク)、MFオム・チソン(22、スウォンジー・シティ)、FWオ・ヒョンギュ(23、ヘンク)など、20代前半の“若手欧州組”を多数起用したのだ。

彼らも、監督の起用に応えるべく自身の存在価値を堂々とアピールした。

ペ・ジュノは“次世代のスター”とも言えるような才能を思う存分発揮した。特に攻撃面で柔軟なドリブルとチャンス演出力を証明し、2試合連続でアシストを記録。ホン・ミョンボ監督就任当初から「ソン・フンミンに代わる才能の持ち主」と高く評価されていたなかで、期待に応えるパフォーマンスを見せた。

また、今年2月のアジアカップ以来、ホン・ミョンボ監督の招集を受けて約7カ月ぶりに代表復帰したオ・ヒョンギュも、A代表初ゴール含む2戦連発とアピールに成功した。

10月の最終予選では当初、身長193cmの大型FWイ・ヨンジュン(21、グラスホッパー)を招集することが考慮されていたが、セルティックからベルギー移籍後に好調を維持していたオ・ヒョンギュを選出した。

コーチ陣は、スペースへの裏抜けに優れたオ・ヒョンギュの強みを今回の2連戦で活かせると判断したわけだが、予想通り的中した。これに加えて、FWオ・セフン(25、FC町田ゼルビア)もイラク戦でA代表初ゴールを決め、ホン・ミョンボ監督の期待に応えた。

イ・ガンイン中心の“次世代チルドレン”誕生か

これらの選手は皆、北中米W杯の“エース”と目されるMFイ・ガンイン(23、パリ・サンジェルマン)とともに、長期的な活躍を期待できる存在だ。イ・ガンインはFWソン・フンミン(32、トッテナム)が太もも負傷で欠場した10月の2連戦で、なぜ自分が“韓国代表の看板選手”であるかを証明した。

一部では「イ・ガンインが相手の集中的なマークに苦しんだ」という見方もあるが、実際にはそうではないという意見も多い。『スポーツソウル』のキム・ヨンイル記者が説明する。

「ホン・ミョンボ監督が採用した変則的な3バックで右ウィングを担ったイ・ガンインは、相手を2~3人引き連れたことで、オーバーラップした右サイドバックのDFソル・ヨンウ(25、ツルヴェナ・ズヴェズダ)にスペースを生み出した。

ヨルダン戦でイ・ジェソンの得点をアシストしたソル・ヨンウのクロスも、このような場面から生まれた。イラク戦でも、イ・ガンインが巧みなドリブルで相手を翻弄し、鋭いパスを通じてペ・ジュノやイ・ジェソンにチャンスを提供した。

イラク戦でゴールやアシストこそなかったものの、イ・ガンインがMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた理由もそこにある」

今後、韓国代表はソン・フンミンやイ・ジェソンらの「1992年世代」、DFキム・ミンジェ(27、バイエルン・ミュンヘン)やMFファン・インボム(28、フェイエノールト)、FWファン・ヒチャン(28、ウォルヴァーハンプトン)らの「1996年世代」がチームの骨組みを成し、イ・ガンインを中心とした若手が飛躍するものと見られる。

かつてホン・ミョンボ監督がU-23韓国代表を率い、2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した当時、主力として活躍したMFク・ジャチョル(35、済州ユナイテッド)やMFキ・ソンヨン(35、FCソウル)などが“洪明甫チルドレン”と呼ばれた。

これからはイ・ガンインやペ・ジュノなど、2000年代生まれの若手が“次世代チルドレン”となるのか。2年後の北中米W杯に向けて、韓国サッカーの新時代が楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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