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「ゼルダの伝説」ハリウッド実写化は成功するか。そのヒントは「猿の惑星」新作にある!?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
この星では猿たちが勢力を広げ、人間は野生動物のような扱いを受けている

日本発の人気コミックやアニメ、ゲームが、ハリウッドで映画になる。このパターンはつねに注目されつつ、仕上がりについては出来/不出来の振れ幅が大きかったのも事実だ。

最大の失敗と言われているのが、今年(2024年)3月に亡くなった鳥山明氏の「ドラゴンボール」のハリウッド実写化『DRAGONBALL EVOLUTION』。2009年の同作は、主人公・悟空役のジャスティン・チャットウィンが鳥山氏逝去の際にインスタグラムで「脚色がひどく、大コケして申し訳ありません」と謝罪して追悼するなど、今に至るまで残念な作品の“見本”であり続けている(それはそれでスゴい)。

攻殻機動隊」の実写化『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年)では、主人公の草薙素子をアメリカ人俳優のスカーレット・ヨハンソンが演じたことで論議を呼んだうえ、興行的にもイマひとつ。「銃夢」の実写化『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)も世界的にはそこそこだったが、当の日本では大きなブームは起こせず。昨年(2023年)、日本とハリウッドの共同製作による『聖闘士星矢 The Beginning』は作品評価も興行も、はっきり言って目も当てられない結果となった。

成功例は「マリオ」「バイオハザード」

人気コミック、アニメのハリウッド実写化は、このようにネガティヴな後味を残すが、ゲームになると成功例が目立ってくる。記憶に新しいのが、2023年の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』だろう。世界興収で年間2位、日本でも年間2位という特大ヒットを記録。何より、オリジナルのゲームのファンを満足させたことが大きい。かつて1993年に実写化された『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の大失敗(『DRAGONBALL〜』と同様レベル)を見事に払拭した。

その他のゲームからの成功作は、2002年から始まった「バイオハザード」シリーズが挙げられる。世界的にはそこそこの数字も、日本では回を重ねるごとに興収を増やし、映画として新たなファンを開拓。起源の国で愛されたのだから、合格と言っていい。

それに比べると『モンスターハンター』(2020年)は、「バイオ」の監督&主演コンビだったものの、数字的には盛り上がらなかった(日本では特に)。また『ファイナルファンタジー』は2001年の公開当時、最新のフルCGによる映画化を売りにしたものの無念の結果に。ポケモンをゲーム枠と考えれば、2019年の『名探偵ピカチュウ』は世界&日本とも年間18位のヒットでまあまあだった。そう考えれば昨年の「マリオ」の大成功は異例だ。

その勢いに乗って、次にハリウッドで映画化される日本発の人気ゲームが「ゼルダの伝説」である。「マリオ」と同様に任天堂が製作から深く関わっているので、安心感は満点。ただし「マリオ」はアニメだったのでオリジナルとの違和感も少なかった。今回の「ゼルダ」は実写であり、未知数の部分は大きい。そこで重要となるのが、監督の手腕だろう。任されたのはウェス・ボール

そのボールの最新作が『猿の惑星/キングダム』だ。前作『猿の惑星:聖戦記』から300年後を舞台に、完全に言葉を話すようになった猿たちが独自の文化も築き、独裁者が大帝国を作ろうとするドラマが展開。もはや人間側が言語を使えなくなっているようであり、隠れ住んでいる状況は、このヒットシリーズの基になった1968年の超名作『猿の惑星』に通じる。

荘厳な映像美があちこちに!
荘厳な映像美があちこちに!

この作品でボールの演出力が発揮されたのは、壮大な映像の追求力、そしてアクションの見せ方である。

ストーリーとして猿vs人間という構図もあるものの、メインは猿の中での凄絶な内紛。主人公のノアは強大な支配者のプロキシマス・シーザーの一軍によって村を追われ、人間の女性と出会い、その絆が物語を大きく動かす。格段にリアルに進化したモーション・キャプチャーによる猿たちのバトルは、たしかにデジタルではあるが、ひとつひとつのアクションが、そのカット割り、編集があまりに的確で、どんな戦いが起こっているのか、そしてその重量感や痛みがどれほどなのか、ここまで映像で鮮やかに伝わってくるとは! 同様の大作の中でもアクションの見せ方は異例なほどハイレベルであった。スピード感やダイナミズムを維持しながら、ここまでの映像に仕上げてくるのは、もちろんスタッフの技術にも頼っているわけだが、アクション映画におけるウェス・ボール監督のセンスが秀逸なのは間違いない。

アドベンチャーRPGの実写化にふさわしい経験

猿が支配した社会は、その風景の斬新さ、荘厳さに何度も目を見張ることになるが、たとえば人間が使っていた豪華客船が朽ち果て、それを猿たちが砦として使っているシーン。船のサイズが迫ってくるようなスケール感満点の映像では、ウェス・ボールの美的感覚に惚れぼれしたりする。この人、シンプルに絵の撮り方がうまい。現在43歳。まだポテンシャルが大きい監督だ。

もともとウェス・ボールは、「メイズ・ランナー」シリーズを手がけており、若者たちのアドベンチャー&戦いを描くことで演出経験が培われていった。同シリーズは、巨大迷路の謎を解いていくプロセスも見どころで、要するにゲーム的醍醐味も備えていた。「ゼルダの伝説」でも、その才能がいかんなく発揮されてほしいが、どうなるのか。少なくとも『猿の惑星/キングダム』を観る限り、持ち前のセンスを失わなければ、誤った方向へは行かないような気がする。いずれにしても「猿の惑星」シリーズにそれほど興味がなかった人も、前作「聖戦記」を観逃している人も、アクション映画の真髄をシンプルに満喫する意味で、『猿の惑星/キングダム』は心からオススメしたい一作なのである。

ウェス・ボール監督
ウェス・ボール監督写真:REX/アフロ

『猿の惑星/キングダム』

5月10日(金)全国ロードショー

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c) 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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