米で「大胆な」巻き込み事故多発 車が2階に、飛行機が住宅に「もはや人ごとではない」
日本で高齢ドライバーによる巻き込み事故が後を絶たず社会問題になっているが、アメリカでは自家用車が建物「2階」部分に突入したり、小型飛行機が住宅に墜落したりという「大胆な」巻き込み事故が多発し、近隣住民から不安の声が上がっている。
建物「2階」に車が飛んだ?(NJ)
ニュージャージー州トムスリバー地区で11月10日午前6時30分ごろ、若者2人が乗った自家用車が、商業用建物の2階に突っ込み、2人とも死亡した。(nj.comの報道)
亡くなったのは、ブレイデン・ディマーティン(Braden DeMartin, 22歳)さんとダニエル・フォーレイ(Daniel Foley, 23歳)さん。事故を起こした2010年製ポルシェ・ボクスターを運転していたのはディマーティンさんで、スピードの出し過ぎが事故の原因だと見られている。
(映像)2階部分に大きな穴が空き、突っ込んだ車は真ったいらになり、事故の惨状を物語っている。
事故現場は緩やかなカーブになっており、近所の住民は「どのようにしたらこのような事故が起こるのか?」と首を傾げた。
警察の発表では、車は中央分離帯を越えて道路脇に衝突した後、地面の窪みにバウンスして空中に跳ね上がり、回転しながら逆さの状態で、建物の2階に突っ込んだようだ。
普段この建物は、不動産カウンセリング企業やソフトウェア企業など計4社が入居しているオフィスで、事故により建物は崩れやすく危険な状態となった。ただし、事故当時は日曜日の早朝だったため、室内に人がいなかったのが不幸中の幸いだった。
飛行機による巻き込み事故も多発
この国では、巻き込み事故の凶器は車のみではない。
ある日、自宅のソファでリラックスしながらYouTubeでも観ていたら、突然轟音がして自宅が揺れたので外に飛び出すと、小型飛行機が隣の家に落ちていた。そんなイメージはつくだろうか?
富裕層がアマチュアパイロットとして趣味で小型飛行機を操縦するのも珍しくないアメリカでは、飛行機が住宅地に墜落し、地上の人々や家を巻き込む事故が後を絶たない。
ニュージャージーで起こった今回の車両事故の3日前には、カリフォルニア州サンバーナディーノ郡アップランド市の住宅街に小型機が墜落し、民家が炎上する大事故が起こったばかりだった。(Los Angeles Timesの報道)
事故が発生したのは11月7日午前11時ごろ。事故機は、トーランス市ザンペリニ・フィールド空港を飛び立った2007年製の小型シーラスSR-22で、墜落したのは離陸から約19分後のことだった。
事故により住宅の一部が燃え、操縦していた男性の死亡が確認されたが、室内にいた住民の男性と男児は事故後すぐに避難し無事だった。
ロサンゼルス・タイムズ紙によると、今年だけでアップランド市のケーブル空港周辺では小型機の墜落事故が頻繁に発生しており、「木曜日の事故は少なくとも3機目」とか。(巻き込みではないが、今年5月に発生した第二次世界大戦時代のドイツ製レプリカ機の事故など)
ニューヨーク・トライステートエリアでも小型飛行機事故は頻繁に発生している。つい先月も巻き込み事故が起こったばかりだった。(記事)
10月30日午前11時ごろ、ニュージャージー州の住宅街に小型飛行機が墜落。巻き込まれた3棟が炎上したが、幸い住民は不在で、こちらも地上側の死傷者はいなかった。(死亡したアマチュアパイロットは74歳の男性医師)
続いて今年の8月にはニューヨーク州アップステートで、セスナ機が2階建て住宅に墜落。飛行機に乗っていた3人のうち1人と、住宅にいた少なくとも1人の死亡が確認されている。(記事)
参照記事:
飛行機ではなくヘリコプターの墜落も頻繁に起こっている。今年6月にはマンハッタンのビル屋上にヘリが墜落し、操縦士が死亡した。
冒頭の写真は、2014年12月にメリーランド州で発生した、小型機の住宅巻き込み事故だ。地上にいた乳児含む母子3人と飛行機に乗っていた3人、計6人が死亡した。(記事)
2006年10月には、ニューヨーク市内マンハッタン区の住居用高層ビルの40階付近に、小型飛行機が突っ込む事故が発生。この時ばかりは、誰の脳裏にも恐ろしい同時多発テロの記憶が蘇った。(記事)
操縦していたのはニューヨーク・ヤンキースの投手、コリー・ライドル選手で、同選手と同乗者の2人が死亡。住民5人と駆けつけた消防士11人が負傷した。
このように、小型飛行機が一般住宅を巻き込んで墜落する事故が日々、どこかで発生している。
事故原因は操縦士のミスや体調不良に加え、天候不良、燃料やエンジントラブルによるものが多いようだ。これだけ頻繁に起こっていると、事故現場周辺の住民からは、「落ちる場所が少し違っていたら、自分が巻き込まれていたかもしれない」「おちおち自宅でリラックスしていられない」と不安な声が上がるのは当然のことだろう。
(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止