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ヘリ墜落に「またか」の声 今度はマンハッタンの高層ビル屋上に(現場周辺の様子も)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
事故発生から2時間後の現場周辺の様子。(c) Kasumi Abe

6月10日午後1時40分ごろ、ニューヨーク・マンハッタンの中心街、ミッドタウンにある54階建て高層ビルの屋上で、ヘリコプターが着陸に失敗し炎上した。この事故で操縦士1人の死亡が確認された。

事故の原因は不明だが、このビルにヘリポートはなく、ヘリコプターが何らかの原因で緊急着陸を試みて失敗したのではないかとみられている。この日は朝から雨模様で、上空は厚い雲に覆われていた。

事故が起こった、787 7thアベニューのビル(51丁目と52丁目の間)。ビル屋上あたりには濃い霧がかかっている。(c) Kasumi Abe
事故が起こった、787 7thアベニューのビル(51丁目と52丁目の間)。ビル屋上あたりには濃い霧がかかっている。(c) Kasumi Abe

事故が起こったビルから1ブロック南側で働いている人が撮影した、事故直後の様子。

「ヘリコプターが低空飛行する大きな音が聞こえたので見上げると、ビルの屋上で炎が上がった」と撮影者談。

事故現場はタイムズスクエアの北側で、劇場街が近く多くの観光客とビジネスピープルが行き交う場所。ホテル、レストラン、オフィスビルがひしめいている。

下の写真は事故から2時間後の午後3時30分ごろの様子だが、ビル周辺は通行止めになっていて、多くの人々が足止めされていた。

ビル周辺は通行止めに。(c) Kasumi Abe
ビル周辺は通行止めに。(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
雨が降る中、立ち往生する観光客ら。通行禁止エリア内にホテルがあるから入れてくれと警官に懇願している人も見かけた。(c) Kasumi Abe
雨が降る中、立ち往生する観光客ら。通行禁止エリア内にホテルがあるから入れてくれと警官に懇願している人も見かけた。(c) Kasumi Abe

事故のあったビルのすぐ北側にあるシェラトン・ニューヨーク・ホテルで働くスタッフに話を聞いたが、事故を思わせるような轟音は特に聞こえなかったという。

地元メディアによると、ヘリコプターは操縦士1人で午後1時30分ごろ、マンハッタン34丁目のヘリポートを出発し、南方の自由の女神方面に向かったとみられるが、その後進路からそれ、離陸から約10分後に緊急着陸を試みた模様。屋上が黒煙に包まれ、ビル内に避難勧告が出された際には、そこにいた誰もが18年前の悪夢が脳裏をよぎりパニック状態となったようだが、テロとの関連を示すものは何もないと発表された。

ABCニュースの映像

ヘリコプターが急降下する様子や、墜落後の屋上の様子などが確認できる。「ビルが揺れたので飛行機が突っ込んだのかと思った」という声も。

ニューヨークで多いヘリコプター事故

実はニューヨークでは、ヘリコプター事故がよく起こる。今回の事故で、またかと思った人は少なくないだろう。第一報では「マンハッタンにヘリコプターが墜落」と入ってきたので、街中に落ちてしまったのかと最悪の事態が頭をよぎったが、ビルの屋上で巻き添えもなかったのが不幸中の幸いだった。

ヘリコプター事故といえば、先月15日、マンハッタン西側のハドソン川に墜落し、操縦士の1人が軽傷を負ったばかり。また昨年3月11日の観光用ヘリコプターがマンハッタン東側のイースト川に墜落した事故も記憶に新しい。アルゼンチンからの観光客を含む26〜34歳の乗客5人が全員死亡し、33歳のパイロットだけが自力で脱出して生還した。この事故に耳を疑ったと同時に、私は(少なくとも)当地ではヘリコプターには乗らないことを心に誓った。

事故の様子を捉えた映像。(地元紙の報道

取材などで海外でヘリコプターに何度も乗ってきたというドキュメンタリストの男性は、今回の事故を受けてこのように話した。

「ニューヨークに27年ほど住んでいますが、この間だけでもヘリコプター事故は20件ぐらい起きています。ヘリ遊覧ツアーは人気ですが、私は絶対にすすめません。ヘリコプターにはメインローターとリアローターがあって、リアローターに雀が巻き込まれたぐらいで墜落しますし、そうするとまず助からないです。撮影はドローンにお任せし、ヘリにはもう乗りたくないです」

ヘリコプターと言えばもう一つ。ウーバーのアプリを使って予約ができ、JFK国際空港とマンハッタン間(車で1時間弱の距離)を、ヘリコプターで約8分で移動できる「Uber Copter」(ウーバーコプター、利用料200〜225ドル)が、7月9日よりいよいよ運用開始となる。今回の事故は、新たなヘリコプターサービスが話題になっている最中で起きたものだった。

便利になるのは喜ばしいことだが、何よりも安全第一。事故原因の解明が待たれる。

(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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