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シリア内戦の輸出か?:リビアでの戦闘にシリア人傭兵を送り込むロシアとトルコ

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

ロシアの傭兵

英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団は5月18日、ロシアの民間軍事会社が、ハリーファ・ハフタル将軍率いるリビア国民軍を支援するため、シリア人数十人を新たに募集したとする情報を得たと発表した。

リビア行きの戦闘員を募集しているのはワグナー・グループ社と見られる。

同監視団によると、同社によって、ラッカ県、ヒムス県、ラタキア県、ハサカ県から集められた若者は180人に達し、彼らは現在、シリア駐留ロシア軍司令部が設置されているラタキア県フマイミーム航空基地に駐留し、リビア行きに備えている。

リビアでの戦闘に参加すれば、彼らは月額1,000米ドルの給与を受け取ることができるという。

なお、フライト・アウェアは5月12日、シリアの民間航空会社シャーム・ウィングのSAW351便が11日午後10時57分にラタキア県のバースィル・アサド国際空港(フマイミーム航空基地)を離陸し、12日午前12時49分にリビア東部のベイダ町近郊の空港に着陸したことを明らかにしていた。

これに関して、トルコのボスポラス監視団は、SAW351が着陸したのは、ベンガジ市の東約78キロの距離に位置するハーディム航空基地で、同機はシリア人戦闘員やロシアの民間軍事会社ワグナー・グループの傭兵を乗せて、ダマスカス国際空港を離陸したのち、バースィル・アサド国際空港を経由、リビアに向かったと見られるという。

Eldorar、2020年5月12日
Eldorar、2020年5月12日

トルコの傭兵

シリア人権監視団はまた、トルコがリビア国民合意政府(GNO)を支援するため、シリア人傭兵120人を新たにリビアに派遣したと発表した。

派遣された戦闘員は、「トルコの支援を受ける自由シリア軍」(Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)として知られる国民軍の戦闘員。

トルコはこれまでに国民軍に所属するスルターン・ムラード師団、北の鷹旅団、シャーム軍団、スライマーン・シャー師団、ハムザート師団、ムウタスィム旅団、スルターン・ムハンマド・ファーティフ旅団などの戦闘員8,950人をリビアに派遣、またシリア国内の基地で3,420人の教練を続けている。

派遣された戦闘員のなかには、18歳以下の少年約150人も含まれているという。

また、リビアでの戦闘で、死亡した国民軍戦闘員の数は5月17日時点で298人死亡、うち17人が18歳以下の少年だという。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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