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5月15日15時を過ぎ、台風1号の過去7位以内の遅い発生が確定

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
雲の渦巻き、台風(提供:アフロ)

5月15日15時までに台風1号の発生はなし

雲の様子(ウェザーマップ)
雲の様子(ウェザーマップ)

ことしは台風1号がまだ発生していません。ちょうど1週間前には、太平洋で雲域が少しまとまりかけ、台風1号の発生する兆しがわずかにみられましたが、その後、予想されたほど雲域は発達することなく、きょう5月15日15時に至っています。(関連記事

台風1号の過去7位以内の遅い発生が確定

1951年以降の台風1号の遅い発生記録(筆者作成)
1951年以降の台風1号の遅い発生記録(筆者作成)

台風1号が平均的に発生する時期は、3月上旬から中旬頃なので、ことしはすでにこの平均より2か月程度遅くなっている状態です。また上図は、台風1号の遅い発生記録を調べたものです。

台風の統計がある1951年以降で、遅い方から7位にあたる日時がきょう5月15日15時でしたから、ことしはこれを抜き、すでに遅い方から7位以内が確定した状態です。過去74年間で7位以内ですから、10年に1度程度の遅い発生ということにもなる状態です。ちなみにこの先6位の記録はかなり離れていて、6月9日15時発生となっています。

さらに台風1号の遅い発生とその年の台風発生数に注目すると、過去最も遅く7月9日15時に発生した1998年は16個と少なめですが、その他の年は25個前後は発生しています。これは今の平年の年間発生数25.1個とほぼ同じですから、台風1号の発生が大きく後ろにずれ込んだとしても、年間の台風発生数には、あまり大きく影響しないということがいえるかと思います。

エルニーニョ現象終了時は、台風1号の発生が遅い傾向?

エルニーニョ現象及びラニーニャ現象と台風1号の遅い発生(気象庁発表に筆者加工あり)
エルニーニョ現象及びラニーニャ現象と台風1号の遅い発生(気象庁発表に筆者加工あり)

上図は気象庁が発表している、エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間のグラフに、台風1号が記録的に遅く発生した6位以内の発生を重ねたものです。すると1位、2位、3位にある通り、赤色のエルニーニョ現象が終わる時に台風1号の発生が記録的に遅くなる傾向があります。ただこれはそうならないこともあるため、あくまでも傾向という感じです。

気象庁から先日発表された最新のエルニーニョ監視速報では、昨年の春から続いているエルニーニョ現象は、終息に向かっていて、この春の間に平常の状態になる可能性が高い(90%)という発表になっています。ことしはエルニーニョ現象が終わる時に傾向としてみられる台風1号の遅い発生の年となっていて、この先、いつ発生するのか注目されます。

さらにエルニーニョ監視速報では、秋にかけて平常の状態が続く可能性もあるが(40%)、ラニーニャ現象が発生する可能性の方がより高い(60%)と、今度は一転して、ラニーニャ現象が発生する可能性が高まる予想となっています。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象と台風の関係は?

エルニーニョ現象やラニーニャ現象と台風の関係(気象庁発表)
エルニーニョ現象やラニーニャ現象と台風の関係(気象庁発表)

上図は、気象庁がエルニーニョ現象発生時とラニーニャ現象発生時の台風の傾向をまとめたものです。

この秋にかけて、60%の確率で発生が予想されるラニーニャ現象発生時の台風の傾向としては、台風の発生位置が平常時に比べて、北や西にずれる傾向があり、さらに台風の寿命が短くなる傾向となっていて、これは日本の近くで台風が発生し、すぐに近づく傾向があるともいえるものです。

また台風の発生数には傾向としてありませんが、ラニーニャ現象が発生すれば、フィリピン沖の海水温が上昇し、対流活動が活発化する可能性があるため、今とは一転、台風が一気に多く発生する可能性も考えられます。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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