Yahoo!ニュース

自民党総裁選を犬の行動学から考えてみたら...「トップ犬」はどんなことをするの?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(提供:イメージマート)

「ポスト菅」を決める自民党総裁選(29日投開票)のため、連日にわたって立候補4氏による論戦が行われていますね。

人は群れ社会の動物です。百獣の王といわれているライオンはネコ科の動物です。ネコ科の動物であるイエネコなどは群れを作らないのですが、ライオンは群れを作る珍しいネコ科の動物です。ライオンを観察するためにサファリまで出かけなければいけないのですね。

今日は、ダイスケやマロンという名前でよばれている犬の行動学から「トップ犬」がどんな行動をするかを見ていきましょう。

体格が重要なの?

提供:PantherMedia/イメージマート

マサチューセッツ工科大学(MIT)のナイツ科学ジャーナリズム・プログラムのフェローのジェイソン・ビッテル氏の『もしも動物と話せたら?』によりますと、ボスになろうとする犬の条件を以下のようにあげています。

犬の体格は重要だけれどどうもそれだけではない

戦おうとする犬の気持ちが大切

臨床現場では、多頭飼育しているご家庭の場合は、一番体格が大きな犬がトップ犬というわけではありません。たとえば、ジャックラッセルテリアとラブラドールがいても年長のジャックラッセルテリアの方がトップ犬のこともあります。「私がこの犬社会のトップなの」という意思が大切のようです。

トップ犬が病気になったときは、トップの次の犬に代わることもあります。病気になると犬も戦う気持ちが薄くなるからでしょう。

遊んでいるだけか喧嘩をしているのか?

犬が2匹以上で走り回っているのを見ると遊んでいるだけかなと思うかもしれませんが、実は、喧嘩しそうになっているのかもしれません。

簡単な見分け方は、以下です。

嫌になった犬が吠える

歯をむき出して威嚇する

こういうのを見ると、もう遊ぶのが嫌だなとわかります。それ以外に、簡単にわかる方法はシッポと耳をみることです。

シッポ

□シッポをしっかり立てていたらそれは攻撃の印

□シッポをだらりと後ろ脚に入れたら服従の印

□シッポをしっかり後ろ脚に入れたら恐怖の印

□耳が立っていたら、警戒か攻撃の印

□耳が後ろに倒れていたら恐怖の印

「トップ犬」はどんな行動を取るか?

提供:PantherMedia/イメージマート

犬はシッポと耳だけで、感情を示しているのではありません。もう少し細かく見ていきましょう。

シッポと耳以外のところでもコミュニケーションを取っています。

犬は群れ社会であり、年長の犬がトップ犬であることが多いのですが、成りあがってくる若い犬が出てきます。そのとき年長の犬が威嚇の行動を起こします。

この行動にはふたつの目的があります。一つは、自分をより大きく見せること。二つ目は、いざとなればいつでも攻撃に移る意思があることです。それでは具体的に見ていきましょう。

□歯を見せて、相手を噛む意思があることを示します

□口を開いて、相手もくわえこむ用意があることを示します

□耳を立てて、どんな音も聞き漏らさないでおこうと警戒態勢を取ります

□シッポを高くあげて体をより大きく見せます

□シッポを高くあげて肛門部分から分泌物を出し、自分がだれなのかを示しています

□シッポを高くあげて小刻みにふります

□肩から尻にかけてちょうどたてがみのように被毛を立て体を大きく見せます

□四肢を完全に伸ばしてまっすぐに立ち体を大きく見せます

□相手の犬から目をそらさずに、ひたすら見つめ続けます

□低い声でうなります

トップ犬は、このようにしてライバル犬に自分の力を誇示します。トップ犬の行動を見て、ライバル犬は脚がすくんでこそこそと逃げ出します。

犬の社会性

写真:PantherMedia/イメージマート

このように書くと犬の社会はよく闘争を起こしてそうですが、実際は統制が取れていて友好的です。もし、喧嘩するようなことがあれば、野生の場合は負けた犬はできるだけその場から離れたところに逃げます。そうしないと命の危険があるからです。

一方、飼い犬はオオカミのように群れで狩りをする必要がないけれど、他の犬たちや飼い主である人をよく観察しています。犬は飼い主から愛情をもらうと穏やかになり、それほどトップ犬であることを誇示しないのです。飼い主の力が強い場合、飼い犬は親しみを伴った服従と平和、そして静けさに満ちた日常を送っています。

自民党総裁選では、だれが選ばれるのか興味があるところですね。犬の社会のように人はボスになる人を決めます。その後、水面下で争うことなどがなく飼い犬の社会のように穏やかに協力して政治を行っていただきたいものです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事