ハイジュエリー「ショーメ」が繰り広げる 植物をテーマにしたアートの大展覧会@パリ
1780年創業、パリを代表する老舗中の老舗のハイジュエリーブランド「ショーメ」の展覧会が、いまパリの国立美術学校「ボザール」で開かれています。
仏語でのタイトルは「VÉGÉTAL(ヴェジェタル)=植物」。
副題は「L'ECOLE DE LA BEAUTÉ(レコール・ドゥ・ラ・ボーテ)=美の学校」。会期は2022年6月16日から9月4日までです。
※日本語サイトでは、『Botanical – Observing Beauty』展となっています。
最近の記事で、コロナ禍以降、あらゆる分野で「生命への礼賛」というテーマが通底していることをご紹介してきましたが、やはりここでも真正面からそれに向き合っていると感じます。
ハイジュエリーの制作にあたっては、常に植物が大事なお手本でした。形、構造、テクスチャー、色が創造の源になり、数多の名品が生まれてきています。
今回の展覧会は、ジュエリーの歴史的な名品はもちろんですが、アーティスト、科学者、クリエーターらがどれほど植物から、生命あるものたちからインスピレーションを受け、感性を形にしてきたかを多角的に紹介するスケールの大きなもの。
フランス国立自然史博物館、オルセー美術館、ルーヴル美術館、フランス学士院、ヴィクトリア&アルバート美術館など世界各国70以上の美術館や財団、個人コレクションの絵画、彫刻、写真などと、ハイジュエリーのアートピースおよそ80点が展示されています。
「ボザール」の広々とした2フロアを使った展覧会の模様は、記事後半の写真でご覧いただくとして、この企画で私が興味深く思ったことを一つご紹介しておきます。
それは入場料金の設定です。
昨今の展覧会のほとんどがそうであるように、入場するにはまずインターネットサイトからの予約が必要です。日時を選ぶと、次の画面では3種類の入場料金を選ぶ案内が表示されます。2ユーロ、5ユーロ、10ユーロ。日本円換算(1ユーロ=137円)で、それぞれおよそ270円、690円、1,370円。このうち各自が好きな価格を選ぶことができます。
2ユーロという額は展覧会の入場料としては破格の安さ。さらに18歳以下、国立の美術系学校の生徒と関係者、アーティスト協会の会員、障がい者、職探し中の人などは無料です。
価格によって見られるもの、できることに違いがあるのでしょうか?
いえ、そういった差は一切ありません。
一人あたり0.99ユーロの予約手数料を除いた売上の全額は「ボザール」への寄付に充てられるそうですから、入場者が選んだ料金は寄付金額。つまり、主催者は入場料によって収益を上げようとはしていないのです。
このところ、ハイジュエリーブランドが好調だと聞きます。特に高額なものほどよく売れるのだとか…。そういう背景があってこそ、なのかもしれませんが、豊かさの循環がこのような形で繰り広げられていることを実感する展覧会です。
さて、ここからは会場の様子と作品の数々を写真でご覧ください。海外渡航がまだ以前のように気軽ではない今、写真から少しでも芸術の街パリの空気を感じ取っていただけたら幸いです。