全米と日本で話題のFIREとは何か 経済的独立と早期リタイアの夢 日本でも実現可能か
2021年夏、FIREが日本でもブームになってきた!
マネーの世界では「FIRE」というキーワードがちょっとしたブームです。アメリカの解説書籍は翻訳されたものがAmazonでベストセラーとなり、雑誌やネットで取り上げられるとアクセスが増えるそうです。
昨年の末、ブームが来そうだな、と思った私は、このコラム枠で下記のコラムを掲載していますが、その頃と比べてはっきりとブーム到来を感じます。
20/12/12 アメリカにも煉獄の炎が燃えさかる?今ブームとなりつつあるFIREとは?日本版「9つの炎柱」を考える。
一方で「FIREって何?」という人がまだ大多数ということも間違いありません。FIREがマネーの話だとピンとこない人もあるはずです。
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略です。前半が「経済的な独立」を果たすことをめざし、その成果として「早期リタイア」が実現する、チャレンジの総称です。
アメリカのFIREはどんな仕組みか 真似して日本でも実行可能か
アメリカのFIREの先駆者の書籍として日本でもよく売れているのが
Amazon FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド
Amazon FIRE 最速で経済的自立を実現する方法
です。新刊としては下記も関連書籍のひとつです。
Amazon ファイナンシャル・フリーダム 経済的自由と人生の幸せを同時に手に入れる!
FIRE解説本の多くは、基本的なコンセプトとして2つのキーワードを紹介します。つまり
- 「25年分の年収相当額」を資産形成する(年収400万円で暮らすなら1億円)
- 「4%ルール」つまり、年4%で運用すれば運用収益が年間生活費に相当し、資産は目減りせずリタイアできる
というものです。前者がFI(経済的独立)の部分であり、後者がRE(早期リタイア)の部分になります。
いつまでも社畜となって働き続けることへの恐れと嫌悪は日本以外でもあるようで、FIREはアメリカのミレニアム世代に支持を受けているそうです。
ただし、アメリカの先達を真似て、日本で40歳前後でのFIREを目指そうとすると、これは相当の苦労を伴います。節約のために収入の70%超を貯蓄するような例が紹介されることがありますが、ほとんどの人は実行が困難だと思います。しかし、節約するほど、FIRE資金が多く貯められ、ゴールに近づけるのも事実です。
また、40歳で1億円貯めるというのは、かなりのハードモードです。時間はあまりにも短く、10年程度のビジネスキャリアで年収を最大化するのは大変だからです。しかし、これを理由にFIREへのチャレンジを最初から諦めてしまうのはもったいないように思います。
また、早期リタイアの後は4%の運用収益を上げ続ければ資産は目減りせず暮らし続けられるというのも、アメリカの株式市場のデータにもとづく話です。日本の場合、分散投資をした運用収益がなんとか4%というところですし、早期リタイア後に全額を投資するわけにもいきませんから、資産全体の利回りは下がります(定期預金半分、投資半分とすれば、4%の運用収益があっても全体では2%の利回りになる)。投資部分に配当収益が加わっても、確実に4%とはいかないように思います。
マーケットの上下動も大きく、市場が下落する年度はマイナス5%以上のダウンになります。この年に生活費を取り崩しすると大きく資産減少してしまいます。
それでは、日本では同じことはできないのでしょうか。
日本では「定年-5歳」ないし-10歳を狙ってみるとちょうどよいFIREとなる
アメリカでは40歳前後のリタイアが紹介されますが、これに対し、既発の日本人が著したFIRE本は、50歳代FIREが多いようです。
実はこれ、「日本版FIRE」を考えるとき、示唆に富みます。50歳あるいは55歳で引退すれば、いくつかのメリットがあるからです。
- 40歳FIREより準備額を低く設定できる(マイナス10年分)
- 40歳FIREより準備する時間を長く設定できる(プラス10年分)
- 10~15年ほどやりくりできれば、公的年金生活に移行できる(計画が建てやすい)
また、資産運用のリスクを高めに設定して、結果として奏功していることも特徴です。不動産投資、米国株投資、暗号資産など手法はいくつかありますが、年4%の国際分散投資(インデックス運用)を超えて、年8%以上を目指したとき、成功すれば早く「億」にたどりつくわけです。
ただし、高いリスクを取るということは大きな損失に見舞われる可能性も高くなり、諸刃の剣でもあります。普通の人がFIREを目指すなら、リスクの取り過ぎには注意が必要です。
資産管理をしっかり行い、「5年早いリタイア(65歳リタイアではなく60歳とか)」を目指すことをしっかり考え、順調に計画が進むなら「10年早いリタイア(65歳リタイア社会なら55歳)」を考えてみるのが「日本向きのFIRE」かと思います。
ちなみに、「老後に2000万円」+「60~65歳までの2000万円」があれば60歳リタイアは可能ですから、最低目標は4000万円、会社からもらう退職金(60歳なら満額もらえる)を引けば、実現性はぐっと高まります。
ただし、iDeCoやNISAを活用し、長期・積立・分散投資を継続することが大前提です。
日本版FIREをちゃんと考えてみたい
昨年、Yahoo!ニュースでコラムを書いたことがきっかけとなって、私も「日本版FIRE超入門」という本を発刊することになりました。
ここでは「日本版」として、以下のようなポイントを日本向けに整理し直したFIREの解説をしています。
- 日本の資産形成制度(NISAやiDeCo)を活用したFIREチャレンジのあり方
- 日本の高齢者雇用や公的年金制度(およびその未来像)を踏まえたFIRE計画の建て方
- FIREを取り巻くマネープランの諸問題への対応方法(マイホーム購入、子供の学費準備、退職金や公的年金が目減りする問題など)
例えば「FIREの年齢が早いと公的年金額がダウンすること」をどこまで織り込むべきかは、翻訳書にはない視点ではないかと思います。
また、40歳FIREにこだわらず、50歳代でのリタイア、60歳で継続雇用をせずに気持ちよくリタイアするような「日本版FIREモデル」も提示しています。
これからFIREを考える人のベーステキストとして使いやすい一冊となっているかと思います(本気でチャレンジする際には、他の方のFIRE本も併読されるとよりビジョンが広がると思います)。
今回は「アメリカのFIREとは何か」「日本でFIREを考えるときのポイント」をまとめてみました。FIREという言葉を知らなかった人はぜひ、自分らしく生きていくために資産形成をすることを考えてみてほしいと思います(実は、早期リタイアはそのおまけなのです)。
Amazon → 普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門