親が突然死亡!どうする「遺言書」を残していたのかわからない!?~「自筆証書遺言」の探し方
新興宗教団体「幸福の科学」の創始者で総裁の大川隆法氏が3月2日に亡くなられたと報道されました。それを受けて長男・宏洋氏が自身のYouTubeチャンネルで次のコメントを発表しました。
このように、宏洋氏の「(大川隆法氏は)遺書は書いてない気がするんですよね」という発言から推測すると、YouTubeを更新した時点では遺言書の有無はハッキリしていないようです。そこで、今回は、親が死亡した場合、遺言を残していたかどうかの調べ方について、自分で書いて残す「自筆証書遺言」に焦点を当ててお話ししたいと思います。
※公正証書遺言の探し方は、親が突然死亡!どうする「遺言書」を残していたのかわからない!?~「公正証書遺言」の探し方をご覧ください。
遺言書の有無で遺産の引き継ぎ方が変わる
まず、遺言の有無による遺産の引き継ぎ方の違いについてご説明します。
相続は人の死亡を原因として開始します(民法882条)。
民法882条(相続開始の原因)
相続は、死亡によって開始する。
被相続人(死亡した人)が遺言書を残していた場合は、遺言者の死亡のときから効力が生じます(民法985条1項)。すなわち、遺言の内容の通り、遺産が受遺者(遺言で遺産を引き継ぐとされた者)に移転します。
民法985条1項(遺言の効力の発生時期)
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
一方、遺言書を残していなかった場合は、遺産は法律で定められた人(法定相続人)に同じく法律で定められた割合(法定相続分)で移転します。そして、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)をして、全員が合意した内容に基づいて具体的に遺産が引き継がれることになります。
このように、被相続人が遺言書を残していたのか、残していなかったのかは相続においては重要なポイントになります。
自力で探し出すしかなかった
自筆証書遺言を探すには、従来は探し出すしかありませんでした。その結果、見つからなかったら、遺言書を残したのかどうかは謎のままで終わってしまいました。そして、遺言書はないという前提で、相続人全員による遺産分割協議で遺産を引き継ぐことになりました。
自筆証書遺言の保管制度がスタートした
2018(平成30)年7月6日、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)が成立し、2020年(令和2年)7月10日に施行されました。
これにより、従来は自筆証書遺言を作成し終わった後の保管については、自己責任であったのが、遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)に預けることができるようになりました。
親の遺言書の見つけ方
親が死亡後、相続人は遺言書保管所に対して、「遺言書保管事実証明書」の交付の請求をして、遺言書保管所に親の遺言が保管されているか否かの確認をすることができます。なお、この請求は全国のどの遺言書保管所に対しても行うことができ、手数料は1通につき800円です。
「遺言書保管事実証明書」の内容
請求の結果、遺言書が保管されている場合は、「上記の遺言者(=亡くなった親)の遺言書が遺言書保管所に保管され、遺言書保管ファイルに記録されていることを証明する。」という内容の認証文が発行されます。反対に、保管されていない場合は、「上記の遺言者(=亡くなった親)の遺言書が遺言書保管所に保管されていないことを証明する。」という内容の認証文が発行されます。
遺言書が保管されていた場合
そして、遺言書が保管されている場合には、遺言書保管情報証明書の交付の請求や遺言書の閲覧を行い、遺言書の内容を確認することができます。
2020年7月10日以降が対象
このように、親が自筆証書遺言を遺言書保管所に保管していたか否かを遺言書保管所に対して遺言書保管事実証明書を請求することで確認することができます。その結果、保管していたら、遺言書保管情報証明書の交付請求または遺言書の閲覧請求をすることでその内容を確認することができます。
ただし、前述のように遺言書保管法の施行は2020年7月10日です。したがって、その日以前に自筆証書遺言を残していたか否かはこの制度ではわかりません。
なお、遺言書保管事実証明書の請求は、遺言者が死亡している場合に限られます。したがって、親が遺言書を保管していても生存中は確認することはできません。
ご説明の通り、遺言の有無で遺産の引き継ぎは大きく変わります。もし、親が死亡した時に、遺言の存在が不明確な場合は、法務局に問い合わせて遺言書の有無を調べてみてはいかがでしょうか。