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東京五輪サッカー男子の18人が決定!金メダルまで6試合の起用プランは?

河治良幸スポーツジャーナリスト
久保建英/筆者撮影

A代表を兼任する森保一監督は東京五輪に臨む18人のメンバーとバックアップの4人を発表しました。

「選ばれたメンバーには仲間たちの思いを胸に刻み、日本のために全力で出し切って欲しい」と語る森保監督。4年半でのべ90人という候補が同カテゴリーの代表活動に選ばれてきましたが、今回の22人はそうした競争を勝ち抜いた精鋭たちです。

GKは大迫敬介と谷晃生というアンダー世代からしのぎを削ってきた二人に、パリ五輪世代から”飛び級”でバックアップに入った鈴木彩艶。大迫と谷については実力的に甲乙つけがたく、しかも強化試合がホンジュラス戦、スペイン戦と2試合あるので、そこまでに正GKがある程度固まるのか、ギリギリまでフラットに競い合うのかは難しいポイントです。

ただ、1つ言えるのは「どっちが試合に出ることになっても、絶対にお互いがお互いをサポートできる関係性」と谷が語るように、鈴木彩艶も含めて3人セットでの質の高いトレーニング無しに出る選手の好パフォーマンスがありえないポジションなので、練習から1つ1つのプレーが試合に宿ることは間違いありません。

大迫は総合的な能力が高く、特にセービングでは球際のボールもしっかりとはじき返すことができます。そしてクロスの対応がこの世代では卓越しており、どのチームも高さのあるFWを揃える中で、非常に頼りになる存在です。谷もスタンダードの能力は高いですが、何よりここという場面での決断力と勝負強さが世代随一です。また正確に遠くの味方を狙えるロングキックも大きな武器になります。

----------------------------上田綺世-------------------------------

-------------------------(前田大然)-----------------------------

相馬勇紀-----------------久保建英-----------------------堂安律

(三笘薫)------------(三好康児)-------------(三好康児)

(前田大然)---------(旗手怜央)----------------------------

--------------------田中碧---------------遠藤航-------------------

----------------(中山雄太)-------(板倉滉)-----------------

旗手怜央--------冨安健洋-----------吉田麻也-------酒井宏樹

(中山雄太)-(板倉滉)------(橋岡大樹)-(橋岡大樹)

------------------------------谷晃生--------------------------------

--------------------------(大迫敬介)----------------------------

ディフェンスは4バックの場合は右サイドバックから酒井宏樹、吉田麻也、冨安健洋がファーストセットで、左サイドバックは対戦相手との兼ね合いで攻撃的に行くなら機動力と攻撃センスの高い旗手怜央、バランスを考えれば対人守備に強く、対角線のクロスにも対応できる中山雄太というチョイスになります。

旗手の場合は二列目、中山の場合はボランチのマルチロールも担いますが、開幕戦の時点では基本的に左サイドバックが想定されるはず。おそらく南アフリカ戦は旗手、メキシコ戦は中山、フランス戦は状況を見ながら両睨みになると想定できます。

オーバーエイジの二人と冨安についてはここで改めて詳しく書くまでもないと思いますが、世界大会でも頼りになる存在で、彼らがいる限り日本の守備が大きく崩れることは考えにくいです。ただ、やはり夏場の過密日程で3人がフルに出られるかわからない中で、ボランチを兼ねる板倉滉や右サイドバックとセンターバックのマルチである橋岡大樹もバックラインでの出場はかなり想定しておく必要があります。

バックアップに瀬古歩夢と町田浩樹とセンターバックが二人も入ったのはアクシデントが起きた時に緊急性が高くなりやすいポジションだからでしょう。ただ、有事のポジションによって、本当に困ったときはメンバー構成的に瀬古がボランチ、町田がサイドバックと言った対応も必要になるので重要な役割です。また紅白戦を行うことも想定しての今回のバックアップメンバーとも言えます。

ボランチはオーバーエイジの遠藤航と田中碧がファーストセット。”デュエル王”の異名を取る遠藤と視野が広く組み立てに優れる田中という補完関係で、強度も非常に高いですが、やはり夏の連戦で最も消耗するポジションであり、3、4人目の重要性が高いです。今回は板倉、中山と他のポジションを兼ねるメンバーが控えることになるので、そこがどう影響するか。スクランブルの場合は冨安もボランチはできますが、そういう緊急事態にならないことを願いたいです。

二列目はおそらく堂安律、久保建英、相馬勇紀がスタンダードな組み合わせで、攻撃面での期待に加えて、前からのプレッシングで強度を出せるセットになります。「とにかくチームのためにどれだけ戦えるか、チームのために走って、目の前の的に負けない」と相馬は語ます。

基本的にはA代表で鎌田大地と南野拓実が”Wトップ下”となり、右サイドに伊東純也がはる形とは逆で、中央の久保と右の堂安が近い距離感で絡み、左サイドから相馬が縦に仕掛けたり、フリーランでゴール前に飛び出したりする関係です。そこにドリブルの打開力や抜群の攻撃センスを持つ三笘薫、コンビネーションと個人の仕掛けを融合できる三好康児がどう起用されていくのか。

決勝まで6試合あるので、状態も見ながら三笘や三好がスタメン、上記の3人から誰かがサブに回る場合も交代が5枚あるので、ほぼ毎試合、先発にしろ途中にしろ試合に出る可能性が高いポジションです。日本の自慢のセクションであり、ここが相手にとって脅威になればなるほど、チームとしての得点力も引き上がっていきます。

またFW枠の前田大然も左右のサイドハーフで起用できるので、点を取ることもとらせることもできる上田綺世を1トップのファーストチョイスとした場合、爆発的なスピードを持つ前田をどこで、どのタイミングで投入していくかはほぼ全ての試合で勝負に直結するはずです。

バックアップが林大地は2列目から前の選手に何かあった時に入れ替わる候補になるのでかなり重要で、チームとしては考えたくはないですが、半々ぐらいの確率でメンバー入りすることを想定して準備するべきでしょう。攻守両面で高い強度をもたらせるアタッカーで、チームのテンションを練習から引き上げていく役割も大きくなります。

以上、4バックをベースに起用法をまとめましたが、3ー4ー2ー1もオプションとして想定されます。その場合は3バックが酒井宏樹、吉田麻也、冨安健洋のファーストセットになり、ウィングバックは右の橋岡と左の相馬あるいは旗手、2列目に久保と堂安が並ぶ形が想定できますが、2シャドーを採用する場合は三好もインサイドで攻撃センスを発揮しやすいので、また選手起用の優先順位が変わってくることもあるかもしれません。さらに前回の合宿で試した4ー3ー3では左サイドバックが本職の旗手も中盤のインサイドハーフとしてキーマンになりえます。

男子の場合はすでに活動が始まっている女子よりも遅い合宿スタートになり、川崎フロンターレの旗手と三笘、名古屋の相馬はACL後の合流になるので、限られた準備期間の中でどうプラインニングしていくのか、これまで代行でU-24代表を率いてきた横内コーチともども、森保監督の手腕が問われるところです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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