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勝てば防衛の藤井聡太竜王(20)きびしい反撃でペースを握ったか? 竜王戦七番勝負第5局2日目

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月26日。福岡県福津市・宮地嶽神社貴賓室において第35期竜王戦七番勝負第5局▲広瀬章人挑戦者(35歳)-△藤井聡太竜王(20歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 朝、対局室には広瀬挑戦者、藤井竜王の順に入室。両者ともに改めて初期位置に駒を並べました。

 本局の立会人は中村修九段。記録係は松下洸平初段です。

中村「それでは昨日の対局を再現していただきます」

 松下初段の棋譜読み上げに従って、両対局者は昨日1日目の指し手を並べていきます。

 先手の広瀬挑戦者は第3局に続いて相掛かりを採用しました。両者互いに玉を中住居(なかずまい)に構え、途中まで第3局と同じ進行をたどります。

 毎局工夫を凝らせた序盤作戦を披露する広瀬挑戦者。第3局の進行も途中までわるいわけではありませんでしたが、本局では広瀬挑戦者の方から手を変えました。

 47手目、4筋の歩を突き捨てたのが周到に準備してきたであろう一手。以後、藤井竜王は断続的に長考に沈みます。

 53手目、広瀬挑戦者は左端9筋の歩を突っかけていきます。指されてみれば、なるほどという好感触の一手。継続手として盤面左右をにらむ角を自陣に据え、広瀬挑戦者に不満のなさそうな進行となりました。

 藤井竜王は1時間12分の長考で、飛車先8筋に歩を打って辛抱します。この時点で持ち時間8時間のうち、消費時間は広瀬55分、藤井4時間3分。形勢はほぼ互角ですが、時間の使い方でははっきり、広瀬八段がポイントをあげました。

 広瀬挑戦者は角を基点に右辺を攻めます。広瀬八段が69手目を封じて、1日目は終了しました。

 明けて2日目。広瀬八段の封じ手は、銀取りの歩打ち。広瀬八段は攻めを続けていきます。

 藤井陣は押し込まれているようでも、反発力のある形。広瀬挑戦者の攻めに的確に応じながら、藤井竜王は反撃のチャンスをうかがいました。

 広瀬挑戦者は角金交換の駒損ながら、藤井玉の近くにと金を作って迫ります。局面はいよいよ、終盤を迎えようとしています。

 82手目、藤井竜王は飛車取りに角を打ちました。これが強烈なカウンター。広瀬玉までにらんできびしそうです。

 広瀬挑戦者が85手目を考慮中に12時30分、昼食休憩に入りました。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は、少し藤井竜王よし。現状は藤井竜王がわずかにペースをにぎったかもしれません。

 藤井竜王がもし本局を勝てば、4勝1敗で七番勝負制覇。竜王位初防衛となります。元竜王の広瀬八段。カド番をしのいで巻き返すことはできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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