国内で経路不明の感染例も イギリスの新型コロナ変異株の現在の状況は?
現在、イギリス、南アフリカ共和国で新たな変異株が見つかり世界各国に広がっており、また1月6日には新たにブラジルからの渡航者から変異株が検出されたことが国立感染症研究所から報告され、変異株の拡大が世界的な問題となっています。
その中でも現在最も世界中に拡大しているイギリス変異株の状況と、これまでに分かっていることをまとめました。
※南アフリカ変異株、ブラジル変異株についてはこちらをご参照ください。
イギリス変異株VOC 202012/01の流行状況は?
イギリスでは「VOC 202012/01」と呼ばれる変異株の感染が拡大しており、特に、拡大が顕著な南東イングランドでウイルス学的調査が行われたところ、症例の半分以上が新しい変異株(VOC 202012/01)によることが分かっており、最も早い症例は2020年9月20日に確認されています。
その後、南東地方を中心に拡大を続けており、現在配列を解析された新型コロナウイルスのうち70%は変異株であることが分かっています。
イギリス変異株(VOC 202012/01)は世界中に広がっており、2021年1月19日時点でイギリス以外に、60カ国で約2,000例の変異株による新型コロナ症例が確認されています。
日本では2020年12月25日に空港検疫でイギリス変異株が見つかって以降、報告が増えていますが、1月15日には静岡県で渡航歴のない感染経路不明の新型コロナ患者が報告されています。また1月21日には東京都内でも同様に渡航歴のない感染経路不明のイギリス変異株の事例が報告されています。
現時点では国内におけるイギリス変異株が検出された渡航歴のない事例は数例に留まっているものの、どこで感染したのか分からない事例が発生したことは日本国内でイギリス変異株の感染伝播が起こっていることを意味します。
2020年12月16日時点で9例のイギリス変異株が見つかっていたデンマークでは、デンマーク国内における新型コロナのうち変異株が占める割合が増加しており、2021年第1週には全体の3.5%が変異株と報告されています。
オランダでは、新型コロナと診断された患者の検体をランダムに調べたところ、2021年第1週目に確認された新型コロナウイルスの10%がイギリス変異株であり、特にアムステルダムとロッテルダムに変異株の新型コロナ症例が集中しているようです。
このように、イギリス変異株が侵入した国の中ですでに感染拡大が始まっている国があり、日本での拡大が懸念される状況です。
イギリス変異株の特徴は?
このイギリス変異株はこれまでの新型コロナウイルスと比較して56%〜75%広がりやすいという解析がされており、感染性が高いことが分かっています。
現時点ではイギリス変異株では重症化しやすい、という論文化されたデータはまだありませんが、1月22日にイギリスのボリス・ジョンソン首相は「変異株の致死率が高い可能性がある」と述べており、今後の報告が待たれます。
ただし、変異株が重症度に与える影響は変わらないとしても、感染性が増加し感染者が増えれば重症者も増えることになります。
また、小児に対してもこれまでの新型コロナウイルスよりも感染しやすいのではないかと考えられています。
変異株はヒトの細胞に結合するスパイク蛋白に関連しており、ウイルスの抗原性を変化させることによって新型コロナウイルスに対する抗体の効果が減弱する可能性がありますが、2021年1月15日に発表されたVOC 202012/01の調査に関するイングランド公衆衛生局の発表では、従来の新型コロナウイルスに感染し回復した人の中和抗体はイギリス変異株にも活性を示し、またその逆も同様であったとのことです。
現時点では再感染のリスクの増加やワクチンの有効性の低下については過度に心配する状況ではないでしょう。
日本でイギリス変異株が広がる可能性は?
すでに日本国内で渡航歴のない経路不明のイギリス変異株の症例が報告されています。
現時点ではイギリス変異株が見つかっているのは静岡県の20代〜60代の4人と東京都の1人の計5人だけですが、日本で新型コロナウイルスの遺伝子配列まで読まれているのはおよそ10例に1例であり、全てのウイルスの配列が調べられているわけではありません。
日本国内の他の地域でも今後渡航歴のない経路不明の症例が見つかる可能性はあるでしょう。
イギリスやデンマークのように日本国内で変異株が拡大するのを防ぐために、
・現時点で見つかっているイギリス変異株症例の厳格な隔離と濃厚接触者調査による封じ込め
・海外からの帰国者の検査体制の強化(全症例で遺伝子配列解析の実施)
が行われているところです。
また政府は2020年12月28日から外国人の新規入国を中止しています。
イギリス変異株の拡大を防ぐために私たちにできることは変わりません。
しかし、拡大してしまったときの私たちへの影響はこれまで以上に大きくなるでしょう。
このイギリス変異株の国内での広がりは新たな脅威であることを認識し、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。