エムポックス2回目の緊急事態宣言 1回目と違うところは?
2024年8月14日、WHO(世界保健機関)はコンゴ民主共和国およびアフリカの国々で増加しているエムポックスの状況について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると宣言しました。
エムポックスの緊急事態宣言は2年ぶり2回目のものですが、1回目とはどこが違うのでしょうか?
コンゴ民主共和国でのエムポックス症例の増加
2023年1月からこれまでの間に、コンゴ民主共和国では15600例の感染例と537人の死亡者が報告されています。
またコンゴ民主共和国の周辺国であるコンゴ共和国、中央アフリカ共和国、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジでも同様にエムポックスの症例が報告されています。
今回の流行はクレード1という病原性の強いウイルスによるもの
エムポックスウイルスは天然痘ウイルスと同じ科のウイルスであり、リスやネズミなどのげっ歯類が保有しています。
エムポックスウイルスは大きく2つの系統群に分けられ、それぞれクレード1、クレード2と呼ばれています。
クレード2は、もともと西アフリカ地域で流行していたウイルスであり、2022年に始まった世界的な流行の原因となったウイルスでもあります。
そして、今回の緊急事態宣言の対象となったのは、クレード1と呼ばれる前回とは異なる系統群によるウイルスです。
クレード1は、もともとコンゴ民主共和国を含む中央アフリカの5カ国のみで報告されており、げっ歯類が保有するウイルスがヒトに伝播し、限局的にヒト-ヒト感染が起こっていました。
しかし、今回のアウトブレイクで広がっているウイルスは「クレード1b」と呼ばれるクレード1から派生したウイルスであり、従来の感染した野生動物の死骸や生体との接触、家庭内感染、患者のケアに伴う医療従事者の感染に加えて、現在は性行為に関連した感染事例が増加していると考えられています。
クレード1は、以前からクレード2に比べて感染した際の重症度が高いことが知られており、今回のアウトブレイクでの現時点での致死率は、2年前のクレード2によるアウトブレイクのときよりも高くなっています。
こうした意味では、前回のエムポックスの流行よりもさらなる注意が必要と言えます。
現時点では一般市民での流行のリスクは低い
WHOが緊急事態宣言をした後、スウェーデンでクレード1による感染例が報告されており、アフリカ以外の地域でもクレード1の拡大が懸念されています。
2年前の流行と同様に、性行為に関連して広がっていることを考えると、今後も世界中にクレード1のエムポックスウイルスが拡大する懸念はあります。
医療従事者としては、中央アフリカ地域に渡航歴のある患者でエムポックスが疑われる症状がある場合は、速やかに保健所に検査を依頼する必要があります。
現時点では、日本国内の一般市民の間で感染が拡大するリスクは低いと考えられます。
日本では、これまでにクレード2によるエムポックスの症例が248例報告されていますが、性的に活発な男性、特に同性間の性的接触を介することで主に広がっています。
エムポックスは主に感染した人の発疹や体液、血液との接触、性的接触で感染します。リスクの高い性行為の後に、発疹や水ぶくれ(特に、顔、口、手足、 肛門、性器、お尻)があった場合にはかかりつけ医や最寄りの医療機関に相談しましょう。