台湾からの旅行者が日本国内でデング熱に感染か?デング熱ってどんな病気?
10月7日、台湾の衛生担当部局が日本国内でデング熱に感染した可能性が高いと考えられる症例について発表しました。
今年の9月中旬から下旬にかけて、日本国内でデングウイルスを持つ蚊が存在した可能性があります。
デング熱とは?
デング熱は蚊に吸血されることで感染する疾患です。
東南アジア、南アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域を中心に流行している感染症であり、日本では輸入感染症(海外から持ち込まれる感染症)として年間約300例の患者が報告されています。
しかし、日本国内にはデングウイルスを媒介するヒトスジシマカという蚊が分布しており、国内流行が起こる可能性があります。
2014年に代々木公園を中心に感染者が160名を超える大規模な国内流行が起こりました。また2019年にも4例の国内で感染したと考えられる事例が報告されています。
デング熱は発熱、頭痛、関節痛、皮疹などの症状がみられ、通常7日程度続きますが多くの場合自然に治癒します。
稀に出血症状や臓器不全などが出現し重症化するデング出血熱に進展すると命にかかわることがあり注意が必要です。
台湾からの旅行者が日本でデング熱に感染か
10月7日、台湾の衛生担当部局が日本国内で感染した可能性が高いと考えられるデング熱の症例について発表しました。
患者さんは30代の台南市在住の男性で、9月14日~23日に横浜と大阪に滞在したとのことです。患者さんは大阪市内で蚊に刺されたと述べられているとのことです。
9月24日に発症し、9月26日に医療機関受診し、9月27日にデング熱と診断されたとのことです。
デング熱の潜伏期は通常3〜7日ですので、渡航歴と潜伏期から考えると日本で感染した可能性が高いと考えられます。
日本国内にはデングウイルスは常在していませんが、海外でデング熱に感染した人が日本国内でヒトスジシマカという蚊に吸血されることによって、ヒトスジシマカがデングウイルスを増幅させます。このデングウイルスを持った蚊に吸血されると、日本国内でもデング熱に罹るということが起こりえます。
つまり今回の台湾の旅行者が日本国内でデング熱に感染したということは、この時点で日本国内でデングウイルスを持つ蚊が循環していたということになります。
日本での大規模な流行につながる可能性は低い
ではこれから、日本国内でもデング熱が流行する可能性が高いのでしょうか?
今後、数例の感染者は国内でも報告されるかもしれませんが、2014年のような規模の大流行につながる可能性は低いと考えられます。
なぜなら、10月現在は蚊の活動が鈍くなっており、蚊に刺される機会は減少しているためです。2014年に日本国内でデング熱が流行した際も、10月にはほとんど症例は報告されなくなりました。今年もこれからデング熱が流行する可能性は低いでしょう。
とは言え、今年は例年と比べてまだ気温が高く、蚊も活動していることから、現時点で感染する可能性が全くないわけではありませんので、国内で蚊に刺された後にデング熱を疑う症状(発熱、頭痛、関節痛、皮疹)があれば病院を受診するようにしましょう。
医療従事者も、大阪や横浜に旅行歴のある発熱患者ではデング熱を鑑別に挙げるようにしましょう。
海外からの渡航者が急増していることから、来年以降も国内でデング熱に感染したという事例が報告されるかもしれません。
海外から日本国内にデングウイルスを持ち込まないためにも海外旅行中、特に熱帯・亜熱帯地域では徹底して防蚊対策を行うようにしましょう。
具体的には、長袖長ズボンなどで肌の露出を出来るだけ避けるようにし、露出した部分には虫よけを塗布するようにしましょう。
虫除けはディートまたはイカリジンという成分を含むものが望ましいとされます。
デング熱に一度感染したことのある人が二回目に感染すると、一度目と比較して重症化する頻度が高くなりますので、特にデング熱の既往のある方は流行地域に行く際はご注意ください。