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東京都で8000床の病床不足!解消が都知事選後の重大任務

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
再選された小池都知事は、東京都で約8000床もの病床不足をどう解消するか(写真:つのだよしお/アフロ)

7月5日に投開票が行われた東京都知事選挙では、現職の小池百合子氏が再選された。小池都知事2期目の任期は2024年7月までである。

当面の課題は、新型コロナウイルス感染症対策だろう。直近で、感染者が急増しており、患者を受け入れられる病床の確保も急務となる。

東京都知事選挙の前から、否、新型コロナウイルスの感染拡大前から、東京都では、このままでは約8000床の病床が足りなくなるという状況であった。

その根拠は、東京都が策定した地域医療構想である。2016年7月に策定され、現在では、2018年3月に改定された東京都保健医療計画に一体化されている。

地域医療構想は、地域(二次医療圏など)ごとに、2025年の医療需要(入院・外来別の患者数等)、2025年に目指すべき医療提供体制(医療機能別の必要量)、目指すべき医療提供体制を実現するための施策(病床、つまりベッドの配置の再編、在宅医療の充実など)が盛り込まれる。詳細は、「コロナで医療崩壊しかねない日本の医療の弱点」を参照されたい。

東京都の地域医療構想では、2025年における病床の必要量(一般病床と療養病床のみ)は11万3764床と見込んでいた。

それに対し、地域医療構想と関連付けられる形で、各医療機関が担っている医療機能を報告する制度(病床機能報告制度)に基づいて、東京都が集計した(執筆時最新の)2018年度の結果、2018年7月現在で東京都全体で10万5418床(休棟等を除く)である。

地域医療構想で推計されている2025年の病床の必要量よりも約8000床も足りない。東京都の地域医療構想は、コロナ前から、将来の病床不足を示していたのだ。

地域医療構想は、医療資源投入量でみて入院が必要な患者がその地域に何人いるかをレセプトデータなどに基づいて推計している。客観的なデータに基づいた推計なのである。だから、このままだと、入院が必要な患者が東京都の病院で入院できないことが、2025年に起きうることになる。東京都の高齢化は、他の道府県よりも遅い進捗となっていて、これから高齢者の入院患者がもっと増えるという人口構造が背景にある。

小池都知事の任期は2024年7月までだが、この2期目に必要な施策を実行しなければ、2025年の東京都で(パンデミックがなくても)病床不足に陥る。既に、消費税増税によって確保した財源で、地域医療介護総合確保基金が用意されており、地域医療構想で求められる病床機能の分化・連携を促す施策のために支出してよいこととなっている。この基金などを活用して、病床の確保が2期目の任期中に求められる。

2025年は、もう遠い将来ではない。

慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

慶大教授・土居ゼミ「税・社会保障の今さら聞けない基礎知識」

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