メキシコに"想定外"の史上最強ハリケーン・オーティス上陸
「悪夢のシナリオが起こるだろうー。」ハリケーンの予報官がそう警告した嵐が、25日(水)未明にメキシコに上陸しました。
そのハリケーンは「オーティス(Otis)」といい、世界的なリゾート、アカプルコ周辺に上陸しました。
上陸時の最大風速(1分平均)は74メートルで、ハリケーンの階級では最強の「カテゴリー5」でした。オーティスは2015年にカテゴリー4でメキシコに上陸したパトリシアを抜き、同国における観測史上最強のハリケーンとなりました。
オーティスによる死者は現在のところ27人、また200人以上がケガで病院に搬送されたと伝えられています。
※カテゴリー5のハリケーンによって想定される被害↓
壊滅的被害: ほとんどの木造建築の屋根や壁が飛ばされ倒壊する。倒れた木々や電柱により、住宅地が孤立する。停電は長期間続き、数週間から数ヶ月にわたって居住不能となる。
想定外のハリケーン
オーティスがとりわけ異様だったのは、その予想が直前になって大きく変わったことです。
その様子は下の予想進路図を比較すると一目瞭然です。左図が上陸24時間前、右図は約半日前に発表された予想図です。
左図の24日(火)未明の時点ではオーティスはハリケーンより弱いトロピカルストーム(S)の勢力で上陸すると予想されていました。ところがその日の午後にはがらりと変わって、カテゴリー3以上の強さを示すメジャーハリケーン(M)で上陸するという予想に変わっています。
では実際、オーティスはどれほど急発達したのでしょうか。
まず24日(火)未明のオーティスの最大風速は24メートルでした。ハリケーンの定義は最大風速34メートル以上ですから、まだまだその域に達していません。
しかしその24時間後、メキシコに上陸した時には最大風速が74メートルにも達していました。時速に直すと270キロ、新幹線のような速さの風です。
風速の変化は24時間では50メートル、12時間では35メートルに達しました。半日で35メートルも増えたのは、この海域においては過去に例がないとのことです。
なぜ発達?
ではなぜ急速に発達したのでしょうか。
理由としては、オーティスが小ぶりのハリケーンであったこと、エルニーニョの影響などでメキシコ沖の海水温が30度近くと平年よりも高かったこと、さらにジェット気流の中でもとりわけ風の強い「ジェットストリーク」という強風域によって、ハリケーンの上昇気流が強められた、などの理由が考えられています。
こうした上陸直前に急発達する危険な嵐は、海水温の上昇に伴って今後増えていく恐れがあるといわれています。