レアル・マドリーに「新・銀河系軍団」が誕生か。第二次ペレス政権で再び求められる変化。
結果を出せなければ、周囲が騒がしくなる。レアル・マドリーのようなビッグクラブでは、それは当然だ。
メディアの声が高まるにつれ、プレッシャーは大きくなる。昨夏「現有戦力維持路線」を敷いたジネディーヌ・ジダン監督だが、それを支持したフロレンティーノ・ペレス会長の我慢はいつまで続くのか。覇権を失い、黙っていられる会長ではない。
■大物選手を次々に獲得
2000年7月16日に会長選で勝利を収めたペレス会長は、2006年2月27日まで続いた「第一次ペレス政権」で次々に大物選手を獲得した。
2000年に宿敵バルセロナからルイス・フィーゴを引き入れると、2001年にはジダン、2002年にロナウド、2003年にデイビッド・ベッカムを獲得して「銀河系軍団」を作り上げた。スタープレーヤーたちはビセンテ・デル・ボスケ監督にまとめあげられ、2002年にチャンピオンズリーグ(CL)を制覇している。
第一次ペレス政権下で、マドリーは計11タイトルを獲得した。その間、およそ4億2200万ユーロ(約569億円※現在のレート)の資金が補強に投じられた。
だが2003年にロナウジーニョを獲得してチームの刷新を図り、2006年にCLを制覇したバルセロナとは対照的に、銀河系軍団の力は衰えていった。2006年にジダンが現役を退き、その翌年にはベッカムがマドリッドを去った。
■ジダン就任時に現れたペレス会長らしさ
2009年に再びマドリーの会長職に就いたペレス会長はクリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、カカーを一挙に獲得して、マドリディスタに夢を届けた。
2013年にはガレス・ベイルを獲得して、「BBC」が形成される。ベイル、ベンゼマ、C・ロナウドの3選手を常時起用するのは、歴代指揮官の暗黙の了解であった。
思い起こすと、ジダン監督の就任時に、ペレス会長「らしさ」が現れていたような気がする。2015-16シーズン、ラファエル・ベニテス監督に率いられたマドリーはクラシコでバルセロナに0-4と敗れ、クライシスに襲われていた。
「解決策はベニテス」。この発言から18日後、2016年1月4日にペレス会長はジダン監督の就任を発表した。いとも簡単に、自身の言葉を翻してみせたのである。元実業家のペレス会長は、物事を合理的に捉えるところがある。それでいて、彼には激情型の一面もある。昨日のイエスが、今日はノーになる。そして、一度決断すれば即行動に移すのだ。
その犠牲となったのが、ベニテス監督であった。ただ、ペレス会長は現時点でジダン監督への信頼を保っている。選手時代にノベナ(クラブ史上9回目のCL制覇)をもたらし、監督として2度CLを制した指揮官に対して敬意を払っている。その点はベニテス監督との大きな違いだ。
だからこそ、昨夏、ジダン監督が提示した現有戦力維持路線の要望を受け入れた。しかし、今季リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、CLのいずれのタイトルも獲得できず無冠に終われば、ペレス会長はジダン監督に別れを告げて大型補強に乗り出すかもしれない。
■新・銀河系軍団
「BBC」を中心にしたチームに、サイクルの終焉が訪れた。今は、そんな雰囲気が漂いつつある。
2017-18シーズン、各クラブが選手獲得に投じた資金を見てみる。1位はバルセロナで3億1250万ユーロ(約421億円)、2位はマンチェスター・シティの2億4930万ユーロ(約336億円)、3位にパリ・サンジェルマンで2億3800万ユーロ(約321億円)、4位はチェルシーの2億1680万ユーロ(約292億円)で、5位がミランの1億9450万ユーロ(約262億円)だ。
テオ・エルナンデスとダニ・セバジョス獲得にマドリーが費やした資金は4250万ユーロ(約57億円)である。マドリーは今季の補強資金でトップ5どころかトップ10からも外れ、欧州主要リーグのクラブで13番目に位置している。
大物選手の加入はおそらく、今冬の移籍市場ではなく、次の夏だ。ネイマール、エデン・アザール、ロベルト・レヴァンドフスキ、マウロ・イカルディ...。スペインメディアでは、派手な名前が踊っている。ペレス会長が決断を下す時、新たな銀河系軍団が誕生する可能性は否定できない。