「教員採用選考試験早期化」と「NTT初任給引き上げ」、どちらが人材確保できる?
NTTグループが初任給を引き上げると発表した。かたや文科省は教員採用試験の早期実施に躍起になっている。どちらも人材確保が目的なのだが、どちらが効果的なのだろうか。
|人材確保のために必要なことは?
NTTは11月8日にグループ主要会社の初任給を2023年4月に14%引き上げると発表した。大卒で3万円強が上積みされ、初任給は25万円となる。さらに、専門性が高いと判断された人材の初任給は27万2000円になるという。採用競争が激化しているなかで、待遇を高めることでしか優秀な人材は獲得できないと判断したことになる。
人材の獲得に躍起になっているのは、文科省も同じである。2021年度実施の2022年度公立学校教員採用選考試験の採用倍率は全体で3.7倍、小学校で2.5倍と過去最低を更新している。民間企業への人材流出が止まらず、教員志望者が減りつつある結果である。
そこで文科省と都道府県・政令市教育委員会は、教員採用選考試験の早期化や複数回数実施を検討する「教員採用選考試験の在り方に関する関係協議会」を発足し、10月19日に初会合を開いている。教員採用選考試験を従来より数ヶ月早めれば、民間企業に流れてしまう前に人材を確保できると考えているようだ。
しかし、学校のブラック化が教員志望者を減らす大きな原因であることは明らかだ。基本給の4%が上乗せされるだけで、過労死ラインを超える残業を強いられる、いわゆる「定額働かせ放題」が教員の働き方の現実なのだ。
そうした待遇を改善しないことには、教員志望者は増えない。それを後回しにしておいて、教員採用選考試験を早めれば人材を確保できるという発想が、そもそも現実離れしているというしかない。
|大丈夫なのか文科省
いくら早めたところで、教員採用選考試験が終わるまで民間企業が採用活動を控えてくれるわけもない。早期化が効果的なら民間企業が先にやるだろう。というより、そんなことは民間企業はとっくにやっているし、その効果が薄いことも実感している。それを文科省が大真面目に取り組もうとしているのだから、民間企業はあきれているにちがいない。
早期化くらいで人材は確保できないからこそ、NTTグループは待遇引き上げに踏み切ったのだ。そうでなければ人材確保は難しいところにきており、本気で人材を確保したいなら当然のことである。
民間企業は人材確保に必要な「当然のこと」に動きはじめている。NTTグループを追随する動きは、今後、活発になっていかざるをえないはずだ。
そうしたなかで教員については、ブラックな待遇を放置したまま、採用選考試験の早期化という時代錯誤的な発想の対応しか検討されない。ますます人材は民間企業に流れ、教員志望者は減りつづけ、教員不足も解消されないどころか、もっと悪化していくことにならないだろうか。