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「文部科学大臣メッセージ」、「意気込み」だけの空回りにならないだろうか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 永岡桂子文科相は8月29日付で、「文部科学大臣メッセージ~子供たちのための学校の働き方改革 できることを直ちに、一緒に~」(以下、メッセージ)を発表した。文科省の働き方改革に対する「意気込み」を示したことになる。

 問題は、その「意気込み」がほんとうに実現につながるのか、ではないだろうか。「意気込み」だけが空回りに終わってしまう可能性も、じゅうぶんにありうる。

 メッセージで永岡文科相は、「教師を取り巻く環境をより良いものとすることは待ったなしであるため、直ちにできることに関し、文部科学大臣としてメッセージをお伝えします」と述べている。そして、「国が先頭に立って改革を進めます」として「これまで以上に力強く教育予算を確保します」と宣言している。

 文科省は8月30日に、2024年度予算の概算要求を公表した。そこには2011年度予算以来、13年ぶりとなる教員定数の「純増」を目指す要求が盛り込まれている。

 純増を目指す方針を明言したことは評価されてもいい。しかし、深刻な教員不足は急に始まったことではない。以前から指摘されており、教員定数の引き上げを望む声があちこちからあがっていた。その声に押されて、ようやく文科省が「13年ぶりに純増」を掲げたといえる。これまで13年も純増を見送ってきて深刻な教員不足を招いた文科省の責任は逃れようがない。

 さらにメッセージは、「国・地方自治体・各学校が行う業務の精選・見直しを国が率先して示します」としている。

 8月28日に、中央教育審議会(中教審)の「質の高い教師の確保特別部会」が「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」という「緊急提言」を発表している。「緊急」といっているものの、それは「学校・教師が担う業務に係わる3分類」(以下、3分類)の徹底を要請するものでしかない。

|4年も前のことを、いまさら緊急提言

 3分類は、2019年1月25日の中教審答申の「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のために学校における働き方改革に関する総合的な方策について」で示されたものだ。ここで学校・教員の仕事を、「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3つに分類している。

 2019年の1月、つまり4年以上も前に中教審が「教員の仕事ではない」と分類しているにもかかわらず、いまになって徹底を提言していることになる。4年経っても実現できていないので、緊急に徹底を要請していることになる。

 4年も経って実現していないにもかかわらず、永岡文科相は「できることを直ちに」とのメッセージをだしていることになる。ほんとうに「直ちに」実行できるのか、という疑問は消えない。

 そして緊急提言が文科省に求めている多くを占めているのは、「明確なメッセージの発信」でしかない。

 今回の永岡文科相のメッセージは、その「明確なメッセージ」の一環なのかもしれない。しかし、メッセージだけで何かが変わるのか、という疑問はある。もし変わるのであれば、なぜ文科省は4年ものあいだ、効果的なメッセージを発信できなかったのか、との疑問に突き当たるしかない。

|予算確保できるのか、文科省の本気と実力が問われる

 文科省の「明確なメッセージ」には期待できそうもない。そうなると、文科省に何ができるのか。それこそ答は明確で、教員定数の純増などに必要な予算を確保することでしかない。それは、文科省にしかできないことでもある。

 概算要求をだしました、しかし財務省に拒否されました、では済まない。最後には、財務相との大臣折衝で、どれくらい永岡文科相が政治力を発揮できるかにかかわっている。

 永岡文科相はメッセージで、「力強く教育予算を確保します」と宣言している。ただ「言ってみました」では済まされないはずである。予算確保を実現できるのかどうか、文科相としての「意気込み」が問われている。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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