動物園のアイドル「コツメカワウソ」の“ウラの顔”をとは?飼う前に知ってほしいこと
SNS上では、ライオンやゾウを抜いて人気な動物がいます。それは、コツメカワウソです。手先が器用な動物で両手を合わせる「お願いのポーズ」もできますし、小石で遊ぶこともできます。また、指でモノをつまんでひとつずつ食べる姿は人間っぽくて「かわいい」です。
そんな投稿を見て、コツメカワウソを飼いたくなる人がいます。コツメカワウソは、イヌやネコのようにペットになるのでしょうか?コツメカワウソの"ウラの顔"を知って、よく考えましょう。
コツメカワウソの“ウラの顔”とは?
ますは、コツメカワウソをざっくり説明します。イタチ科で食肉類(肉を食べるということです)に分類されます。
SNSで見るコツメカワウソは、小さいように見えますが、意外と大きいのです。
・体長41 - 64cm
・尾長25 - 35cm
・体高20cm
・体重2.7 - 5.4kg
イメージとしては、体は流線形でオッポの長い細いネコのような感じです。東南アジアの水辺に生息しています。
“ウラの顔”とは?
WWFの「飼育員さんだけが知っているあのペットのウラのカオ」ページで、上野動物園の大橋直哉さんは以下のように解説しています。
□水道代が超高額で月に10万円ぐらいかかる
コツメカワウソは、水辺にいる動物です。水の中を自由に動き回るために、12平方メートルぐらいのプールというか水場がいります。部屋でいうと8畳ぐらいです。一般の家庭の風呂だと小さくて、くるくる回るだけしかできず、ストレスです。ストレスがかかると、病気になりやすいのでそのような環境はよくないですね。そのうえ、雑菌対策として、毎日、水を入れ替える必要があるのです。
そのため、水道代が月に10万円ぐらいかかります。
□エサは、生きたドジョウや生のアジ
コツメカワウソを飼えば、ペットフードをあげればいいわ、と思っていませんか。それではダメなのです。自然界では、魚、昆虫、蟹、カエルなどを獲って食べています。新鮮な魚や甲殻類を食べる動物なのです。
上野動物園では、アジなどの生魚(冷凍するとビタミンが壊れる)、リンゴ、小松菜、鶏の頭、生きたドジョウをあげているそうです。
このようなエサをあげていないと病気になりやすいのです。
□ふんのニオイがきつい
コツメカワウソは、肉食動物なのでふんのニオイがきついです。そのうえオッポが長いのでシッポにふんを付着して歩きます。その理由のひとつは、なわばりを示すことが必要だからです。
つまりペットにすれば、部屋中、ふんを付けて歩き回ることもあるのです。
上野動物園では、そのため、水でコツメカワウソとその辺りをよく洗っているそうです(そのため、水道代が高額になります)。
□甲高い声でよく鳴く
餌がほしいときに、甲高い声でよく鳴きます。
キーキーという感じで意思表示するので、おとなしい動物ではありません。
□なつきにくく、鋭い歯
SNSを見ていると、濡れた体を乾かすためにタオルなどに「すりすり」する姿などがあり「かわいい」ので、なつくように思うかもしれません。野生動物なので、なつきにくく、なついているように見えても油断は禁物です。
上野動物園では、コツメカワウソのエサに鶏の頭をあげていますが、それを丸かじりできるほどのするどい歯としっかりした顎を持っているので、噛まれると流血するほどのケガをすることもあります。
イヌやネコのように、なつくことは難しいのです。
□病気になったら、診察できる獣医師がほとんどいない
このように、なつかないし、元来、野生動物なので生態もよくわかっていないので、病気になったら、診察できる獣医師がほとんどいません。コツメカワウソの体の状態を知りたく、血液検査をしようと思ってもなつかないので鎮静や麻酔をかけないと難しいのではないでしょうか。
野生動物なので、上述のように飼養環境を整えてストレスがないようにすることが、病気の予防になるのです。
コツメカワウソの社会的背景
メディアなどで取り上げられ2017年ごろからペットブームが起きたコツメカワウソは、生息地の環境破壊などもあり過去30年間で個体数が3割も減少しました。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト危急種(VU)に指定され、取引がリスクに拍車をかけているとして、2019年にはコツメカワウソはワシントン条約附属書1(CITES1)になり、国内では種の保存法が適用されることになりました。
売買には必ず(社)自然環境研究センターに申請して登録票をもらわないといけません。つまり、ペット利用の輸入が禁止となりました。
規制の前に輸入されたコツメカワウソや、その個体から生まれた個体であれば、その証明ができる許可を受けた場合、購入は違法ではないといいます。
コツメカワウソを飼いたいと思っているの人へ
コツメカワウソなどの野生動物のペット化の需要があると、狩猟・密輸で個体数が減ってしまうことや、それに加えて感染症が広まるおそれがあります。
以前、アニメで人気ものになったアライグマは、幼い時期にはかわいいのですが、成長すると獰猛になり遺棄した人が多くいました。それで、いまでは特定外来生物になり、サギ類のコロニーの破壊やサンショウウオの捕食など、アライグマによると考えられる生態系への影響が報告されています。
「かわいい」だけで、動物を飼うことは危険な行為だということを認識してほしいです。
ぜひお近くの動物園・水族館へ行き、泳ぐときに耳を閉じる「かわいい」コツメカワウソを見に行ってください。