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世界が認めたココイチの味を“逆輸入”。名古屋に 「ココイチワールド」オープン

大竹敏之名古屋ネタライター
ココイチワールドのメニューは国内のココイチでは食べられなかったオリジナルばかり

ナンバー1カレーチェーンは海外でも200店舗以上を展開

“ココイチ”の呼び名でおなじみの「カレーハウスCoCo壱番屋」(経営/壱番屋 愛知県一宮市)。国内で1200店舗以上を展開する圧倒的な業界ナンバー1チェーンです。ちなみに店舗数業界2位は松屋フーズ「マイカリー食堂」141店舗ですが、ほとんどが牛丼の「松屋」の併設店。他に100店舗以上を出店するブランドはなく、まさに独走状態です。

このココイチ、海外でも12の国と地域で208店舗を展開(2023年5月末現在。これだけでもマイカリー食堂の1・5倍!)。世界中に“ジャパニーズカレー”を広めているグローバルチェーンです。

そして、実は海外で食べられているココイチのカレーは海外専用に開発したもの。地域を問わず食べられるよう、食肉由来の原材料を含まず、それでいて日本のココイチの味を再現した専用カレーソースを使用しています。さらにオムカレー、カレードリアなど国内にはないオリジナルメニューも多数提供されているのです。

これら海外のココイチのメニューを日本に逆輸入したのが「CURRY HOUSE CoCoICHIBANYA WORLD」(通称「ココイチワールド」)です。昨年10月、東京に「京橋エドグラン店」をオープン。そしておひざ元である愛知県に2号店となる「ココイチワールド 名古屋JRゲートタワー店」を2023年6月12日にオープンします。

名古屋駅前の大型商業施設・JRゲートタワー12階のレストラン街に出店。既存のココイチにはなかった立地で新たな客層の掘り起こしも期待できる
名古屋駅前の大型商業施設・JRゲートタワー12階のレストラン街に出店。既存のココイチにはなかった立地で新たな客層の掘り起こしも期待できる

イチ推しのオムカレーを実食。そのお味は?

海外でも人気を博しているココイチの味は一体どんなものなのか? ひと足先に味わってみました。

実食したのはいろどり野菜のキーマオムカレー。オムレツでご飯をくるみ、ミンチ入りのカレーがたっぷり。さらにカラフルな野菜も添えられます。

いろどり野菜のキーマオムカレー。海外でウケたオムカレーをベースにしたココイチワールドオリジナルメニュー。1360円
いろどり野菜のキーマオムカレー。海外でウケたオムカレーをベースにしたココイチワールドオリジナルメニュー。1360円

カレーソースは日ごろ食べ慣れているものと比べるとややマイルドで優しい味わい…という気もしますが、そう感じるのは食肉由来原料未使用とあらかじめ聞いていたからかも。コクもしっかりあり、予備知識なく食べれば、いつものココイチだと感じるかもしれません。日本のココイチではスクランブルエッグのトッピングは定番で、一部店舗でオムカレーはありますが、卵のふわとろ感、カラフルなビジュアルはここだけのもの。味わいの面でも“映え”の面でも、従来のココイチとは違った魅力があるのです。

海外進出当初は苦戦。ヒット商品が世界の扉を開いた!

オムカレーはココイチワールドのイチ推しメニュー。というのも、海外での人気を決定づけ、本格的なチェーン化に導いた一品だからだといいます。

「当社の海外出店は1994年のハワイが最初。本格的に店舗展開を始めたのは中国からですが、2004年に中国1号店を出店した当初はなかなか受け入れてもらえませんでした」とふり返る広報担当者。

そんな状況を打破したのがオムカレーでした。

「1号店のオープン後しばらくしてこのオムカレーを開発して提供したところ、見た目の華やかさから女性やカップルのお客様が増えるようになったのです。当時の中国では価格がやや高いと思われていたのですが、ハレの日に行く店というイメージもつき、業績も上向いていきました」

オムカレーのヒットから中国での店舗展開に弾みがつき、それにともなって出店する国や地域をどんどん拡大。現在の出店先はアメリカ(ハワイ、本土)、中国、台湾、韓国、タイ、香港、シンガポール、インドネシア、ベトナム、イギリス、インド、フィリピン。タイが51店で最も多く、中国47店がこれに続きます。

店内の壁の世界地図で、出店している国と地域がひと目で分かる
店内の壁の世界地図で、出店している国と地域がひと目で分かる

メニューブックでは、各メニューの横に出店している国・地域の国旗が記され、どの国で提供されている商品なのかが一目瞭然。12地域で定番となっているオムカレーの他、台湾、タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナム、イギリスで出されている豚キムチカレー、台湾と香港にしかない麻婆なす豆腐カレーなど、そのカレーを食べている国の人たちの嗜好を想像しながら食べるのも楽しそうです。

メニュー名の上には提供されている国、地域の国旗が記してある
メニュー名の上には提供されている国、地域の国旗が記してある

既存ココイチと異なる点、そして今後の出店は?

この業態を開発・出店した狙いを「社員にとってのチャレンジ。自分たちがワクワクすると同時にお客様にも新しいワクワクを届けたいと考えました」と担当者。既存のココイチの客単価が1000円前後のところ、ココイチワールドは1500円を想定していて、価格面でもアッパーな業態に位置付けられます。

また今回の2号店は名古屋駅前の大型商業施設内。既存のココイチにはない立地で、男性客がおよそ7割を占めるココイチに対して、女性客の取り込みも期待できそうです。

カレーソースの種類や辛さ、ライスの量、トッピングなどを選んで自分好みにカスタマイズできる、ココイチならではの楽しみ方はもちろんここでも
カレーソースの種類や辛さ、ライスの量、トッピングなどを選んで自分好みにカスタマイズできる、ココイチならではの楽しみ方はもちろんここでも

また、「現時点では〇年内に〇店舗、という出店目標は立てていません」とも。FCによる多店舗展開を前提とする同社の中では、直営でしかできないことにあえて挑戦した業態といえそうです。

それだけに当面、“海外のココイチの味”を食べられるのは東京、名古屋の2店舗のみ。ココイチファンなら“いつものココイチ”の“いつもとはちょっと違った”おいしさを味わわずにはいられないんじゃないでしょうか。

(写真撮影/筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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