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シリア北東部の油田地帯でロシア軍ヘリコプターが米軍ヘリコプターをにらみ合いの末に放逐(映像あり)

青山弘之東京外国語大学 教授
YouTube(Rusvesna)、2020年9月18日

シリア北東部で米軍ヘリコプターとロシア軍ヘリコプターがにらみ合う事件が発生した。

クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)に近いハーワール・ニュース(ANHA)が伝えたところによると、ハサカ県で9月16日、ロシア軍の装甲車4輌からなる部隊が、Mi-35ヘリコプターとMi-8ヘリコプターの2機の護衛を伴い、トルコとの国境に面するカフターニーヤ市(クルド語名はディルベ・スピーイェ)近郊のアールヤーン村一帯でパトロールを実施した。

これに対して、カフターニーヤ市を取り囲むようなかたちで、ハイムー村、マーリキーヤ市(クルド語名はダイリーク)、ルマイラーン町に違法に基地を設置している米軍部隊が出動し、カフターニーヤ市近郊を通るM4高速道路上に展開し、ロシア軍の進攻を阻止しようとした。

英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、米軍部隊もAH-64アパッチ戦闘ヘリコプター2機の護衛を受けており、ロシア軍ヘリコプター2機とともに低空で旋回し、威嚇し合うという異常な事態となった。

事件から2日が経った9月18日、ロシアのニュースサイトのルスヴェスナは、この状況を撮影した映像2点と写真3点を公開した。

Rusvesna、2020年9月18日
Rusvesna、2020年9月18日
Rusvesna、2020年9月18日
Rusvesna、2020年9月18日
Rusvesna、2020年9月18日
Rusvesna、2020年9月18日

同サイトは、このように伝えた。

シリア北東部でのロシアと米国のパトロールをめぐる長い対立の末、有志連合は地上での挑発を完全に止めた。

にもかかわらず、9月16日、米軍は今度は上空からロシア軍のパトロールを挑発しようとした。

だが、それは成功しなかった。ハサカ県でのロシア憲兵隊による通常パトロールにおいて、米国のAH-64アパッチ2機がすべての合意に違反し、ロシア軍の車列に同行しようとした。しかし、ロシア軍航空機の行動により、米軍との新たな事件の発生を回避することができた。アパッチ・ヘリコプターはロシア軍の車列に接近しようとはせず、遠くからパトロールを傍観した。

一方、シリア政府寄りのニュースサイトのシャームタイムズは、目撃者の話として、米軍ヘリコプターがロシア軍の嫌がらせを受けて退散したと伝えた。

米軍は、多くの油田を擁するハサカ県北東部のほか、ダイル・ザウル県の油田地帯など合わせて15カ所あまりに基地を設置し、違法に駐留を続けている。

筆者作成
筆者作成
東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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