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帝国ホテルのイタリアンフェアとサンドイッチ バイキングがヒットしている理由

東龍グルメジャーナリスト

2つのランチブッフェ

帝国ホテルの17階では、ランチに2つのブッフェが行われていることをご存知でしょうか。

「【バイキングの日】ブッフェはバイキングではないのか?」でもご紹介したように、帝国ホテルといえばバイキングの発祥であり、1958年から始まる実に長い歴史があります。

「インペリアルバイキング サール」では朝食、ランチ、ディナーに本格的なバイキングの流れを汲むブッフェが行われており、居心地のよいラウンジ&バー「インペリアルラウンジ アクア」ではランチにライトなブッフェが行われています。

どちらとも定番や伝統は守りつつも、積極的にフェアを展開して新しいことを試みていますが、現在行われているインペリアルバイキング サールの「イタリアンフェア」とインペリアルラウンジ アクアの「サンドイッチ バイキング」が共によく取り上げられています。「グッド!モーニング」(テレビ朝日)や「はやチャン!」(TBS)といったテレビ番組、SmartNewsやグノシーといったWebニュースでご覧になった方は多いでしょう。

この2つのフェアが注目されている理由は何でしょうか。

初めてのフェアではない

牛フィレ肉のパイ包み焼き 赤ワインソース
牛フィレ肉のパイ包み焼き 赤ワインソース

テレビによく取り上げられているどうかを改めて訊くと、広報課 野口芙実氏は「テレビの取材は他のフェアよりも多い」と答えますが、「イタリアンフェアもサンドイッチ バイキングも、今回が初めてではない」と意外なことを述べます。

インペリアルバイキング サールに関しては「白鳥真樹シェフが就任して2回目のイタリアンフェアとなり、昨年よりもさらに質を高めていることが、取り上げられている理由ではないか」と話し、インペリアルラウンジ アクアに関しては「アクアのランチは、もともと非常にお得であった。ラウンジとサンドイッチは相性がよいので、改めてよさを知っていただけたのではないか」と話します。

親しみ易くなったイタリアンフェア

アランチーニ
アランチーニ

白鳥氏はミシュランで1つ星を獲得し続けている帝国ホテル「レ セゾン」出身なので、フランス料理が専門です。そのことに触れると、広報課 照井修吾氏は「帝国ホテルは村上信夫シェフの存在感が大きいので、フランス料理のイメージが強い。しかし、白鳥シェフは惜しまれつつ閉店したイタリア料理のチチェローネで腕を奮ったり、イタリアで研修を受けたりしたこともある。フランス料理だけではなくイタリア料理も専門としており、色々なアイデアを出している」と説明します。

、ポルペッティ トマトとタレッジオチーズのソース
、ポルペッティ トマトとタレッジオチーズのソース

では、今年のイタリアンフェアは例年と比べると、何が違うのでしょうか。白鳥氏は「シェフに就任してから2回目のイタリアンフェアを迎えるので、やりたいことがさらにできるようになった。イタリアンはみんなで楽しく召し上がっていただきたいので、パスタを増やしたり、リゾットを加えたりと、ほっとするようなイタリアの家庭料理をご用意した」と答えます。

確かに、ライスコロッケのアランチーニや肉団子のポルペッティなど、幅広い層に受け入れられるメニューを用意していると言えるでしょう。

本格的かつ親しみ易く

ほうれん草のフェットチーネ うさぎ肉の煮込みソース和え
ほうれん草のフェットチーネ うさぎ肉の煮込みソース和え

こだわりを訊くと「食べ易いメニューをご用意しているが、ペコリーノチーズやタレッジョといったチーズをふんだんに使用しており、本格的なイタリア料理に仕上げている」と力を込め、「女性のお客さまが多いので野菜をたくさん使っている。トマトベースのソースが多いので赤が多くなりがちだが、サフランを加えるなどして彩りも豊かにしている」と、ブッフェならではのプレゼンテーションに気を遣っているとします。

さらには「小鍋で一人分ずつお作りするココット料理が定番。野菜とウズラの卵のアクアコッタは、本来は鶏の卵だが、ココット鍋に合わせて鶉の卵を使っている」と定番メニューもイタリアンフェアに合わせたということです。

野菜とウズラの卵のアクアコッタ
野菜とウズラの卵のアクアコッタ

来年に関しては「もっとチーズの種類を増やしたり、料理によってオリーブオイルを使い分けたりしたい。店名のサールは料理の基本である塩を意味しているだけに、イタリアの塩を使ってより本格的なイタリア料理を召し上がっていただきたい」と今から構想が尽きません。

インペリアルバイキング サールのイタリアンなフェアは例年と同じだと思いましたが、白鳥氏によってますます本格的になりながらも、より親しみ易くなっているところが、人気となって取り上げられている秘密になっているのでしょう。

サンドイッチが人気

ポークカツバーガー
ポークカツバーガー

では、インペリアルラウンジ アクアのサンドイッチ バイキングが人気を博しているのは何故でしょうか。

そう考えてブッフェでサンドイッチをテーマとしているものを考えていると、ホテルニューオータニ「ガーデンラウンジ」のサンドイッチ&スーツビュッフェが浮かびました。加えて、「2015年に注目したい大阪ホテルグルメ」でご紹介したホテルニューオータニ大阪の総料理長である太田高広氏が「本当に旨いサンドイッチの作り方100」というレシピ本を上梓して、書籍ランキングでも上位になっていることも思い出します。

サンドイッチがじわじわとブームになっていると思い、野口氏に人気の理由を訊いてみると「パンケーキ、フレンチトーストがブームとなり、粉物というつながりでサンドイッチが注目されているのではないか」と話します。

もともとインペリアルラウンジ アクアではアフタヌーンティーが高い人気を誇っているだけに、同じ客層がサンドイッチ バイキングを好んで利用しているとも考えられるでしょう。

ホテルの質が高いサンドイッチ

イチゴとバナナのフルーツサンドイッチ
イチゴとバナナのフルーツサンドイッチ

では、昨年とは何が違うのでしょうか。

照井氏は「冷製4種、温製4種のサンドイッチをご用意して、昨年よりも充実させた。加えて、お客さまは女性の方がほとんどなので、デザートも増やしている。何時間いても飽きずに寛いでいただける」と話し、こだわりについては「このサンドイッチ バイキングのために、ベーカリーでパンを焼いている」と自信を持ち、野口氏は「アフタヌーンティーと同様にサンドイッチ バイキングでもドリンクをお代わりできるので、長時間お話に花を咲かせられる」と女性に嬉しい内容になっていることを挙げます。

ホテルのキッチンで美しく作られたサンドイッチは、ブッフェ台に何種類も並べられると実に華美で、アフタヌーンティーの3段スタンドとは違う魅力を持ちます。サンドイッチとデザートを充実させたことでラウンジとの融和性が高くなり、これまで以上に女性へ訴求できるようになったことが、人気を爆発させている理由となっているのでしょう。

各国フェアから進化

「インペリアルバイキング サール」デザートのブッフェ台
「インペリアルバイキング サール」デザートのブッフェ台

サンドイッチ バイキングを紹介する帝国ホテルのプレスリリースには、以下のような記述があります。

「料理はその国の民族や歴史、伝統、文化の結晶であり、その国の食べ物を知ることは国際理解の一歩となる。」という信念のもと、帝国ホテルでは、1964年の東京オリンピック開催以降、世界各国の料理を紹介するフェアを先駆けて行ってきました。

1965年、第1回のフードフェスティバルとして開催された「スイスフードフェスティバル」では、スイスよりシェフを招聘してスイス料理を提供し、おおいに好評を得ました。それと同時に、現地のスタッフより本場の料理を学ぶという貴重な機会も得ました。

同年には、「スカンジナビアフードフェスティバル」も開催し、「ジャーマンフードフェスティバル」や「メキシコフードフェスティバル」、そして、1973年に、初めての「イタリアンフードフェスティバル」を行いました。以来、今日に至るまで、帝国ホテルでは数多くのフェアが開催されています。

日本系ホテルは外資系ホテルに比べれば保守的なイメージもありますが、帝国ホテルは古くから各国フェアを行ってきており、照井氏と野口氏は「外国の素晴らしい料理を多くの方に知っていただくために、今後もフェアを実施していきたい」と想いを込めて話します。

1973年から始まったイタリアンフェアは、フランス料理もイタリア料理も得意とする白鳥氏に受け継がれ、それと同時に、各国という枠組からサンドイッチといった新しい切り口を開き、「その国の民族や歴史、伝統、文化の結晶である」その国の食べ物を理解する手助けとなっていますが、この信念がある限り今後もフェアがヒットしていくのではないでしょうか。

情報

詳しくは公式サイトをご確認ください。

参考

すみれ草201に、インペルアルバイキング サールのイタリアンフェアインペリアルラウンジ アクアのサンドイッチ バイキングが詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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