材料は三つのみ。桂大橋の袂、京都「中村軒」さんの強かな道明寺の弾力とさらりとしたこし餡の椿餅
モノトーン、ツートンカラー、バイカラー。モノトーンは白と黒ですが、いずれも二色の色を示す言葉です。髪を染める時に一部だけ色を入れる際、あとはファッション雑誌などでも時折目にするかと思います。
そして、和菓子の中で私のお気に入りのツートンカラーのものといえば「椿餅」。目の覚めるような緑もあれば、思わず前のめりになってしまいそうな深い緑色の椿の葉に挟まれた道明寺。その道明寺もまた様々で、生成りの白からほんのり青みがかった白、平安時代の名残をうつしたほんのり茶色く色づけしたものまで。
白と緑、このひとことで片付けてしまうのは実に簡単なのですが、同じ季節の和菓子でもその見た目、そしてお店の拘りは千差万別。今回は、京都の和菓子屋「中村軒」さんの「椿餅」をご紹介。
桂大橋を渡り、桂離宮のすぐそばにお店を構える明治十六年創業の中村軒さん。代名詞でもある麦代餅(むぎてもち・いつかこちらもご紹介したいと思います)をはじめ、小豆などの素材をはじめ、特に粒餡はかまどで炊き上げるという約140年も続く技法を継承し、大切にしていらっしゃるとのこと。ガスやIHとはまた異なる、直火ならではの味わいですね。
中村軒さんの椿餅の材料は非常にシンプルで、道明寺粉・小豆・お砂糖の三つ。道明寺湖は粒の形こそしっかりのこっているものの、大きさが整っているのでふっくらと整えられた形がとてもきれいですね。柔らかなフォルムに映える端正な椿の葉にも注目です。
もっちりとした弾力、そして仄かな芯の強かさが心地よいお餅は噛み応えがあり、一般的な餅菓子に比べ小柄といえども存在感と食べ応えがあります。中餡はさらっとしたこし餡。あんこの甘味と糯米の甘味それぞれが、噛みしめるたびに存在感を増していく糯米の旨味と混ざり合う塩梅がまた醍醐味なんですよね。
目の覚めるような色彩に、ほっこりかつシンプルな和菓子ならではの醍醐味を見出すにはぴったりな椿餅。お近くで見かけた際には、ぜひ召し上がって冬を越してくださいね。
<中村軒>
公式サイト(外部リンク)
京都市西京区桂浅原町61
075-381-2650
8時30分~17時30分
定休日 水曜(祝日は営業)