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腐ってもタイ 台風6号から変わった低気圧の雨に注意

饒村曜気象予報士
雲の渦巻き 台風のイメージ(提供:アフロ)

台風発生前の情報

 台風6号が6月15日9時に台湾の西海岸で発生しました。6月に入ってすでに3個目の台風です。

 日本近海で台風が発生する時は、台風発生と同時に日本に影響を与えますので、台風発生してから情報を出したのでは、防災対応が間に合わないことがあります。

 そこで、気象庁の台風情報では、平成17年(2005年)6月1日から、24時間以内に台風になり、日本に接近すると予想した熱帯低気圧について、その実況と24時間後の予想位置を「発達する熱帯低気圧に関する情報」として発表しています。

 これは、平成16年(2004年)の台風11号の教訓によって始められました。このときに、想定される「発達する熱帯低気圧に関する情報」が、図1です。

図1 平成16年の台風11号について発表された台風情報と想定される「発達する熱帯低気圧に関する情報」
図1 平成16年の台風11号について発表された台風情報と想定される「発達する熱帯低気圧に関する情報」

 台風6号も、発生する1日前に「発達する熱帯低気圧に関する情報」が発表になりました。

発達する熱帯低気圧に関する情報

平成30年6月14日10時15分 気象庁予報部発表

(見出し)熱帯低気圧が今後24時間以内に台風に発達し、先島諸島に接近する見込み

です。

(本文)14日9時の観測によると、熱帯低気圧が南シナ海の北緯21度50分、東経118度35分にあって、1時間におよそ15キロの速さで東へ進んでいます。中心の気圧は996ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は15メートル、最大瞬間風速は23メートルとなっています。

 熱帯低気圧は今後24時間以内に台風となる見込みで…

台風6号は温帯低気圧に

 台風6号は九州の南海上で温帯低気圧に変わって本州の南海上を東北東進する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(6月17日9時の予想)
図2 予想天気図(6月17日9時の予想)

 このため、太平洋側の地方を中心に雨の可能性がありますが、温帯低気圧の進路によって雨の予想が大きく変わります。

 昔から気象予報の現場では、「腐ってもタイ」と言われています。

 台風は、風速が弱まって熱帯低気圧に変わっても、構造が変わって温帯低気圧になっても、大きな被害をもたらすことがあるからです。台風から変わった温帯低気圧は、南から多量の水蒸気を持ち込んでいますので大雨の可能性があり油断できません。

 台風に伴う雲は、台風の中心だけでなく台風の周辺にもありますので、広い範囲で警戒が必要です(図3)。

図3 地上天気図と衛星画像と上空約1500メートルの気温
図3 地上天気図と衛星画像と上空約1500メートルの気温

 また、台風6号の後を追うように、台風の卵である積乱雲の塊が先島諸島に接近してきますので、こちらについても注意が必要です。

図1、図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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