南岸低気圧の大雨でも近畿から関東甲信は梅雨入りせず・遅い梅雨入りと梅雨期間の雨量との関係
南岸低気圧による大雨
令和6年6月18日は、沖縄付近から北上してきた前線上に発生した低気圧が南岸を東進し、大気が不安定だった北日本も含め、ほぼ全国的に雨の一日になりました(タイトル画像)。
気象庁は、前日、6月17日夕方に、鹿児島県(奄美を除く)、宮崎県、愛媛県、高知県、徳島県、香川県に線状降水帯が発生する可能性があるという線状降水帯の半日前予報を発表していましたが、実際には発生しませんでした。
とはいえ、6月18日の日降水量は、九州南部から関東南部では所により100ミリを超える雨となり、静岡県の天城山では320ミリを観測しました(図1)。
線状降水帯が発生して記録的な雨は降りませんでしたが、各地で大雨警報を発表するほどの雨が降り、飛行機の欠航が相次ぎ、東海道新幹線が一時運休するなど、交通機関が混乱しています。
気象庁が発表した線状降水帯に関する半日前予報は、気象庁が行っている令和12年(2030年)までの10年計画(線状降水帯を含む集中豪雨の予測精度向上)の研究・技術開発の途中成果に基づくものです。
線状降水帯による災害を防ぐことは喫緊の課題であり、いくら難しい課題といっても、令和12年(2030年)まで待っていられないからですが、途中成果に基づくものであるため、まだまだ精度の低い情報です。
しかし、精度が低い情報と言っても、線状降水帯に関する情報が発表されたときは、少なくとも大雨警報が発表されるほどの大雨となりますので、警戒が必要な情報であることにはかわりはありません。
現在、今年就航した気象庁の観測船・凌風丸(四世)が東シナ海で上空の水蒸気等の観測を最新の機器で行っていますので、新しい知見が発見でき、さらなる予測精度の向上が期待されています。
九州北部は梅雨入りしたものの
令和6年(2024年)は、太平洋高気圧の北への張り出しが弱く、梅雨前線がなかなか北上してこないため、各地で梅雨入りが遅れています(表1)。
梅雨入りが一番遅い東北北部で、梅雨入りの平年が6月15日と、すでに過ぎています。
このため、梅雨入りしていない地方でも、平年より遅い梅雨入りが確定しており、今年、令和6年(2024年)は、梅雨のない北海道を除き、全国的に梅雨入りが遅かったということができます。
南岸低気圧の通過後は前線が南下し、晴れ間が広がる所が多くなる見込みですが、すぐに東シナ海から九州にかけて前線が北上してくる予想となっています(図2)。
九州北部では、南岸低気圧による雨が降り出した6月17日(平年より13日遅い)に梅雨入りを発表した理由です。
しかし、近畿や東海、関東甲信などは、南岸低気圧の通過後の晴れ間の期間が九州北部より長いことなどから、6月17日の梅雨入りは見送られました。
今週末には、梅雨前線が北上してくることから、遅ればせながらの梅雨入りになる地方があるかもしれません。
一方、沖縄・奄美は、今週中には梅雨明けとなり、晴天の夏空が続く見込みです。
関東甲信の梅雨入り
ウェザーマップは16日先までの天気予報を発表していますが、これによると、東京では、信頼度が5段階で一番低いEが多く含まれる予報ですが、6月21日までお日様マーク(晴れ)が続き、22日以降は黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が、23日以降は傘マーク(雨)が続く予報となっています(図3)。
東京の16日先までの予報をみると、関東甲信の梅雨入りは黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が続きはじめる6月22日か、傘マーク(雨)が続きはじめる6月23日になりそうです。
昭和26年(1951年)から昨年までの73年間で、関東甲信地方で梅雨入りが一番多かったのは6月上旬の後半(6日から10日)ですが、平成13年(2001年)以降に限っても、6月上旬の後半が一番多くなっています(図4)。
関東甲信地方で、梅雨入りが一番遅かったのは、平成19年(2007年)と昭和42年(1967年)の6月22日ですので、平年より遅いだけでなく、過去最も遅い梅雨入りを更新する可能性があります。
ただ、関東甲信地方の梅雨入りが遅くなる、あるいは、梅雨期間が短くなるといっても、降水量が少なくなるとは一概に言えません。
関東甲信地方で遅い梅雨入りだった1位から9位の梅雨期間の雨量を調べると(同日の場合は新しい年を上位)、平年の梅雨期間雨量より雨量が多かった(平年比が100%以上の年)のが6年、少なかった3年となっています(表2)。
つまり、短い期間で多量の雨が降った年が多かったことを示していますので、梅雨入りが遅い今年も、短期集中型の雨に注意が必要です。
タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図2、表1の出典:気象庁ホームページ。
図4、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。