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春一番からメイストームまで、春は嵐の季節 そんな中でさくらの開花ラッシュ

饒村曜気象予報士
満開の桜と青空、桜の花吹雪(写真:イメージマート)

春の嵐

 春は、冬の特徴である北の寒気が残っているところに、夏の特徴である暖気が入り始め、たびたび急速に低気圧が発達することから、嵐の季節と言われています。

 立春後に最初に強く吹く南風を「春一番」と言い、低気圧が日本海で発達することで起きます。その後、何回かの低気圧による強風のあと、春の終わりの5月に日本付近の低気圧の急発達による強風が「メイストーム」です。

 つまり、「春一番」から「メイストーム」までが春の嵐の期間ということもできますが、この2つの言葉とも、外国では通用しない日本独特の表現です。

 令和6年(2024年)3月29日は、低気圧が発達しながら日本海を北東に進み、また、別の低気圧が関東地方を通過する見込みです(図1)。

図1 予想天気図(3月29日9時の予想)
図1 予想天気図(3月29日9時の予想)

 このため、北日本や東日本では非常に強い風が吹き、北日本では大しけとなる所があります。北日本や東日本では暴風に、北日本では高波に警戒が必要です。

 特に、北日本や東日本の朝の通勤時間帯は、強い風と雨に注意は必要です(図2)。

図2 雨と風の分布予想(3月29日9時の予想)
図2 雨と風の分布予想(3月29日9時の予想)

 ただ、この低気圧が通過した29日の午後以降は、急速に天気が回復し、気温が上昇する見込みです(図3)。

図3 令和6年(2024年)3月29日のメッシュ天気(上は明け方、下は夕方)
図3 令和6年(2024年)3月29日のメッシュ天気(上は明け方、下は夕方)

 中国・四国地方から東日本の通勤・通学時間帯は、朝と夕方で様変わりです。

 そして、嵐のあとの気温上昇により、さくらの開花が各地で一気に進む見込みです。

今年のさくらの開花

 今年、令和6年(2024年)は、寒気の南下が弱く、しかも長続きしないことから暖冬で、さくらの開花を早める休眠打破という現象は弱めと考えられています。

 加えて、2月はかなり暖かい日が多かったものの、3月のはじめにかけて長めの寒の戻りがあったため、さくらの開花は、関東から西では平年並みか遅めになっています(図4)。

図4 さくら開花前線(ウェザーマップが3月28日に発表した予想)
図4 さくら開花前線(ウェザーマップが3月28日に発表した予想)

 今年のさくらの開花は、沖縄・奄美を除くと、トップは3月23日(土)の高知でした。

 その後、広島、宮崎などが続き、3月28日には名古屋と松江で開花しました(表)。

表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日
表 令和6年(2024年)さくら開花日と満開日

 3月29日には、東京、横浜、大阪、鹿児島など、東日本太平洋側から西日本でさくらの開花ラッシュとなりそうです。

東京のさくらの開花

 気象庁では、東京のさくらの開花は、東京都千代田区の靖国神社にあるソメイヨシノの標本木が5~6輪咲いた時を開花としています。

 ニュースで取り上げられる東京のさくらは、この靖国神社のさくらです。

 さくらの種類によって、あるいは日当たり等の植えられている場所の違いによって差がありますが、気象庁では、さくら開花の長期変化を調べたり、他地域の開花との比較を行うため、各地で標本木という特定の木を決めて観測をしているのです。

 3月28日現在、靖国神社の標本木には4輪咲いていますので、3月29日に東京でさくら開花の可能性は高いと思われます。

 東京(靖国神社)のさくらの開花は、近年早まる傾向にあり、特に令和になってからの早さが目立ちます。

 しかし、今年は、すでに平年より遅くなっており、3月29日に咲いたとしても、平成24年(2012年)の3月31日以来、12年ぶりの遅さということになります(図5)。

図5 東京(靖国神社)のさくらの開花日
図5 東京(靖国神社)のさくらの開花日

 これは、春分の日(3月20日)の頃に南下した寒気によって、東京で寒い日が続いたためです。

 さくらの開花から満開までの期間は、西日本の平年が8~10日間、東日本での太平洋側の平年が6~9日間に対し、北海道の平年が2~5日間です。

【追記(3月29日14時5分)】

 3月29日14時に東京でさくらが開花しました。平年より4日遅い開花です。また、鹿児島などでもさくらが開花しており、3月29日は開花ラッシュとなっています。

 今後、気温が高目に経過する予想ですので、これより少し短い日数で満開となり、さくらの下で新年度というところも多そうです。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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