【令和初の終戦記念日】戦争と集団心理から学ぶ「黒い羊効果」組織の脅威
こんにちは。アクシス株式会社 代表・転職エージェントの末永です。
中途の人材採用支援をしつつ、月20万人以上の読者を持つ転職エージェントが語る「すべらない転職」という転職メディアを運営している中で、Yahooニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。
本日8月15日、令和初の終戦記念日を迎えました。74年前の今日、昭和天皇の玉音放送を聞き、多くの日本人が「悔しい」と涙を流したと言われていますね。自分や家族の命を奪う恐れのある場面であれど、「悔しい」という感情に至るという点に、戦争の脅威を感じます。
今回は、このような感情を引き起こした「集団心理」に着目し、集団心理によって起こるキャリア上の脅威と、それを防ぐ方法について、お話ししていきたいと思います。
戦争と集団心理
さて、まずは第二次世界大戦はじめ、様々な戦争はなぜ起こるのでしょうか?私は決して戦争の専門家ではありませんが、経済上の対立・人種差別・領土争い…様々な要因があるのだと思いますが、人が誰しも持つ「集団心理」が戦争を大きくしてきた側面もあるのかなと感じています。
戦争は、人を殺戮するという非常に残虐な行為が伴います。その行為を、あなたは日常場面でできるでしょうか?少なくとも私には想像もつきません。しかし、これを可能にするのが集団心理、その中でも内集団バイアスというものです。「内集団バイアス」というものが、自分が属すのではない集団に対する卑劣なまでの敵対心を生むのです。
気づきにくい「黒い羊効果」
他にも、集団心理の中には「黒い羊効果」というものがあります。黒い羊効果とは「仲間集団の一員でありながら集団に馴染めない者を、仲間とは認めず逸脱者として卑下し排除する傾向」を言います。学校現場でのいじめや戦時中・戦後の人種差別などは、「黒い羊効果」に関連していると言われています。
仲間集団に馴染めない個人を「黒い羊」、それ以外の仲間集団に馴染んでいる個人を「白い羊」と置いたとき、あなたは自分自身が「黒い羊」または「白い羊」になってしまっている場面に遭遇したことはないでしょうか?
「黒い羊」になっているときは孤独なので気づきやすいのですが、「白い羊」であるとき、例えば自分自身がいじめの加担者・傍観者になっている時には、気づきにくいのではないかと思います。
転職者は「黒い羊」になりやすい?
今回、日頃転職エージェントとして転職者の方と関わる機会の多い私がこの記事を執筆しているのは、「転職者」という存在が「黒い羊」になりやすい側面を含んでいるからです。
実際様々な転職者の方と触れる中で、たまに転職者の方から転職後にパワハラやセクハラに苦しんでいるという話を聞くことがあります。
これは私たち転職エージェントが事前に注意し防ぐことが重要であるのですが、客観的に見たときに、「黒い羊効果」という集団心理がはたらいていることも考えると、起こりうるものだなあと思ったりもします。
というのも、転職者というのは、仲間集団にいきなり入ってきた「黒い羊」であり、既存の「白い羊」の人からしたら現在の安全性が脅かされる脅威であるからです。
「白い羊」の安全の欲求を満たす
それでは、自身が「黒い羊」になってしまった場合、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
私は、「白い羊」の安全の欲求を満たすことが重要ではないかと思っています。
「白い羊」の安全の欲求を満たすことが重要な理由として、自身の所属している仲間集団に、何も知らない新しい個人がいきなり入ってくるのですから、その「黒い羊」に、自分自身の立場が脅かされるのではないか、といった脅威を覚える場合があるためです。
しかもそれは、転職者の能力に関係ありません。転職者の能力が高い場合は自身の立場が脅かされるのではないかと、また転職者の能力が低いと感じた際には自分たちが築き上げてきた自社のブランドが脅かされるのではないかと脅威に感じるのです。
黒い羊の出現により、白い羊たちは自分たちの立場やプライドが傷つくことを恐れています。そんな彼らに正面から受け入れてもらおうとあれこれ練るよりも、「彼らは傷つきやすい人たちである」「自分は彼らを脅かす存在ではない」ことを理解した上で、彼らがどうしたら安心していられるかを考えて対処した方がいいのではないでしょうか。
会社側は何をすればいいのか?
会社において「黒い羊効果」が生まれている、と感じたときにキーとなる役割は私は人事であると考えています。
というのも、現場での当事者としての直接的な利害がなく、採用を目標として追う立場でもあるため、客観的な視点に立てるからです。
どうしても、日々の業務に追われている現場社員は自分の仕事に精一杯で「白い羊」になりやすくなってしまうのではないかと思います。
外部から新規登用されてきた転職者と現場社員の両方に対してフラットな視点を持つ人事の方が、転職者のフォローだけではなく現場社員と面談など、「白い羊」の安全欲求を満たす施策を行うことが重要であると考えています。
現場マネージャーや、現場社員に対して、どういった採用背景やミッション、期待値で採用・配属されたのか、また現場マネージャーや社員に対してどのような受け入れ体制や対応を期待しているかなどを丁寧に説明・フォローする事が大切だと思います。
何か物理的な解決策や仕組みを提示するというよりも、現場社員の個々人の心に向き合うといったイメージです。
最近は日本の採用シーンでもオンボーディングという言葉も増えてきましたが、採用は内定承諾や入社がゴールではありません。
採用・入社後の受け入れ、定着と活躍までを人事と現場が一体となってフォローしていく事が、採用者の入社後活躍はもちろん、組織としての健全性も保っていく事につながるのではないでしょうか。