ウクライナの戦争では「空中で起爆し拡散する多数の火の玉となって落ちて来る」兵器が確認されていますが、これは白リン弾ではありません。
「ロシア軍がウクライナで白リン弾を使用」は誤報、実際には9M22Sクラスターテルミット焼夷ロケット弾(2022年3月25日)
ウクライナの戦場で使われている焼夷兵器は9M22Sクラスター焼夷ロケット弾の9N510焼夷子弾です。白リンではなくマグネシウム-テルミット系の焼夷弾です。
ところが、4月11日に英国防省が間違った説明を行いました。
そして、英国防省のこの記述を日本防衛省は転載しました。
しかし、間違いです。白リン弾ではありません。
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2018年、シリアのダマスカスにある東グータの包囲された都市ドゥーマで使用されたロシア製の焼夷弾について。 2018年2月23日に東グータで撮影された、9M22S焼夷ロケット弾の焼夷子弾9N510(露語:9Н510)の六角柱の残骸の写真が掲載。
9M22Sロケット弾の9N510焼夷子弾が白リン弾ではないことは確定事項です。少なくとも、内容物の焼夷剤に白リンは全く使われておりません。そして空中で起爆し拡散する多数の火の玉となって落ちて来るタイプの白リン弾は、ロシア軍は保有していません。
どうも「空中で起爆し拡散する多数の火の玉となって落ちて来る」兵器を何でもかんでも白リン弾と決め付ける事例が多いようですが、一般人ならともかく、英国防省と日本防衛省が間違えてしまうのは如何なものでしょうか。
過去にアメリカの使用したM825A1白リン弾は発煙弾(煙幕弾)として設計されていましたが、現在ロシアの使用している9M22Sロケット弾の9N510焼夷子弾はマグネシウム-テルミット系の焼夷弾で攻撃用に設計された殺傷力の高い兵器です。
9M22Sの9N510焼夷子弾は発煙弾よりも問題が大きい正真正銘の殺傷用の焼夷弾です。一体なぜ単純に焼夷弾と呼ばず、白リン弾(成分上、明らかに間違い)と呼びたがるのでしょうか・・・ウクライナで今使われているものは「焼夷弾」と呼ぶべきです。白リン弾ではないものを白リン弾と呼ぶべきではありません。