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ダークホースは北海か。三振と四死球から占う選抜展望。

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年
2019年、夏の決勝の様子。1日も早く満員の甲子園が見たい。(写真:アフロ)

 待ちに待ち焦がれた選抜の開幕が近づいてきた。今年は近畿勢の前評判が高い。左右のドラフト上位候補の好投手を擁し投打にレベルの高い大阪桐蔭、中学時代にヤング日本一に輝いたバッテリーを中心とする市立和歌山、その両校を破り近畿王者となった智辯学園など戦力充実。上位進出はもちろん頂点を狙える位置につけている。そのために必須となるのが頼もしいエースの存在。夏に開催される選手権大会と比べて選抜は投手有利と言われている。オフシーズン明けで打者が生きた球に慣れて時期であり、消耗度も少ないからだ。

奪三振能力、制球力に優れた5投手

 今大会最大の注目投手は市立和歌山の小園健太、昨秋の活躍ぶりは圧巻だった。県下のライバル智辯和歌山を3度破り、リリーフ登板となった近畿大会準決勝の智辯学園戦では4回を1安打無失点6奪三振。150km/h超えの瞬間最大風速のみならず常時質の高い球を低めに集め、ストレートと同じ軌道から鋭く落ちるツーシームにバットを止めることは難しい。奪三振能力に加え制球力も抜群で、1つ四球を与える間にいくつ三振を奪ったかを示すK/BBは6.15(新チームでの公式戦の成績のみ。確認出来たデータが四球ではなく四死球のため実際の数値より低いものになっている。他の投手も同様)。目安としては3.5以上が優秀、この数値が高い投手は完成度の高い投手とされているが文句なしだ。しかも投球回が他校の主戦投手よりも約20イニング多い。ハマった時は手がつけられないタイプではなく再現性が高いため、いかなる時も難攻不落。選抜が終わっても夏も秋も高校野球界の中心となることは間違いない。

 小園と並んで注目されている中京大中京の本格派右腕、畔柳亨丞も最速は150km/h超えでK/BBは6とハイレベル。しかも昨秋は腰の故障で本調子でなかったというから驚きだ。高橋宏斗(中日)、中山礼都(巨人)らを擁した旧チームは公式戦28戦無敗を誇り、畔柳がエースとなった新チームも愛知大会で1敗は喫したものの東海大会を勝ち上がった。

 大会ナンバーワン左腕は北海の木村大成だろう。1年春から公式戦のマウンドに上がり昨秋は8試合52回2/3を投げて防御率0.34。安打は2イニングに1本しか許さず、与える四死球は5イニングに1つ、ホームを踏ませるのは17イニングに1度だけ。K/BBも7.2と極めて優秀。全国デビューが待ち遠しい。

 近畿勢にはポテンシャルの高い投手が小園以外にもいる。193センチの長身から角度のある球を投げ下ろす天理・達孝太のK/BBは7.44。将来的にメジャー志向を持つスケールの大きな右腕で最速は146km/h、聖地で大台到達なるか。そしてK/BBの最高値を叩き出したのが神戸国際大付属の二刀流エース、阪上翔也で8.14。打者としても能力が高く3番を打つ。投打の活躍に注目だ。

近畿勢vs明豊、北海が実現すれば好カード

 このK/BBを逆にして1つ三振を喫する間にいくつ四球を選べるか、BB/Kを比べるとしぶといチームが見えてくる。BB/Kで2以上を記録したのは9校あった。

大阪桐蔭 2.00

健大高崎 2.04

東海大菅生 2.04

聖カタリナ 2.04

広島新庄 2.26

専大松戸 2.34

京都国際 2.94

明豊 3.18

北海 3.25

 京都国際は春夏通じて初出場。下級生中心で全国レベルで見れば飛び抜けた選手はまだいないものの近畿大会準決勝では5回まで大阪桐蔭を3-0とリードしていた。やはり今年の近畿勢はどこも力がある。

 明豊は2番を打つキャプテンの幸修也が8試合で15個の四死球を獲得し4盗塁。三振も2つと少なく打線の潤滑油として機能した。九州大会では劣勢の展開を終盤にひっくり返しており勝負強さは健在。8試合で1失策の堅守も光る。

 北海も1試合当たりの失策数は明豊の0.1個に次ぐ0.4個で2位。チーム防御率0.53は出場校中トップで自滅することは考えられない。打線も20三振に対し四死球は65個、木村以外にも旧チームから多くの選手が残ることも好材料。十分頂点を狙えるだけの力を持った影の優勝だ。

 観客に人数制限がかかるなどまだ予断を許さぬ状況が続くが球児に訪れたようやくの球春、何よりも無事に開催されることが心底望まれる。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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