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もらえる年金が増える可能性も 厚生年金の対象者が10月から拡大、気になる条件とは?

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:アフロ)

国民年金と厚生年金の違い

老後資金が足りないのでは?と心配な人は、そもそも自分がどんな年金をどれくらいもらえるか確認したことはありますか?

会社員だった人は厚生年金、主婦や個人事業主などだった人は国民年金です。ただし、主婦や個人事業主も、若い頃に会社勤めをしていたなど1か月以上厚生年金の加入期間があれば、その時の給与と加入期間に応じた厚生年金を国民年金に上乗せしてもらうことができます。

日本の公的年金は、土台となる国民年金(基礎年金)があり、会社員はそれに上乗せして厚生年金ももらえる仕組みです。

国民年金は保険料も年金も定額

国民年金(基礎年金)は加入期間により定額で、どんなに多くても年間77万7800円(平成4年度)、月当たりは約6万5000円です。加入期間が40年(480月)に満たないと、これより少なくなります。シングルなら男女とも満額で月6万5000円。どちらも国民年金の夫婦なら満額で合計月13万円。過去に厚生年金に加入していた人は、「ねんきん定期便」で加入記録がちゃんと記載されているか確認を。また、上乗せできる制度(iDeCoなど)で老後の年金を増やすことを検討したいですね。

厚生年金は給与が多い人ほど保険料も年金も高い

一方、厚生年金は給与に応じて保険料を納める仕組みで、給与が多い人は保険料も高い代わりに老後にもらえる年金額も高くなります。これを、国民年金(基礎年金)に上乗せしてもらえるので国民年金よりもだいぶ多くなります。ちなみに男性が受け取る厚生年金の平均額は月約17万円(基礎年金部分も含む)、女性の平均額は月約11万円(基礎年金部分も含む)。夫婦ともに会社員で厚生年金なら、合計で月28万円。国民年金の夫婦の約2倍です。

※年金額はいずれも「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)により。

あくまで、満額の国民年金と、平均額の厚生年金を使った比較なので、実際の年金額は違います。しかし、厚生年金に加入できるなら、将来の年金額を増やせることがわかります。

2022年10月から短時間労働者も厚生年金に入りやすくなる

厚生年金は、2022年10月から短時間労働者に対する適用が拡大されるため、より多くの方が加入できるようになります。勤務先の規模などにより、これまで入れなかった人が入れるようになるのです。加入要件は以下の通りです。

2022年10月からの対象者

・従業員数101人以上の勤め先(「501人以上」から変更)

・2カ月を超える雇用の見込みがある(「1年以上の見込みがある」から変更)

・週の労働時間が20時間以上

・月額の給与が8万8000円以上

・学生ではないこと

厚生年金の保険料は勤務先と半分ずつ払います。給与から厚生年金保険料を天引きされることになりますが、その分、老後の年金が増えることに。

例えば年収106万円(月収で8万8000円)の人が、40歳から60歳までの20年間厚生年金に入ったとすると、毎月8100円の厚生年金保険料を支払い、老後の厚生年金が月9000円(年額では10万8300円)増えます。たった9000円?と思うかもしれませんが。生きている限りもらえるのが公的年金の最大のメリット。65歳から90歳までの25年もらうと累計では約271万円になります。もっとたくさんもらいたいなら、働く時間を増やして給与を増やすことも検討を。

ちなみに会社員の厚生年金は健康保険とセットになっているので健康保険にも加入します。健康保険に加入すると、病気やケガで仕事ができず給与をもらえないときは最長1年半まで給与の3分の2の傷病手当金をもらうことができます。イザというときの備えも増えるわけですね。

前回の「老後の年金は増やせる!4つの方法とは?」もぜひ参考にしてください。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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