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やらないと損をする?!年末調整のキホンとチェックポイント

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:イメージマート)

会社員にとって11月から12月にかけての恒例行事ともいえる年末調整。記入内容で税額がほぼ決まり、人によっては払い過ぎた所得税が戻ってきます。年末調整の基本と注意点を紹介します。

今年の状況を申告する

昨年から家族構成などに変化はありましたか? 

今年、次のような状況の人は、年末調整の書類に記入して申告することで、今年の給与からすでに天引きで納めた所得税の一部が還付される可能性があります。また来年の給与から天引きされる住民税も安くなる可能性があります。

扶養親族がいる

配偶者の収入が一定額以下

生命保険に加入している

地震保険に加入している

家族の社会保険料を払った

iDeCoに加入している

住宅ローンを支払っている

など

上記に該当しない人も、年末調整の書類は最低1枚は提出が必要です。年末調整の書類は4枚あり、自分が該当する書類に記入して提出しますが、同じ収入なら記入事項が多い人ほど通常は税金が安くなります。

書類の種類と記載する内容

書類の種類と記入する内容を解説しましょう。

「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

全員が提出します。自分の基礎控除を申告する書類です。基礎控除とは税金計算の際に一律48万円※の基礎控除額を所得から引いてくれるものです。言い換えれば、所得が48万円以下なら税金はかからないということです。

既婚の人は配偶者の収入と所得の状況も記載します。配偶者の所得が133万円以下なら控除を受けられ、その分、税金が安くなります。控除額は本人と配偶者の所得により異なります。ちなみに配偶者控除を受けられるのは自分の合計所得が1000万円以下の人です。

※合計所得が2400万円以下の場合

「給与所得者の扶養控除等申告書」

扶養親族がいる人は提出します。扶養親族として控除を受けられるのは16歳以上で生計を一つにしている子どもや親など。このうち19歳から23歳までの子どもがいると、この時期は教育費が高くなるという配慮なのか控除額が高くなります。一般の扶養控除は38万円ですが、19歳から23歳は特別扶養親族として63万円を控除できます。扶養親族が70歳以上なら、同居58万円、別居48万円の控除を受けられます。なお別居していても、仕送りをしているなど生計を一つにしていれば扶養親族にできます。

「給与所得者の保険料控除申告書」

生命保険や地震保険に加入している人は提出します(一般の生命保険や介護医療保険、個人年金保険など保険料控除の対象となる保険であることが条件)。民間保険のみならず、家族の社会保険料を払った場合も記載します(給与天引きの社会保険料は対象外)。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している人も記載します。いずれの保険も保険料を支払った証明書を添付します。

「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」

住宅ローン控除を受けていて、控除が2年目以降の人が提出します(住宅ローン控除の初年は確定申告)。該当者には税務署から記入用の書類が届きます。

当てはまる控除にはすべて記入を

企業は、社員に支払った給与をもとに税金を計算して源泉徴収していますが、家族構成の変化や加入する保険などのプライベートなことの詳細まではわかりません。そこで、年末調整の際に社員それぞれが自分に当てはまる項目を記入して申請するのです。つまり当てはまる控除はすべて記入するのが年末調整による合法的な節税のポイントです。

iDeCoの掛け金や大学生のアルバイト収入に注意

記入漏れしやすいものを確認しましょう。

家族の社会保険料とiDeCoの掛け金です。今年払ったなら忘れずに記入を。iDeCoの掛け金は小規模企業共済等掛金控除の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」に払った掛金額を記入します。

間違いやすいのは、扶養控除です。子どもがアルバイトなどで年間所得48万円以上稼いでいたら扶養控除の対象から外れてしまい、記入はできません。年間所得48万円とは、給与所得者なら年収103万円(103万円から給与所得控除55万円を引いた金額)まで。業務委託なら収入から経費を差し引いた額で48万円です。最近は学生のアルバイトでも給与ではなく業務委託が増えているので注意を。高校生や大学生になるとアルバイトをするケースが多くなりますが、子どもの所得が48万円を超えると、親の側は扶養控除を使えなくなります。特に大学生の19歳から23歳は特定扶養者として63万円を控除できることで親の税金を減らせる効果は大きいので、子どもとしっかり意識の擦り合わせを。

子どもがいるシングルはひとり親控除

2020年から「ひとり親控除」が新設されたので、子どものいるシングルは忘れずに記入を。所得が500万円以下で生計を一つにする子どもがいて、子どもの所得が48万円以下なら対象です。控除額は35万円。

ひとり親には該当しないものの、夫と離婚後に再婚や事実婚をしていない人で所得が500万円以下、扶養親族がいるなら寡婦控除27万円を受けられます。忘れずに記載を。

2023年からの変更事項は、海外に留学中の子どもを扶養親族とする場合は、留学ビザや仕送り関係の書類の添付が必要となったことです。

また住宅ローン控除は、2022年の入居から控除率や上限が改正されました。住宅ローンを借り入れている金融機関から受け取った「年末残高証明書」の内容をもとに記載します。

控除額は数十万円単位のものが多く、これを所得から差し引けるかどうかで税額はかなり違ってきます。また、国や自治体からの給付金は、所得額や住民税額をもとに給付対象かどうかを決めるタイプがほとんどです。当てはまる控除があるなら必ず申告して所得および税金を減らしておくのは家計管理の基本です。

もし、記載漏れした控除があるなら、勤務先に年末調整のやり直しをお願いするか、年が明けてから自分で確定申告を行いましょう。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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