ドラマ「アンナチュラル」がスタート!法医解剖医のパートナーである「臨床検査技師」とは?
1月12日にスタートした
「死と向き合うことによって、現実の世界を変えていく。」をテーマに、
”法医解剖医”(石原さとみ)が不自然な死の死因を解明していく法医学ミステリーだ。
解剖
解剖とは、法医解剖と病理解剖に分けられる。
法医解剖はさらに「司法解剖」と「行政解剖」に分かれ、
監察医が死体解剖保存法第8条に基づいて行う解剖が「行政解剖」である。
■司法解剖
刑事訴訟法に基づいて行われる。
つまり犯罪の可能性があるものに行われるものだ。
■行政解剖
伝染病や中毒、災害によって死亡した疑いのある死体、
その他死因の明らかでない死体のうち、
検案しても死因が不明なものについて行われる解剖であり、
公衆衛生の向上を目的としてる。
これらの解剖は遺族の承諾がなくてもできるため、
身元不明遺体や遺族の所在不明死体でも可能だが、
遺族がいる場合は必ず了解を得て行う。
■病理解剖
「公衆衛生の向上を図ることと、医学の教育または研究に資することを目的」として行われる。
死体解剖保存法第7条に基づく。
医師の診療下で死亡し、特に異状がないと判断された病死・自然死の遺体について、「病気の病態究明や治療効果の判定」などの研究・研修目的なので、
遺族からの承諾が必要である。
医師法第21条に基づき
もし、異状が見つかれば剖検は中止して所轄警察署に届けて指示を受ける必要がある。
「解剖」といっても、法律により細かく定められているのだ。
解剖での臨床検査技師の役割
では、ドラマに出てくる”法医解剖医”のパートナーである”臨床検査技師”は何をする役割だろうか?
その存在を知る人は少ないだろう。
解剖時、臨床検査技師は
監察医と向かい同士に、かつ遺体の左側に立ち、各臓器を丁寧かつ迅速に取り出し、解剖を進める。
最終的な死因の判断は監察医が行うが、
それを導く適切なサポートが重要であり、解剖学・病理学・法医学とあらゆる専門知識が必要となる。
臨床検査技師は、解剖の介助として
医師(監察医や病理医)がおこなう開腹および開胸、
胸腹水の吸引・計量、臓器の摘出、
解剖後の皮膚の縫合、
摘出後の臓器の処理(ホルマリンの注入)などをおこなう。
臓器の摘出方法は
執刀医(解剖をおこなうメインの医師)によって手技が異なるため、
介助する者は執刀医に合わせた柔軟な対応が必要となるのだ。
そして、介助する臨床検査技師は、
臓器や執刀医を傷つけないようにメスはなるべく使用せず、
ハサミか手で操作をおこなう。
解剖は、専門知識と技術が必要であり、また“経験”も重要となる。
医師(監察医や病理医)を適切にサポートするためには、
いかに素早く、正確に介助ができるかが、肝となるのだ。
解剖後の技師の仕事は?
病理学検査
摘出した臓器は、顕微鏡で観察できるように標本(プレパラート)を作製する。
これは“病理学検査”と呼ばれ、組織や細胞に色を入れる(染色)。
染色には様々な種類があり、目的の物質を持つ細胞だけを染色した結果より、陽性・陰性を判定することができる。
たとえば、法医学の場合、突然死が多いことから心臓の疾患を疑うケースが多い。
心筋梗塞の場合などは心筋が線維化するため、線維化した部分と正常の心筋部分が異なる色で染色されるような方法があり、
その色の違いから
“心筋が線維化した領域がある!”つまり“心筋梗塞の疑いあり”となる。
がん細胞のような悪性の細胞を目的にする染色や、
特定の感染症に感染した細胞を染色することもでき、染色の種類は数えきれない。
その中から目的に応じた染色をし、死因の原因や病気の原因を解明していくのだ。
化学検査
それ以外にも、法医学では河川や海での溺死や薬物が死因の場合に、血液や尿、臓器から様々な検査をおこなう。
例えば、河川での溺死など肺に対して“化学検査”をおこない、プランクトンが検出されれば“生きているうちに溺れた”、
何も検出されない場合は“死亡してから川に投げ込まれた”などの
死因決定の判断材料となる。
臨床検査技師は、あらゆる検査の知識と技術を導入し、様々なヒント(検体)からデータや情報を導き出す。
そのデータや情報が、医師による死因解明の手助けとなるのだ!
臨床検査技師とは何者?
臨床検査技師等に関する法律の総則には
「医療及び公衆衛生の向上に寄与することを目的とする」と目的が明記され、
臨床検査技師とは
「医師または歯科医師の指示の下に、微生物学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理学的検査、寄生虫学的検査、生化学的検査及び生理学的検査をおこなう業とする者」とされている。
わかりやすく表現すると、
「医療現場で放射線を取り扱う検査以外の検査全般を仕事としている者」になろう。
放射線を取り扱うX線やCTは“診療放射線技師”が業としている。
実は、MRIは放射線でなく磁気を利用した検査のため、
MRIも臨床検査技師がおこなうことができるのだ。
つまり、臨床検査技師は様々な種類の検査をおこなうための知識と技術を習得している!
臨床検査技師が業としている検査内容を一部を紹介しよう。
■一般検査
尿中のタンパクや糖などの値に異常がないかを調べる。
他には寄生虫検査、便検査、髄液検査などがある。
寄生虫検査に関して技師は、それぞれの寄生虫の特徴、卵の形状や患者の臨床状態などの知識まで頭に入れている!
■生化学検査
血液中の糖、タンパク、酵素などを測定することにより、臓器の働きが正常かどうかを調べる。
検査の目的となる物質(糖やタンパク、酵素など)によって、測定原理や方法、用いる試薬が異なるため、全ての検査方法を身につけている。
■血液検査
血液中の赤血球、白血球、血小板などの値を測定したり、骨髄中の異常細胞を調べたりする。
例えば、“貧血”はいくつかの種類に分類される。
貧血を引き起こす原因の違いにより、赤血球の形が変形する場合もある。
この場合も、どのような原因の貧血で、赤血球がどのような形をしているかなども、すべて把握している!
■微生物検査
尿、便、喀痰、血液などを用いて、その中の微生物の種類やどの薬剤が効くのかなどを調べる。
人体に影響を及ぼす微生物(菌やウイルス)に関しての特徴や検査方法、患者の臨床症状について把握しており、
極めし技師は「微生物を培養したときに発生する臭い」だけで、
どの微生物なのかを言い当てられる!!
■輸血検査
血液型の判定や、輸血する血液が患者に適合するかを調べる。
救急などで運び込まれた患者に大量の輸血をおこなう際は
迅速性と正確性を要求され、技師は精神的にかなりピリピリする・・・。
■病理検査
採取された組織や細胞を用いて標本(プレパラート)を作製する。
組織標本の診断は病理医がおこなうが、細胞の標本では細胞検査士の資格をもつ臨床検査技師が観察し「良性」の場合は、その時点で結果を返却することができる。
悪性疑いや悪性、その他(感染症にともなうもの)など異型細胞と判定したものは、次に病理医が観察し、診断する。
病理解剖の介助も業としている。技師のかなでも技術と経験が重要となる。
“きつい、汚い、くさい”の3K業務と言われてきた。
近年では作業環境について厳しく定められているため改善はされてきた。
■生理機能検査
心電図、呼吸機能検査、脳波検査、超音波(エコー)検査、筋電図検査をおこなう。
生理機能検査は患者に直接接するため、
検査業務の中でも“花形”であり、臨床検査技師の中でも社交性が高い者が多い。
臨床検査技師は、
上記の検査すべてに関する知識と技術を持つ
“臨床検査”のスペシャリストである。
近年では、
遺伝子検査やゲノム検査の需要が高まり
臨床検査技師は、目には見えないものからまでも、データと情報を入手し、医師たちの診断をサポートするのに努めている。
飽くなき検査魂が、多くの人たちを支え、助け、救っていることを知ってほしい!