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麻疹Part3:麻疹のワクチン接種とは?

柳田絵美衣臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士
(写真:アフロ)

(Part1:麻疹について)(Part2:検査方法)

有効な抗ウイルス薬はなく、ワクチンによる予防が唯一の対処法である。

●麻疹ワクチン●

麻疹のワクチンは、弱毒生ワクチンであり、皮下投与である。

ワクチンが投与されると、免疫系はこれを異物として認識し、抗体を産生する。疾病に罹患した時に起こるものと同じ現状である。一般的に生涯にわたる免疫を与える

2006年より麻疹・風疹混合(MR)ワクチン2回定期接種が開始された。

1歳以上で2回受けることが重要である。接種記録が残されていない場合は、接種していないと考えることが重要である。麻疹ワクチンを任意接種として2回続けて接種する場合は、最低でも1か月あけて接種する必要がある。

生後6か月以上であれば、任意接種として接種は可能であるが、0歳での接種は免疫獲得が不十分なため、接種回数には含めない。周りに麻疹患者の発生がみられ、接触後72時間以内の緊急ワクチン接種が必要となった場合、0歳で麻疹流行国に渡航しなければならない場合など、緊急避難的な接種に留める。

●副反応●

〇重大な副反応:ショック、アナフィラキシー(0.1%未満)、血小板減少性紫斑病(100万人接種あたり1人程度:接種後数日~3週間頃)などがワクチンの添付文章に記載されている。

〇その他の副反応:過敏症(発疹、蕁麻疹、紅斑、掻痒、発熱など)が接種直後から翌日にみられることがある。麻疹に対する免疫がない者に接種した場合、接種から5~14日後に1~3日間だるさ、不機嫌、発熱、発疹などが現れる場合がある。特に、7~12日を中心として15~30%程度に37.5度以上、10%以下に38.5度以上の発熱がみられる。10~20%に軽度の麻疹様発疹を認めることがある。いずれも通常1~3日で消失する。

●接種不適当者および接種要注意者●

〇接種不適当者

1.明らかに発熱を呈している者

2.重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者

3.ワクチンの成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者

4.明らかに免疫機能に異常がある疾患を有する者および免疫抑制をきたす治療を受けている者

5.妊娠していることが明らかな者

6.上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

〇接種要注意者

1.心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患を有する者

2,予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者および全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者

3.過去にけいれんの既往のある者

4.過去に免疫不全の診断がなされている者および近親者に先天性免疫不全症の者がいる者

5.ワクチンの成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者

引用:予防接種の手びき 2022-23年度版, 近代出版, 2022

●成人麻疹●

過去に麻疹ワクチン接種率が低い時期があり、ワクチンを接種していない人も多数存在し、成人になってから麻疹に罹患する人が増えている。乳幼児期にワクチンを接種していても、その感染予防効果は長年のうちに弱くなっており、成人に達する頃に予防効果が失われていることもある。多くは10~20代の若者が罹患するが、15歳以上の者が麻疹に罹患した場合を成人麻疹とよぶ。通常の小児(15歳未満)の麻疹と区別される。

 参考:Qシリーズ 新微生物学, P101, 日本医事新報社, 2021

●年代による接種状況●

1972年9月30日以前生まれは、定期接種の機会がなく、1回も接種していない可能性が高い年代。小児期に麻疹に罹患した人以外は、合計2回のワクチン接種が推奨されている。その他、定期接種としては1回しか接種していない年代は、これまでに合計2回接種を受けていなければ追加接種が推奨されている。

(著者作図)
(著者作図)

引用:

こどもとおとなのワクチンサイト

■麻疹は空気感染し、90%以上の確率で症状が出る。しかし、麻疹に感染・発症した際、特異的な治療薬は存在しない。現在の予防方法はワクチン接種である。麻疹ワクチン接種は年代により接種回数が異なっているのが現状である。自分の接種歴の確認、検査による抗体価の確認を行い、追加接種をするか考えてみてほしい。

臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士

医学検査の”職人”と呼ばれる病理検査技師となり、細胞の染色技術を極める。優れた病理検査技師に与えられる”サクラ病理技術賞”の最年少、初の女性受賞者となる。バングラデシュやブータンの病院にて日本の病理技術を伝道。2016年春、大腸癌で親友を亡くしたことをきっかけに、がんゲノム医療の道に進み、クリニカルシークエンス技術の先駆者として活躍。臨床検査専門の雑誌にてエッセーを連載中。講演、執筆活動も多数。国内でも有名な臨床検査技師の一人。現在、米国にある世界トップクラスのがん専門医療施設のAI 病理ラボ研究員として奮闘中。

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