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麻疹Part2:麻疹の検査方法とは?

柳田絵美衣臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士
(写真:アフロ)

(麻疹Part1:現在、流行中の麻疹(はしか)とは?)では、麻疹について解説。

●検査診断●

検査診断の流れ
検査診断の流れ

IgM抗体測定とPCR法によるウイルス遺伝子の検出が原則。

〇ウイルスの証明

急性期(カタル期~発疹出現初期)に血液、咽頭ぬぐい液、尿から培養による麻疹ウイルス分離、麻疹ウイルス遺伝子の検出(RT-PCR法またはリアルタイムPCR法)を行う。

〇血清学的診断

麻疹ウイルスIgM抗体陽性または、急性期・回復期のペア血清で、麻疹ウイルスIgG抗体価が4倍以上上昇することを証明する。ウイルスに感染すると血清中の抗体価が上昇する。急性期と回復期の2点(ペア血清)で抗体検査をし、抗体価が4倍以上上昇した場合、ウイルスがあったと判定される。抗体の免疫グロブリンがIgMタイプであれば初期感染と推定される。

抗体価の検査は健康保険適用だが、発疹出現4~28日間に検査を行う(早すぎると陰性を示すことがある)。発症後4か月以上経過しても弱陽性となることがあること、麻疹含有ワクチン接種後8~56日間は陽性になることがあるため、ウイルス遺伝子の検出が重要となる。

ウイルス感染時のIgMとIgG抗体価の動向    (著者作図)
ウイルス感染時のIgMとIgG抗体価の動向    (著者作図)

PCR、抗体に関する参考:抗体検査(検査キット)とは?■「PCR検査」とは?

新型コロナウイルス検査 「PCR検査」と「抗体検査キット」の違いは?(柳田絵美衣) - 個人 - Yahoo!ニュース

●抗体測定法

1.階段血清希釈法

血清を2倍階段希釈後、ウイルスまたは抗原を添加し、所定の時間反応させた後に測定。抗体価は通常「倍」で表示される。

 〇粒子凝集法 particle agglutination test (PA法)

ウイルス抗原を結合させたラテックスビーズと血清抗体の反応によるビーズの凝集を利用した抗体測定法。簡便法として多数検体のスクリーニングに適しているが、感度と特異度はあまり高くない。

方法:ゼラチンを粒型化した人工担体に麻疹の成分を吸着させたものを用いる。この粒子が検体中の麻疹に対する抗体と反応して凝集することを利用した粒子凝集反応。

凝集反応検査をする場合の階段希釈方法    (著者作図)
凝集反応検査をする場合の階段希釈方法    (著者作図)

凝集反応の判定   (著書作図)
凝集反応の判定   (著書作図)

判定:麻疹の判定では、1:16以上が陽性である。発症予防には1:128以上のPA抗体価が求められている。医療従事者では<1:16の陰性者にはあと2回、1:16~1:128の場合にはあと1回の追加接種が求められる。

2.一定濃度血清希釈法

複数の標準血清の測定値から検量線を作製し、測定値から抗体価を求める。EIA法などではIgM抗体やIgG抗体など免疫グロブリン分画別の抗体価も測定が可能。

〇標識抗体法

(麻疹検査ではEIA:enzyme immunoassay法が多く用いられる)

抗体を酵素で標識して、微量物質の検出を行う。抗原抗体反応の特異性を利用して、抗原または抗体を試験管内で反応させ、反応した抗体量を標識分子の量として定量する。

※抗原と抗体は特異的に反応を起こす。結合した複合物は免疫複合物と呼ばれる。この反応は生体内でも生体外でも起こる。抗原抗体反応には最適比があり、一定の割合で反応した場合、複合物が最大になる。

抗原と抗体の量による免疫複合物(沈殿物)量のグラフイメージ(著者作図)
抗原と抗体の量による免疫複合物(沈殿物)量のグラフイメージ(著者作図)

・抗体価の有意な変動

IgM抗体価が測定できない場合、あるいはEIA法でIgG抗体価を測定した場合、ペア血清で抗体価の「有意な変動」があれば、当該ウイルスによる感染の急性期と判断される。

※「有意な変動」とは「抗体が陰性値から陽転化する」あるいは「抗体価の有意に上昇する」のいずれかである。

※抗体価の有意な上昇:測定誤差以上の抗体価の上昇であり、2倍階段血清希釈法で測定された抗体価では4倍以上の上昇があれば「有意な上昇」と判定する。

一定濃度血清希釈法で測定される抗体価では通常は2倍以上の測定抗体価上昇が「有意な上昇」と判定される。

〇参考文献

・コンパクト微生物学(改訂第5版), 南江堂, 2021

・Qシリーズ 新微生物学 第2版, 日本医事新報社, 2021

・標準微生物学 第14版, 医学書院, 2021  

・ウイルス検査法 第1版, 春恒社, 2018

・予防接種の手びき 2021-23年度版, 近代出版, 2022

・yeat note 2021, メディックメディア, 2021

臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士

医学検査の”職人”と呼ばれる病理検査技師となり、細胞の染色技術を極める。優れた病理検査技師に与えられる”サクラ病理技術賞”の最年少、初の女性受賞者となる。バングラデシュやブータンの病院にて日本の病理技術を伝道。2016年春、大腸癌で親友を亡くしたことをきっかけに、がんゲノム医療の道に進み、クリニカルシークエンス技術の先駆者として活躍。臨床検査専門の雑誌にてエッセーを連載中。講演、執筆活動も多数。国内でも有名な臨床検査技師の一人。現在、米国にある世界トップクラスのがん専門医療施設のAI 病理ラボ研究員として奮闘中。

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