人見知りで話しかけ下手の若手へのアドバイス 〝トイレを味方にする方法〟で話しかけよう!
このコラムの連載初回に「クライアントとの昼食会で話しかけられずトイレに行ったまま帰ってこない若手社員」の存在に触れました。どの会社にもそういう若手がいるようです。というのも、私自身もそうだったのです。
私のトイレこもり体験
私のトイレこもり体験を語ります。
社会人一年生、新入社員。私の入社先には、企業向けのマーケット資料を「飛び込み営業でPRする」という仕事がありました。他で得られない市場情報が含まれていますが、何万円もする資料なので購入するのはもっぱら大企業でした。
大手を選んで訪問し、会社録で調べておいた部署名を告げる。「貴社の新規事業部にご紹介したい資料があるので取り次いでほしい」。受付嬢は内線電話をかけるのだが、受話器を手でおさえて「ただ今会議中ですが」という。電話はせずに演技なのだ。私はかえってほっとしたり。
そんな日々、ある大商社のトイレにこもりました。自分は何をしているのだろう?こんなことして何になるのか?やめたい…数えきれない疑問でトイレの個室が満たされました。20分ほどこもった後、そのフロアの部署に「逃げるように」立ち話営業をして、立ち去りました。
人見知りの私は、会社員に向いていない、いや社会人にさえ向いていないと思ったものです。
日本人の70%は人見知り
複数の意識調査で「自分は人見知りだ」と考える日本人が70%に達することが判明しています。職場を見渡して半数以上が人見知りなのです。クライアントとのランチや立食パーティで話しかけに臆する〝コミュ障〟の先輩も多いのです。
しかし先輩たちは、相手の会社のニュースや、会う人の担当業務をチェックして、話しかける努力をしています。まずそれを見習いましょう。それでも臆するなら、人見知りをネタにしてみたらどうでしょうか。
「話下手ですみません。ボクは人見知りなので」
相手はきっとこういうでしょう。
「私もですよ」
何しろ70%ですから。できるだけ相手に話させて、あなたは相槌を打つ役に徹すればいいのです。それもできないとすれば、またトイレに舞い戻ることになります。
トイレを味方につけよう
トイレから出れない君にアドバイスがあります。「トイレを味方につける」のです。
トイレでしゃがんで、ネガティブで臆する話し下手の自分を認めるのです。あー私はだめだと。自分へのダメ出しが尽きたら、こうつぶやいてください。
「そんなことは起きていない」
臆する自分をつくるのは自分です。話しかけ下手は自分がつくる虚像です。自分の頭の中だけの現象なのです。次にこう問いかけてください。
「問題解決に集中しよう」
自分を責める集中砲火を止めて、問題に集中する。自分のことを消して、どういう状態になれば解決なのか?に集中するのです。問題とはこの場合、クライアントの事業上の課題です。商品やサービス、顧客対応などです。その解決のためにどうすればいいのか?に集中するのです。切り口はひとつ。
「誰かのためにやろう」
誰かとはまずクライアントです。引いてはクライアントのお客様です。クライアントのお客様はあなたのお客様でもあるのです。何かひとつ考えついたら、トイレから出ましょう。クライアントにこう話しかけてみてください。
「こんなことを考えたのですが」
相手に笑われても否定されてもいいのです。こちらのことを考えてくれているなと思われれば、話しかけは成功です。どんな小さなことでも、クライアントのためになることを考えて話しかけてみてください。
「トイレを味方にする」作戦のポイントは「自分の外に出る」ことです。相手のことを考えるのです。話し下手だとか、会話がもたないとか、すべて自分が頭の中でつくりだしている虚像です。そこから抜け出すのです。
話しかけの主語は常に〝あなた〟
「自分の外に出る」のは私自身の体験からの助言です。
かつてトイレにこもった私は、トイレの中で閃きました。「新規事業動向だけを集めた資料は売れる」。それを企画にして通して、資料を作成し、大企業の受付で「あらゆる企業の新規事業動向を集めた資料を紹介したい」と告げました。すると話しを聞いてくれました。その資料にはその会社の新規事業ものせました。自分で作った資料なので話しやすいのです。資料販売から新しい仕事も得ました。
話しかけの主語は常に「私」ではなく「あなた」です。あいさつも、助言も、元気づけも、常に相手が主語です。自分のことではなく、相手のために何かを話しかければいいのです。
最後に今回の「話しかけドリル」です。トイレに入った時に「誰かのために何ができるだろう?」と考えてみてください。クライアントでも後輩でも恋人でもけっこう。考えたことを話しかけてみてください。必ず人見知りから脱却の一歩になります。