AIにネタ負けしない唯一の方法 「あなたにしか語れないネタ」で話しかけよう!
今回は多数の人への話しかけがテーマです。
話しかけ上手になるには「ネタづくり」が大切です。ニュースやコラムで新製品や映画、人気のお店や旬の味、体力づくりや健康法、何でもネタになります。物知りは話しかけ上手への道。ところが今やAI時代です。AIはヒトよりネタ仕入れもまとめるのも上手、しかも超速です。巷のネタを話しかけるなら、スマホ片手にAIアプリと話した方が早いのです。
ではどうしましょうか?AIに語れないことを話すのです。
AIが語れるのは「誰かの話」です。AIが語れないのは「AI自身の話」です。つまり「自己語り」です。あなたが体験したことはあなたにしか話せないのです。そこである男性が〝シンパパ〟になった話を抜粋します。
あるシンパパの子育て奮闘記
男性の妻は男子を出産後、まもなく病で亡くなりました。残された男性は、乳児の世話と仕事に奮闘しました。男性の母らの実家の支援ももらいましたが、働きながらの子育ては日々限界との戦い。仕事と子育てが両立できず、部署を異動しました。耐えきれず退職して別の仕事に就きました。数えきれないほどめげて、弱音を吐き、しかし子育てを続けました。
男性の自宅には生前の母を写した写真がありました。息子が物心ついたある日のことです。その写真を撮影した場所に息子と行こう、と思いました。撮影場所に着くと息子の顔がゆがんできたのです。泣き出してこう叫んだのです。
「ママがいない!」
父は子をただ抱きしめました。
このとき息子はなぜ泣いたのでしょうか。写真の中だけの存在のママをあらためて実感したせいなのでしょうか。存在すべき人がいない寂しさゆえでしょうか。そもそも父はなぜその山に登ったのでしょうか。息子の寂しさを埋め合わせるため?いいえ、父は子と一緒に、愛する人の不在をただ泣きたかったのではないでしょうか。
この記事には多くの読者コメントがつきました。
なぜこの語りが心に響くのか?
コメントを二つほど内容を改変して紹介します。
〝私も妻と死別しました。二人の子を抱えてどうすればいいか悩みましたが、悩む暇さえありませんでした。つらくなると自分にこう言いました。「なんとかなるさ」と〟
〝私は父子家庭で末っ子です。母は私をみごもった時、検査でがんが見つかりました。しかし出産を優先して投薬治療を拒絶しました。出産後に闘病生活に入りましたが亡くなりました。私を抱いて写るたった一枚の写真が母とのきずなです〟
男性の体験は、妻に先立たれた他のシンパパや、写真でしか母を知らない他の子の心を揺さぶりました。なぜ多くの人を揺さぶるのでしょうか?それはこの物語が、男性にしか語れない「体験」であると同時に、誰とも「つながり」があるからです。
「つながり」とはシングルペアレントの厳しさ、仕事と子育ての両立、母の愛と子の成長、そして親としてまた仕事人として自己成長など。語る人固有の「体験」だけではなく、多くの人と「つながる要素」が含まれているとき、聴く人は自分のこととして考えだすのです。
あなたにしか語れないネタづくりをしよう
ここで今回の〝話しかけドリル〟です。あなたにしか語れない「話しかけネタ」を持とう。それはあなたの心の中にあるネタです。
これまで一番つらかったこと、一番嬉しかったこと、あるいは悪さをしたことなど、後悔していること、何かひとつ選んでください。今の自分、今の生き方につながる「体験」が最もいいです。それを素直に、自分のことばで、どんなことがあったのか、書きだしてください。これだけでもうAIに勝ちました。
次は「つながり」です。その体験をとりまく「社会トピック」があるはずです。子育て制度が不十分だとか、税制が夫婦向きで独居に不利だとか、片親世帯に冷たい世間とか、いろいろあるでしょう。政治や法律、制度や習慣、家族のあり方や個人の生き方など、喜怒哀楽につながるトピックをあげて、体験に「さらりと」加えるのです。深くなくて構いません。「こういう問題もありました」と投げかけるだけでいいのです。社会トピックは、聴く人に自分のこととして考えてもらうためですから。
話しの構成ができたら「あなただけのネタ」を誰かに話しかけましょう。その内容がユニークで人とつながりがあれば、多くの聴衆の前で話す機会がもたらされるかもしれません。あなただけの体験は誰かとつながっているのですから。
最後に、人がAIに勝てるもうひとつの方法があります。それは「心と心をつなぐ」ことです。つながりを求めて話しかけることは人間にしかできません。