Yahoo!ニュース

〝私のヒーロー〟をがんばらせる応援の極意 最上の応援フレーズとは〝………〟

りり〜郷ことばのデザイナー
ハイタッチ!

プロ野球のある監督が、自チームへの応援に「『気合いをいれろ』と声がかかるが、気合いを入れない試合は一度もない」と語ったといいます。その日は負け試合。監督は負けた時こそ温かい声援がほしいと願ったのです。そこで次の問いかけが浮かびました。

どんな応援が最も人をがんばろう!という気持ちにさせるだろうか?

努力する姿を認め、めげそうな時に励まし、敗北にも温かく声をかけ、つかんだものを共に喜ぶ。そういう応援団になれる話しかけをしよう、というのが今回のテーマです。

プロセスからの応援を心がける

応援する人がアスリートとしましょう。体力づくりのメニューをひたすらこなします。それから競技練習へ入り、技術を高める調整へ。そして本番でライバルと戦い、ある時は勝ち、ある時は負ける。勝てばその感触を忘れず、負ければ弱みを見つめ、より高みを目指してまた練習へ。

ひたすら走る姿に「しっかり!」、課題を克服する姿勢に「さすが!」、立ち向かう集中力に「進化が見える」、良い結果が出れば「やった、おめでとう!」、結果が芳しくなければ「次はがんばれ」と声をかけ、またネットに書くことができます。

心がけてほしいのは、結果だけではなくプロセスからも見ること。たとえばそのアスリートの練習風景を見たり、ニュースや投稿を読んだり、発信するSNSをチェックすれば、「気合い」の素が理解できて、気合いの多少も察することができるでしょう。

友人知人への応援でも同じです。LINEでやりとりしたり会った時に、相手が元気かどうかチェックしますよね。日々の変化を知ることから、適切な応援は生まれてきます。

じっと見守ろう。
じっと見守ろう。

応援は〝伴走者〟からやってくる

応援の基本フレーズはなんといっても「がんばれ!」。「負けるな!」「心を強く!」など〝ファンの応援〟です。

一歩進んで、理解者として「あなたならできる」「あなただからこそできる」と応援する〝支援者の応援〟フレーズがあります。応援する相手が迷っていたら、元気づける者として「迷うことはない」「それがやりたかったんでしょう?」「あなたの使命なんだから」と〝叱咤激励者の応援〟もあります。

ライバルとの戦いの中にも応援あり。目と目でにらみ合い、お互いを認め合う力と技の中に、無言の〝ライバル同士の応援〟があります。

さらに自分に挑み、自分の限界を上げていく「オレには絶対できる」「これをやるために生まれてきた」と自分から湧き出る〝オレって凄い応援〟があります。

応援する人はファン、支援者、叱咤激励者、ライバル、そして自分自身など様々ですが、ひと言でいえば「誰もが伴走者」なのです。一緒に走ってくれる人びとなのです。がんばるプロセスを注視して、気持ちを察し、その都度適切な応援をする〝道連れ〟なのです。

なぜ「気合いを入れろ」と言ってしまうのか?

さて「気合いを入れろ」フレーズですが、なぜそう言ってしまうか?を考えてみました。

それは「ファンは伴走者」だからです。

応援する人も共に敗北を共有して、悔しいのです。選手やチームにだけことばをぶつけているのではく、自分にもぶつけているのです。とはいえ、気合いは入れているのに入れろと言われるのもがっかり。では別のフレーズはないでしょうか。

たとえば「フクツ(不屈)を入れろ」はどうでしょうか。

負けは無駄ではなく、勝つためのジャンプ台。負けがあるから勝ちもあるのです。勝ちはたまたま、負け続きの道の一筋の光なのです。なぜなら勝つのは一人で、負けるのはその他全員ですから。「まっすぐじゃないからおもしろいのだ」とも考えられませんか。そこでもうひと押し。

君ならできる。だって私のヒーローだから

挑み続ければ負けないのです。挑むことは生きることですから。ひたすら勝利に頑固になりたいものです。

あなた

あなたは私のヒーローだから。
あなたは私のヒーローだから。

最上の応援フレーズは〝………〟

しかしここに、どうしようもなく打ちひしがれている人がいたら、どう話しかければいいでしょうか。数年の努力が水泡と帰した時、「気合いが足りない」など否定語はいっそう心を重くさせます。どのような応援フレーズが適切なのでしょうか?

答えは「無言の応援」です。

ことばをかけずに、じっと見守るのです。気持ちを全力で察するのです。ことばがない応援も立派な応援になります。無言の話しかけが、その時もっとも必要な話しかけになるのです。真の伴走者ならそれができます。

やがて打ちひしがれたその人が口を開いたら、受け止めてあげればいいのです。聴いてうなずいて、必要なら肩を寄せればいいのです。

試合終了時から次の試合が始まっている。
試合終了時から次の試合が始まっている。

最後に今週の話しかけドリルです。それは「ネット上でネガティブなフレーズを書きそうになったら『やめる』」です。書いて気づいたら消してください。ネガティブなコメントは励ましにも、次への挑戦にもつながりません。ぜひ心がけましょう。

ことばのデザイナー

人に話しかけると良いことが起きます。あなたも相手もポジティブに明るくなれます。話しかけから人の輪が広がり、支え合いや励まし合いにつながります。読むと誰かに話しかけたくなるこのコラムの書き手は、ライター歴20年、インタビュー歴300件以上、対話力講座の講師や組織改革支援プロジェクトを数百名に数百回の経験があります。かつて内向的で「心の壁の内側」にいた私は、トランスジェンダーとして自分らしく生き直しだしてから、心を開いて人の中に入れるようになりました。〝ヒト•イマ•ツナガル〟の話しかけメソッドで、共に話しかけ上手になりましょう。

りり〜郷の最近の記事