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連覇を狙うトヨタ自動車は沖縄電力と――第95回都市対抗野球大会の組み合わせが決まる

横尾弘一野球ジャーナリスト
昨夏の大会で、黒獅子旗を掲げるトヨタ自動車の北村祥治主将。連覇を達成できるか。

 全国の予選を勝ち抜いた32チームが、社会人王座を目指して激突する第95回都市対抗野球大会の組み合わせ抽選会が6月16日に東京都内で実施された。注目の組み合わせは以下の通りだ。

第95回都市対抗野球大会組み合わせ
第95回都市対抗野球大会組み合わせ

 前年優勝で連覇を狙う豊田市・トヨタ自動車は、開幕戦で浦添市・沖縄電力と対戦する。日本代表でもエースを担う嘉陽宗一郎、四番に座る逢澤崚介を筆頭に戦力は充実しており、さらに今季は2年目の増居翔太、加藤泰靖ら若い投手が経験を積んでいる。堅実さと大胆さを巧みに駆使する藤原航平監督のベンチワークも冴え渡り、九州大会を制して日本選手権の出場権も手にしている。チーム一丸となって目指すのは、1950~52年に全鐘紡が達成した3連覇であり、この大会をもって現役引退を表明している佐竹功年の登板があるかも注目される。

 対戦相手の沖縄電力は、地元開催の九州二次予選で10年ぶりの代表権を勝ち取った。内間敦也、當山昇平らイキのいい投手陣に、主将の田場亮平を中心とした打線もパワフル。組み合わせ抽選会では、しんがりの“残り物”で開幕戦を引き当て、久しぶりの大舞台で王者に立ち向かう。

 打倒・トヨタ自動車の一番手は、東京都・NTT東日本だ。昨夏こそまさかの予選敗退で東京ドームに姿を現さなかったが、近年は全国の舞台で最も安定した成績を残し、今季も4月の静岡大会で優勝。準決勝では、トヨタ自動車に6対1で完勝している。上出拓真が故障から復活したことで投手力はより磐石となり、向山基生が軸になる打線もルーキーの石井 巧が上位、司令塔の野口泰司が四番に定着して破壊力を増した。試合運びも落ち着いており、一回戦で札幌市・北海道ガスを投打に圧倒し、勢いにも乗りたいところだ。ただ、北海道ガスは一昨年の一回戦で東芝を倒しており、2つ目の金星を狙っている。互いに勝ち進めば、トヨタ自動車とは準決勝で顔を合わせる。

金の卵がスターダムにのし上がる瞬間を見逃すな

 昨夏の決勝でトヨタ自動車に敗れて準優勝だったものの、名門復活を印象づけた浜松市・ヤマハは、新たに就任した申原直樹監督の下で着実に進化している。今季は静岡大会、京都大会で準優勝し、東北大会では優勝。都市対抗東海二次予選でも第一代表と、勝ちグセをつけて東京ドームに乗り込む。投手陣では13年目の九谷青孝が先発でしっかりゲームメイクし、攻撃面では31歳の秋利雄佑やプロ経験者の網谷圭将がキーマン。そうしてベテランが攻守を支える中で、若手や中堅がのびのびと力を発揮している。厳しい戦いを勝ち上がり、4回目の優勝を目指す。

 一回戦をカードで見れば、近畿第一代表の大阪市・日本生命と南関東第一代表のさいたま市・日本通運の激突が必見だ。ともに若手がメキメキと頭角を現し、投打にバランスが取れている。都市対抗、日本選手権とも優勝経験のある名門が、最も難しいと言われる一回戦でどんな戦い方を見せてくれるか楽しみだ。また、既定の観客動員を担保することで一回戦の日時を指定できる『特定シード』により、南関東第二代表の君津市・日本製鉄かずさマジックと同第三代表の千葉市・JFE東日本がいきなり顔を合わせる。ほかにも、仙台市・JR東日本東北と広島市・JR西日本の同グループ会社対決、昨年に続く対戦となった太田市・SUBARU、福山市/倉敷市・JFE西日本の戦いぶりからも目が離せない。

 そして、晴れ舞台で目を引くパフォーマンスを発揮し、一気にドラフト候補になっていくスターが生まれるのも大会の魅力。間もなく発表になるU-23日本代表に名を連ねる選手たちの活躍が期待される中、福岡市・KMGホールディングスのエースを担う木下里都に注目してほしい。

九州二次予選3試合で抜群の安定感を発揮した木下里都(KMGホールディングス)には、プロのスカウトも熱い視線を送っている。
九州二次予選3試合で抜群の安定感を発揮した木下里都(KMGホールディングス)には、プロのスカウトも熱い視線を送っている。

 福岡大4年時にも全日本大学野球選手権大会で力投した右腕は、制球力を磨き、スタミナも養って大きく成長。昨年の日本選手権出場に貢献すると、都市対抗九州二次予選ではチームの全3試合に先発し、23回を投げて防御率0.78と抜群の安定感を披露している。一回戦では、石巻市・日本製紙石巻を相手に真っ向勝負の投球を見せてくれるはずだ。ほかにも、近い将来にプロで活躍したり、ミスター社会人の階段を昇っていく選手たちの台頭を東京ドームで目撃していただきたい。

 大会は7月19日の午後6時に、トヨタ自動車と沖縄電力の対戦で幕を開ける。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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