桃源郷とは何か? 松茸や伊勢海老を用いた至福の中国料理が堪能できる“幸福な場所”
桃源郷と武陵桃源
桃源郷という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
中国の陶淵明が記した「桃花源記」に登場する場所で、世俗を離れた仙郷であり、別天地、理想郷、ユートピアと同じ意味です。世間とかけ離れた幸福な場所であるとされています。
「桃花源記」によれば、晋の太元年間に、湖南武陵の人が桃林の奥の洞穴の向こうに出てみると、秦末の戦乱を避けた人々の子孫が住む別天地があり、平和に暮らしていたということです。
この桃源郷は武陵桃源ともいわれており、武陵桃源にちなんで命名された中国の張家界市にある自然保護区の武陵源は、1992年にユネスコの世界遺産に登録されています。
この世のものではない武陵桃源は不思議な響きをもっていますが、この武陵桃源を名に付した魅惑的なコースがあります。
それは、ANAインターコンチネンタルホテル東京の中国料理「花梨」で提供されている「武陵桃源コース」(22,374円、税・サ込)です。
料理長を務める大久保武志氏が贈る渾身のコースで、2021年9月13日に開始されました。
武陵桃源コース
大久保氏は1986年に前身となる東京全日空ホテルの開業年に入社した料理人。2006年5月に「花梨」料理長に就任して以来、国内外のVIPをゲストに迎えて腕をふるってきました。
その大久保氏が考案した「武陵桃源コース」は次の通り。
武陵桃源コース
・鮑・サザエ・帆立貝の冷菜、チャイニーズピクルス添え
・タラバ蟹と雲丹の卵白ミルク炒め 温野菜とともに
・小鳩のクリスピー焼き
・対馬地鶏、スッポン、干し椎茸と絹傘茸の蒸しスープ 燕の巣をそそいで
・星ハタ、松茸、銀杏の蓮の葉包み蒸し
・国産伊勢海老の上湯煮込みイーフー麺
・季節のデザート盛り合わせ
アワビ、タラバガニ、ウニ、ホシハタ、イセエビといった贅沢な魚介類から、ツバメの巣やマツタケ、地鶏やコバトまで用いられており、メニューを眺めているだけでワクワクする内容となっています。
鮑・サザエ・帆立貝の冷菜、チャイニーズピクルス添え
海鮮3種の冷菜盛り合わせです。アワビと香味野菜のソースに、サザエのジュレ和え、ホタテガイとキクラゲの冷菜と最初から豪華。アンズの甘酢漬けとレンコンのピクルスがよい箸休めに。
タラバ蟹と雲丹の卵白ミルク炒め 温野菜とともに
広東式の海鮮料理。ふんわりとした卵白の中には、旨味たっぷりの大きなタラバガニの身。ウニが散らされていて、コクを深めています。ブロッコリー、スナップエンドウ、シイタケ、松の実と野菜もたっぷり。
小鳩のクリスピー焼き
焼き物を得意とする大久保氏による、中国広州産コバトのクリスピー焼き。油をかけた皮はパリパリとして、肉は臭みがなくてジューシーです。添えられた大豆の甘味がコバトとよく合います。
対馬地鶏、スッポン、干し椎茸と絹傘茸の蒸しスープ 燕の巣をそそいで
様々な食材がバランスよく溶け込んだ極上スープ。スッポンの滋味に、干しシイタケの旨味、キヌガサダケの食感が一体となります。ツバメの巣が別添えとなっており、好きな時に加えられるのがモダンなところ。
星ハタ、松茸、銀杏の蓮の葉包み蒸し
旬の高級魚である長崎県のホシハタを用いた一品。蓮の葉の香りが移り、高貴な香りがします。マツタケ、ギンナンと秋の味覚づくしなのも印象的です。
国産伊勢海老の上湯煮込みイーフー麺
イセエビの旨みを引き出したスープ麺です。イーフー麺は卵が使われているので、リッチな口当たりで、深い味わい。上湯のソースが麺によく絡み、癖になります。
季節のデザート盛り合わせ
マンゴー風味の杏仁豆腐とフルーツの盛り合わせで、最後のデザートも豪華。前者は杏仁の香り豊かで、後者はメロン、シャインマスカット、イチゴ、パイナップルと色々なフルーツが味わえます。
「武陵桃源コース」が企画された背景
「武陵桃源コース」はとても贅沢な内容ですが、どのようにして発案されたのでしょうか。
大久保氏が、スペイン出身の総料理長に打診されたのがきっかけでした。40年もの功績と活躍を称えると共に、培ってきた巧みな技とセンスを発揮したコースをつくってみてはどうかと提案があったのです。
大久保氏もゲストに喜んでもらえるのならと承諾し、2021年3月くらいに企画が決まりました。1年間を通じて提供されることになり、季節によって内容を一新。今回の第1弾、2022年1月11日から第2弾、4月から第3弾へと続いていく、大きなプロモーションとなりました。
今回のコースについて大久保氏は次のように話します。
「7品から8品に品数を抑えて、よりクオリティを高めた。クラシックな料理を少しモダンにアレンジしている。前後の流れを意識し、味わいが重ならないよう、食材・風味・食感などに変化をつけてあるので、最後までお楽しみいただけるのでは」
特におすすめは「タラバ蟹と雲丹の卵白ミルク炒め 温野菜とともに」「小鳩のクリスピー焼き」「星ハタ、松茸、銀杏の蓮の葉包み蒸し」。タラバガニと卵白の定番料理にウニを加えたり、コバトのおいしさをじっくり引き出したり、山海の秋の味覚を取り合わせたりと、どれも出色の出来です。
第2弾ではフォアグラやカモ、和牛ロース肉などが登場し、第3弾では春の食材が目白押しだといいます。武陵桃源=幸福な場所の名に相応しいコースを是非とも体験してみてください。