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夏休み中、子どもが長時間ゲーム 取り上げる前に試してほしい親の関わり方

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:イメージマート)

多くの子どもたちが今週から夏休み期間に入っていますが、猛暑でコロナの感染者数も増加している中、今年も家庭で過ごす時間が多くなることが予想されます。

夏休み期間にゲームを長時間プレイすることが続くと、心配になるのがゲームへの依存です。ゲームにのめり込みすぎると、過度の課金やネット上でのいじめ、犯罪などのリスクが高まることが指摘されています。長時間の使用が習慣化してしまうと、ゲームを切り上げることができない、生活リズムが戻せないなどの問題も生じてしまいます。

今回は、夏休み期間をきっかけとしてのゲーム依存の発生などの問題を予防するため、親がどのように関わるとよいかポイントをお伝えします。

子どもを責めるのではなく、やり過ぎる状況を分析する

家の中で子どもがゲームをやり続けている姿を見ると、「いつまでやっているの?」と子どもを責めたり、注意したりしたくなるもの。しかし、子どもを責めたとしてもすぐにゲームを止めることはなく、ほとんどは反発されてしまうでしょう。

子どもを責める前に、まずは「夏休み中どのような状況でゲームをやり過ぎてしまうのか」を分析してみましょう。そうすることで、やり過ぎを防ぐヒントが見えてきます。

例えば、朝起きてすぐにゲームをやり始めて一日中ゲームをし続けてしまうという場合、ゲーム機がすぐ目に止まるところに置いてあることが、その引き金になっている可能性があります。

また、「宿題をしなさい」と言ったら自室にこもってゲームをやり続けてしまうという場合、ゲームをすることで宿題から逃避しているのかもしれません。

取り上げるのではなく、やり過ぎない環境をデザインする

スマホやゲーム機を取り上げてしまえば、問題は簡単に解決するように思えます。しかし、隠れてゲームをするようになる、過度の課金やネット上のトラブルを親に相談しなくなるなど、様々な面で問題が生じる可能性もあります。

そこで、分析をもとにやり過ぎない環境づくりをすることが大切になります。

先ほどの例で考えると、朝起きてすぐにゲームをしたいという気持ちを起こさせないために、ゲーム機は目につかないところにしまっておく、その代わりに好きな朝ご飯を出すなどゲームがなくても心地よく過ごせるように工夫をすることもできます。また、宿題をしなさいと注意すると子どもが反発する場合は、事前に宿題をする時間を子どもと決めておき、その時間はゲーム機やスマホはしまっておくということを共有しておくことでお互いに見通しを持って行動できるかもしれません。

親が一方的に取り上げるのは避けるべきですが、子どもとあらかじめ「〇〇をしたときは一時的にゲームを親が預かる」という約束をしておくことは抑止力になると考えられます。また、そのときに約束を超えてゲームをやりたい気持ちや困っていることがあれば親に相談するように伝えておくことも忘れないでください。

ゲームだけでなく、ゲーム以外の楽しめる活動を取り入れる

オンラインゲームに1日の多くの時間を費やしている場合、ゲーム仲間との繋がりが強く、ゲーム関連が子どもの娯楽の中心となっています。そうなると、「もっとゲームが上手くなって仲間から認められたい」とか、ゲーム実況動画をみて「こんなふうに皆から憧れる人になりたい」と思うなど、ゲーム行動を駆り立てる引き金が常に存在することになります。このような状況で、「ゲーム以外にも別の遊びをしたら」と単に子どもに促しても、ゲーム以上の魅力を感じてそれを始めるようなことは恐らくないでしょう。

ゲーム以外の遊びや活動を促すときには、いくつかコツが必要になります。まず大人が望んでいる活動ではなく、ゲームの代替となるような面白さや魅力を子どもが感じ、楽しめる活動を特定する必要があります。夏休みの宿題や家の手伝い等、いわゆる「やるべきこと」は少し脇に置いて考えてみてください。

最初はあくまで「お試し」で良いので、他の楽しみになるようなことを提案してみましょう。仮に子どもがあまり楽しめていなかったとしても失敗ではありません。「場所が遠過ぎた」「知らない人と話すのが嫌だった」など、どこで嫌な体験をしたのかをきちんと振り返ることで、それを次に活かすことができます。何か新しい活動をしてみて、それが子どもにとって楽しい体験になればラッキー、ぐらいの気持ちでいろいろ試してみましょう。

余裕がないなと思ったら、親もほっと一息つく時間を持つ

夏休みに入ってからは、子どもの良くないところばかり目についてしまう、いつも叱ってばかりというときは、親自身が疲れていたり、頑張り過ぎていたりと余裕がない状況かもしれません。夏休みは子どもとっては自由な時間がたくさん出来て嬉しい一方、親は食事の準備や宿題の管理などに追われ、かつ自分の時間が減るためストレスを感じる場面も多くなります。

そのようなときは、一旦子どもから離れて自分自身が「ほっとできる時間」を作ることも大切です。親が楽しめる趣味や余暇に積極的であることは、子どもにとってモデルとなり、ゲームにばかりのめり込んでしまうような状況に対して、良い影響を与える可能性もあります。

ぜひ夏休み期間は、ゲームもそれ以外の遊びも楽しめる機会を親子で話し合いながら作ってみてください。

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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