子どもがスマホを手放さないときどう関わる? 深刻なネット依存を防ぐために推奨する家族の関わり方とは
近年のネット依存リスクの高まり
子どものネット利用時間は年々増加傾向にあります。こども家庭庁が発表した最新の調査結果では、1日のネット利用時間の平均は、小学生が3時間半超、中学生が4時間半超、高校生が6時間超となっており、高校生の約半数が1日に「5時間以上」ネットを利用していることが明らかになりました。(1)学校に通っていて部活や塾などにも行っている場合を考えると、食事や入浴などを除く空いた時間はほとんどネットを使っているという状況と想像できます。
子どもがいつもスマホ等でのネット環境を手放さない様子をみると、親としては依存なのではないかと心配になるでしょう。
確かに子どもがネットを長時間利用することは依存のリスクを高める要因になります。中学生を対象にした研究でも、ネット依存傾向のグループとそうでないグループを比較したときに、明らかに依存傾向のグループの方がネット時間は長いことが報告されています。(2)
長時間だからといって、勉強や友人とのコミュニケーション、趣味など目的を持った利用の場合はすぐに依存とも言い切れませんが、ネット利用により生活に支障が出るようになるとネットの使い方を見直す必要が出てきます。
本人が問題意識を持っていない場合
子どもが自発的に問題意識を持ってネットの使い方を見直すということは一般的に多くありません。筆者がカウンセリングをしていても、まれに子ども本人から相談の問い合わせがくることがありますが,ほとんどの場合は家族が相談に来ます。そして家族を通して本人の相談への動機付けを高めるような関わり方をしてもらい、ようやく本人が来談されます。
そもそも依存の状態にあるときに、依存対象を自ら減らしたり、やめたりするのは非常に難しいことであり、不安や恐怖を伴うことさえあります。だからこそ、自分で依存していることを認め、変わろうと決断をするには時間がかかるものです。また子どもの場合は自分の状態を客観的に洞察する能力がまだ未成熟であり、より一層難しさがあります。
子どもに依存傾向が見受けられるときに、使いすぎを責めたり、時間を減らすように説得したりしても、子どもが素直に耳を傾けることはほとんどありません。先述したように、依存対象となっているスマホ等でのネット利用時間を減らすことを決断するのは時間がかかることであり、周囲から一方的に説得されてもむしろ「変わりたくない」気持ちを強めてしまうことも多々あります。
家族としてどのように関わるか
前提として、依存の問題については家族だけで問題を抱えるのではなく、医療機関や相談機関などで専門家に相談することの重要性は言うまでもありません。
その上での家族としての関わり方を紹介したいと思います。
まずは子どもがネットへの依存や使いすぎに気付いておらず、関心がないときは、むやみに批判したり、アドバイスや説得をしたりするのではなく、子どものネット利用に関心を持って、子どもが話すことに耳を傾けてみることから始めてみてほしいと思います。
その中で、子どもが抱えている困りごとや悩みごと等がないかにもアンテナを張ってみてください。依存の状態では、日常生活において勉強や対人関係など、どこかで無理をしていたり、頑張り過ぎていたり、うまくいかなくて困っていたりすることが多くのケースで見られます。その辛さや不安、ストレスをネットに没頭することで忘れたり、和らげていたりするのです。
ですから、最初からネット利用時間を減らそうというよりかは、依存せざるを得ないような背景があるとしたら、その問題を小さくすることにも目を向けることが大切であると考えられます。
子どもが胸の内を話せることが解決の一歩
表面的にはネットの問題に目を向けず、行動を変えるつもりがないように見えたとしても、心の中では「ネットの使いすぎだよな」とか「何とかしないと」という気持ちを少なからず持っていることも多くあります。しかし、ネットを使うことで得られる安心感やネットを使わないで過ごすことの苦痛や不安を考えると、現状維持を選択してしまうことになります。
行動を変えるためには、本人の中にある「やめたいけれどやめられない」という葛藤を解消する必要があると言われています。このような心の声を素直に話せるようになることが問題を解決するための一歩になるのではないかと思います。
引用文献
(1)こども家庭庁(2024)令和5年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」報告書
(2)Kawabe, K. et al. (2021). Article association between internet addiction and application usage among junior high school students: A field survey. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(9), 4844.
【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】