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連休明けでやる気が出ずSNSやゲームで現実逃避・・・五月病を乗り越えるネットとの付き合い方

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:イメージマート)

五月病は正式な病名ではありませんが、5月の連休明けくらいから何となく「やる気が出ない」「気分が落ち込む」「朝起きられない」といった心身の症状が出る状態を指します。進級、入学、就職などで新しい環境になり、慣れないことや新しい人間関係に対応する中で知らず知らずのうちに無理をしてしまい、ストレスを溜めてしまうことがあります。

このようにストレスを感じたとき、今や多くの人が行う対処行動がSNSへの書き込みやゲームでのストレス発散ではないでしょうか。もちろん一時的な気晴らしとしてSNSやゲームをするのは悪いことではありません。しかし、メンタルが不調のときにSNSを見てさらに落ち込んでしまうことやSNSのやり取りに疲れてしまうというケースもあります。ゲームでは、思い通りに勝てなくてイライラして言葉遣いが荒くなったり、ガチャで欲しいアイテムが出なくて課金し過ぎてしまうこともあるでしょう。

今回は五月病でメンタルが不調のとき、どのようにネットを使うのがよいのか、どのようにして不調を乗り越えるかについて解説します。

メンタル不調のときはSNSをしても良い?

前提としてSNSを見ることで気持ちが楽になるのであれば、使用することはメリットがあると思います。苦しいときや辛いときには、一時的にその気持ちを和らげたり、逃避したりすることは自分の身を守るためにも必要なことです。スマホを持っていれば、気軽に自分のことを理解してくれる友人に辛い気持ちを吐き出せたり、好きなものを眺めて気分を持ち上げたりできます。

しかし、SNSは一部の人にとって依存性があるため、過度に使い過ぎてしまうことがあります。そうすると、勉強や仕事がさらに手につかなくなったり、現実の人間関係を疎かにしたりするなど日常生活に支障が出てしまうことになります。

また、SNSは顔が見えないコミュニティで、匿名性があるために、過度にネガティブな書き込みや、攻撃的なリプライが目につくことがあります。気分や意欲が低下しているときは、健康的な状態であれば気にならないことも気になってしまい、不安や落ち込みを強めてしまうリスクもあります。

海外の研究ではSNSとうつ状態との関連について調査されており、多くの研究でSNSの使用頻度が高いほど、うつ傾向が高いということが示されています(1)。

このことからも、SNSは気分を楽にするくらいの「ほどほど」に使うのがよいということが言えるでしょう。また「SNSで何を見るのか」を出来る範囲で取捨選択することも大切です。ネガティブな投稿を多く見ていると、タイムラインに同じような投稿が上がってきて、自分の考え方や気持ちもネガティブなものになりやくなります。どのようなアカウントをフォローするのか、どのような情報を見ないようにするのか、自分の中で線引きをしておくことで、メンタルの悪化を防ぐことができます。

ゲームでストレス発散しても良い?

海外の研究によると、ストレスのレベルが高い人は、ストレスのレベルが低い人と比較して、ゲーム依存が深刻になりやすいという知見が示されています(2)。オンラインゲームは、その人にとって困難な問題やストレスの多い状況に直面したときに、逃避したいという欲求を満たすのに役立つ一方で、楽しみのためではなく、苦痛から逃避する手段としてゲームをするようになると、「ゲームなしでは生きられない」ということにもなりかねません。

また、同じ研究では、心の立ち直る力である「レジリエンス」が高い人ほど、ゲーム依存傾向が低いという結果も示されています。つまり、困難な状況を経験して気持ちが落ち込んでも、気持ちを立て直し、また頑張ろうと思える力がある人は、オンラインゲームのような刺激的な活動に気を取られにくいということが考えられます。

SNSと同じようにストレスを感じたときにゲームで発散するのはたまには良いかもしれませんが、ゲームだけがストレス発散とならないように、友人と出かけてみる、体を動かしてみる、音楽を聞いてみる、など他の気晴らしを複数持つことが大切です。また、何か嫌なことや辛いことがあって落ち込んだとしても、また前を向いて問題を乗り越え、立ち直ることができるかということもポイントになりそうです。

問題に向き合うコツとは?

五月病は、慣れない環境や人間関係で頑張り過ぎた結果、心身に不調が出ている状態であると冒頭で説明しました。それでは、連休明けで、ストレスとなる状況や困難な状況などの問題に対してどのように向き合っていけばよいのでしょうか。

さきほど紹介した「レジリエンス」をもとに考えてみると、レジリエンスというのは、辛いことがあっても落ち込む様子をみせずに動じないことではなく、辛いことがあれば落ち込むものの、それを引きずらずに立ち直ることであり、決して無理をするのではないと説明されています(3)。

つまり、勉強が辛いとか、気の合わない友人がいるなど目の前の問題をSNSやゲームをすることで見ないようにしたり、あまり大したことはないと過小に評価したりするのではなく、一旦「辛い」「苦しい」という自分の気持ちを受け止めることが必要かもしれません。その上で、誰かに相談し、頼りながら、一人で問題や困難を抱えないということも大切です。もし身の周りの人になかなか相談できないということであれば、心理士など心の専門家によるカウンセリングを利用することも一つの手段です。日本では、心の病気になった人がカウンセリングを受けるものだという認識がいまだ根強いように感じますが、辛いときに気持ちを整理する場として気軽にカウンセリングを利用しても良いと思います。

そして、気持ちを整理してまた前を向いていこうと少しでも思えたときは、100%すべてやろうとするのではなく、今自分が出来るレベルの目標から少しずつ取り組んでみてください。

最後に、学校や職場の環境が自分に合っていなくて、気分の落ち込みや無気力、集中力の低下、不眠、食欲低下などの症状が持続する場合には単なる五月病ではなく「適応障害」や「うつ病」が隠れている可能性もあります。そのような場合には早めの段階で心療内科や精神科の受診を検討してください。

引用・参考文献

(1)Vidal, C., Lhaksampa, T., Miller, L., & Platt, R. (2020). Social media use and depression in adolescents: a scoping review. International Review of Psychiatry, 32(3), 235-253.

(2)Canale, N., Marino, C., Griffiths, M., Scacchi, L., Monaci, M., & Vieno, A. (2019). The association between problematic online gaming and perceived stress: The moderating effect of psychological resilience. Journal of Behavioral Addictions, 8(1), 174-180.

(3)藤野博・日戸由刈 監修(2015)発達障害の子の立ち直り力「レジリエンス」を育てる本 講談社

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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