『檸檬』→『レモン』林檎→『リンゴ』―果物を片仮名にする理由【記者的言葉解説】
5月16日に、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(以下、ポッカサッポロ)が開催した「レモン食育イベント『レモンじゃカー』お披露目会」の取材に行ってきました。これは、ポッカサッポロのレモン公式キャラクター『レモンじゃ』をあしらったキャラバンカー『レモンじゃカー』をお披露目したイベントです。
レモンを使った商品を多数製造・販売しているポッカサッポロは、“レモンそのもの”の健康価値を多くの人に知ってもらう目的で、小学校への出前授業や夏休み自由研究応援企画、科学技術館でのレモン実験教室などの食育活動に力を入れています。
今回、筆者が取材したイベントは、かわいらしい『レモンじゃ』が描かれたキャラバンカー『レモンじゃカー』のお披露目で、この『レモンじゃカー』が今後、量販店やイベント会場をまわる予定とのこと。
そのキャラバンカーでは、集まった方にレモンの作用を分かりやすく説明した紙芝居を披露したり、キレート作用(※カルシウムを溶けやすい形に変えるクエン酸の作用)について知ってもらうために、牛乳(カルシウム)にレモン果汁を垂らした『レモンラッシーを作る実験』をして提供したりと、“レモンそのもの”の健康価値を伝えていきます。
筆者も取材してみて、とても勉強になり楽しいイベントでした(レモンラッシーも自然な甘みと爽やかな風味でおいしかったです)。今回は記者として、別視点から記事を書いてみます。それは「レモン」という表記について。
筆者はこの記事で、漢字の「檸檬」ではなく、片仮名で「レモン」と書いています。これはニュース記事でもそう書かれますし、今回のポッカサッポロのレモン公式キャラクター『レモンじゃ』の名前も、片仮名表記になっています。
この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。知ればニュースを読むのが「ちょ~っとだけ楽しくなる」かも……しれません。(構成・文=コティマム)
例外が多い「動植物表記」でも『檸檬』は片仮名にする必要がある
すでに、「ニュース記事で書かれる『熊』は『クマ』になっている! 片仮名表記にする理由は?」の記事でも書いていますが、記者たちが原稿を書く際に使用する記者ハンドブックや用事用語辞典などでは、「動植物名の書き方」のルールが決められています。
おさらいになりますが、例えば記者ハンドブック(共同通信社)では
とされていて、動植物に関しては、通常はそのまま漢字で書くことができる表示内(常用漢字)の文字でも、「基本は片仮名書きにする」というルールがあります。動物の場合、例えば熊は「クマ」、猫は「ネコ」などと表記されますし、野菜の人参は常用漢字ですが「ニンジン」と書きます。
この動植物表記は例外も多く、「表内字・表内音訓であれば漢字表記できる動植物」もあり、各媒体によっても片仮名ではなく「漢字や平仮名で書く」としているところもあります。野菜の中では「大根」や「白菜」は、「ダイコン」「ハクサイ」とは書かず、そのまま漢字表記が使われています。つまり一概に「絶対に片仮名でなければいけない」と断言できないのです。
しかし今回の「檸檬」に関しては、片仮名にすべき理由があります。
『檸檬』も『葡萄』も『葱』も常用外漢字
「檸檬」という漢字は、そもそも「表外漢字」なのです。表外漢字とは表内字(常用漢字)の反対で、常用外漢字のこと。記事内では「常用外漢字は使わない」「常用外漢字は平仮名に直す」「難しい(読みづらい)漢字は平仮名に直す」などのルールがあり、基本的には平仮名に直しています。例えば「嬉しい」という文章は、「うれしい」と書き換えます。
しかし動植物の場合は、例外はありつつも「基本は片仮名で」とされているので、常用外漢字の「檸檬」を、平仮名の「れもん」ではなく、片仮名の「レモン」と書き換えています。その他にも、「葡萄」も常用外漢字なので「ブドウ」、「葱」も常用外漢字なので「ネギ」としています。
また「林檎」に関しては、「林」は常用漢字ですが、「檎」が常用外漢字。合わせると「林ゴ」となりますが、読みづらいですよね。常用外漢字が使われているので「林檎」も「リンゴ」に書き換えていると考えられます。
「檸檬」などの常用外漢字を片仮名にするのは分かりやすい例ですが、先述の常用漢字の「白菜」や「大根」がそのまま漢字表記なのに対し、「ニンジン」は「人」も「参」もどちらも常用漢字なのに片仮名になっています。動植物の表記ルールは、記者からしても「どっちなんだろう」と迷うことも多いです。どこまでが漢字で、どこからが片仮名なのか、ハッキリとした線引きが難しいところ。その都度、覚え直したり、確認したりしています。
ちなみに、「白菜」や「大根」に関して、テレビ局で報道ニュースを放送している筆者の夫や、番組担当者と話をしたことがあるのですが、「学術的な表記に合わせて、動植物は片仮名表記が基本だけれど、最近では“普段使いで慣れている・見慣れている表記”に合わせて漢字にすることもある」とのことでした。
まとめ
普段何気なく読んでいるニュース記事は、多くの“言葉のルール”にのっとって書かれています(この『のっとって』も漢字表記ではなく、平仮名書きという表記ルールがあります)。
テレビや新聞、ネットなどのニュースで動物や植物名を見かけた際は、漢字なのか片仮名なのか、チェックしてみてくださいね。今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。
今回の取材については、筆者のブログ『プレスエリアを陣取る3歳児』でも様子をつづっています。言葉に関する記事については、「【記者的言葉解説】子供は”お供”じゃないから『子ども』? 平仮名と漢字はどちらを使う?」もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。
※今回の記事は、取材内容や写真に関してポッカサッポロ様に掲載許可と原稿確認をいただいた上で公開しています。取材中にレモンラッシーの試飲をいただきました。本記事制作にあたって はガイドラインに基づき公平中立に制作しています。