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子供は”お供”じゃないから『子ども』? 漢字表記はNG?【記者的言葉解説】

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
出典:フォトAC

 6月5日に、「子ども子育て支援金」を創設する「改正子ども子育て支援法」が参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立しました。「子ども子育て支援金」は、児童手当の拡充など岸田政権の少子化対策を盛り込んだもの。財源のひとつは公的医療保険への上乗せです。制度が確立するのは2028年度ですが、26年度から徴収が始まり、加入者1人あたり平均で月450円とのこと。サラリーマンなどの加入する被用者保険では、被保険者1人あたり平均で月800円と試算されています。

 現在、小学生と未就学児の2人の娘を育てている子育て世代の筆者としても、気になる話題です(子どもが2人の筆者は、第3子以降の児童手当の倍増は関係がありませんが、高校生代までの延長は恩恵を受けます。その代わりの支援金徴収ですが、野党からは「増税だ」と批判も出ていますね)。

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 さて、この記事に出てきた「子ども・子育て支援金」ですが、『子ども』の『ども』が『供』ではなく平仮名になっていますよね。実はニュース記事などでは『子供』と書かずに『ども』を平仮名で書くことが多いです。筆者も芸能記者になったばかりの頃、真っ先に覚えたのは「子供→子どもに直す」でした。でも実はこれ、「供」が絶対にNGな理由はないのです。

 この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回は『子ども』の表記についてご説明します。知ればニュースを読むのが「ちょ~っとだけ楽しくなる」かも……しれません。(構成・文=コティマム)

実は『子ども』も『子供』もどちらも使える

 記者たちが原稿を書く際に使用する記者ハンドブックや用事用語辞典では、「常用外漢字は使わない」「常用外漢字は平仮名に直す」「難しい(読みづらい)漢字は平仮名に直す」などのルールがあります。

 しかし、『子供』の『供』は常用漢字。つまり本来は、わざわざ平仮名にしなくてもいいのです。実は記者ハンドブック(共同通信社)にも『子供・子ども』とどちらも書かれていて、

〔注〕一般には「子ども」が多く使われている。祝日は「こどもの日」。

と注意書きがあります。

記者ハンドブック(共同通信社)
記者ハンドブック(共同通信社)

『ども』にしなければいけない理由は特に書かれていないのですが、筆者が上司や先輩方から教わった際は、「『供』の持つ意味から配慮されているのでは」という見方が多かったです。『供』には「お供をする」などの意味があることから、子どもが「大人の付属物や所有物だ」と連想させてしまうことを懸念し、平仮名にしている、というものです。

出典:フォトAC
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 しかし先述しましたが、『供』は常用漢字なので、本来は平仮名にする必要はありません。2013年には、文部科学省が「公用文には『子供』と統一すること」を周知させるように指示しています。

 また、『日本国語大辞典(第二版)/小学館』によると、『子ども』の『ども』はもともと複数を表す(子ら、子たち/children)とされ、室町時代には『子等』と書かれており、後に『供』となっていったようです。現在では複数の意味が消え、『子供』で単数を表す(child)文字として定着したようで、そこでは「付属物」や「所有物」といったマイナスの意味については触れられていません。

 それでも、ニュース記事などでは『子ども』の使用が目立ちます。

「こども家庭庁」は『こども』表記を推奨

 筆者がこれまで携わってきた媒体は、すべて『子ども』という書き方をしていましたし、現在担当している媒体も『子ども』と書いています。

 しかし、校閲講座などを開講しているある新聞社では、『子供』と表記していました。筆者がこの校閲講座を受講した際、多くの受講者から「平仮名にしなくていいのですか」と質問が出ました。結局、『子供』も『子ども』もどちらでも間違いではなく、媒体がそれぞれ表記を決めているようです。

 そして『子供』『子ども』の他に、すべて平仮名の『こども』の表記もあります。23年4月に設立された「こども家庭庁」は平仮名なのです。「子ども子育て支援金」や「改正子ども子育て支援法」は『子ども』表記なのに、「こども家庭庁」は平仮名。子どもという表記は、本当にバラバラです。

 実は「こども家庭庁」は、『こども』という平仮名表記を推奨しているのですが、長くなりましたので、こちらのお話はまた後日。続編をお待ちください。

まとめ

出典:フォトAC
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 普段何気なく読んでいるニュース記事は、多くの“言葉のルール”にのっとって書かれています(この『のっとって』も漢字表記ではなく、平仮名書きという表記ルールがあります)。

 子供、子ども、こども……。皆さんの周りでは、どの書き方が多いですか。筆者はついつい、普段のLINEやブログでも原稿を書く時と同じ『子ども』と書いてしまいます。新聞やニュース、学校で配られるプリントや資料、法律名などなど、それぞれで表記が違っています。ぜひチェックしてみてくださいね。

 今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。言葉に関する記事については、「【記者的言葉解説】『関わらず』って書いていませんか? 実は、間違いです!」もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。歌舞伎や舞台、芸能イベント、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5200回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』など。24年11月に合同会社パラレルコネクトの設立メンバーに。メディアやインフルエンサーと企業をつなぐサポートもしています!

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