ウメ(梅)のマネをしている花?八つの手の葉?冬の花の“勘違いしやすい由来”【花キューピット取材】
自宅に飾ったりお庭で育てたり、プレゼントに贈ったりと、見る人を幸せな気分にしてくれるお花。それぞれのお花に花言葉があり、贈る際は伝えたいメッセージから選ぶこともできますよね。実はお花の中には、その名前の由来が珍しいものもあるのです。
※花言葉についてはこちら:バラの花言葉は本数で意味が違う―1本は一目ぼれ、999本は?感謝は何本?花キューピットに聞いて来た!
今回は、元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、一般社団法人JFTDが運営する『JFTD学園日本フラワーカレッジ』のフラワーデザイン講師・大喜多映美さんと、JFTDのグループ会社でフラワーギフト専門ECサイトを運営する花キューピット株式会社の広報担当・三木有子さんに、花のスペシャリストを育てる学校の授業内容や、珍しい由来のお花についてお聞きしました。(取材・文=コティマム)
経営学に会計学、花の歴史や知識だけでなく“ゴミの仕分け”も教えるJFTD学園日本フラワーカレッジ「豊な人間性を育む」を意識
一般社団法人JFTDは、日本国内で生花の通信配達を目的として設立された法人です。1953年に任意団体として始まり、1984年には生花通信配達システムを『花キューピット』と名づけました。1991年には花き業界の未来を担うフローリストの後継者育成を目指し、『JFTD学園日本フラワーカレッジ』を開校。2021年に創立30周年を迎え、現在までに約1600人が卒業しています。
筆者が『JFTD学園日本フラワーカレッジ』の教室を訪れると、約40人の学生さんが冬の季節に映えるフラワーアレンジメントを制作していました。
――学生さんがキレイなフラワーアレンジメントを作っていましたね。『学園日本フラワーカレッジ』ではどんなことが学べるのですか。
『JFTD学園日本フラワーカレッジ』フラワーデザイン講師・大喜多映美さん(以下、大喜多)「もともと花業界の後継者を育成する目的で設立されたので、花の技術だけでなく花店を経営するための経営学、会計学、花の歴史、文化、植物についての知識を深めます。通常2年間かけて学ぶ技術や理論を1年間という短い期間で学び、卒業します。
――今回やっていたフラワーアレンジメント制作は実技の部分にあたるのでしょうか。
大喜多「花をいけるアレンジメントや、花束やウエディングブーケを作ることなど、自然のままでも美しい花の魅力をさらに引き出し表現、造形することを総称してフラワーデザインといいます。今回教室でやっていたアレンジメントも、いろいろな形や器、さまざまな花材があります。花束も縦長のワンサイド、丸く作るラウンドなど基本のスタイルがあるので、花材を応用したり形を変えたりして学んでいきます。ブーケやコサージュ制作などの授業もあります。一学期が基礎編、二学期が応用、三学期は実践という形で、卒業後すぐに働ける技術を身につけます。
カリキュラムも後半になると、実際に教会やホテルの宴会場、パーティー会場などを設定に装飾するなど、外の現場で花をいけることを学ぶ実践的な授業もあります」
――技術や知識以外に学生さんに伝えていることはありますか?
大喜多「学校の母体となっている『一般社団法人JFTD』の思いでもありますが、“人の気持ちを相手に伝える手段として花を贈る”という文化を培ってきました。『人に気持ちを届けること』を大切にしたいので、『人を育てる』というところも力を入れています。
例えばキレイなお花がいけられていても、雑に扱ったり、まだ咲いているのに用がすんだから捨てたりするのは、人としてどうなのか。花の生産者の苦労を知り、『この花を大事にする』という気持ちの部分も含めて学生に指導しています。“豊な人間性を育む”という点を意識しながら、学生たちと向き合って過ごしています」
――気持ちや態度の部分も大事にしているのですね。
大喜多「お花を苦労して大事に育てていることを知るため、授業では花の産地見学にも行きます。また、生産者から花屋に届いて、お客さまの手元に届くところまでの流れ、つまり“流通のしくみ”も同時に理解してもらいます。生産現場を見ることで、花を大事にする気持ちを持ってほしいです」
――学生さんに厳しく伝えているのですか?
大喜多「そこはもう、すごく厳しく指導しています。結構怖いです(笑)叱ります! どうしても、授業で作品を“物”みたいな感覚で扱い、授業後に短くなってしまった花を捨ててしまうような学生もいます。毎日花を扱っていると、自宅に置き場所もなくなって大事にしなくなってくることもあるので、そこは何度も伝えます。またゴミの捨て方も厳しく指導します。事業ゴミと家庭ゴミの分別も違いますので、混乱する学生さんもいますから、そこは厳しく教えています」
大喜多「花屋は仕入れ時の段ボール、水揚げのときに出る不要な枝や葉、ラッピング資材などの処理や廃棄をしなければならないものが意外と多いです。そのため、回収されたゴミを『後で誰かが片付けてくれていること』を想像して、『自分たちができることはちゃんとしなさい』と伝えています。
細かいことですが、『長い茎をそのまま捨てない』『ゴミをなるべくコンパクトにする』など、習慣になるまで口うるさく言わないと、なかなか身につきません。そこはお花屋さんに就職してからも言われる部分なので、即戦力を育てるためにも授業で感じてもらいます。
常にお店をきれいにする。やることが分からなかったら、とにかくほうきを持ってそうじをする。そういった事が“考えるより前に自然に動けるようになれば”と思い、厳しくするところは厳しくしています」
ウメに似ている(?)ウメモドキや“たくさんの手”があるヤツデ 植物の珍しい名前の由来
――今回授業で制作されていたフラワーアレンジメントは、赤いバラや赤い実のついた、クリスマスにも使えそうな豪華なアレンジメントでした。
大喜多「今回のアレンジメントに使用したのは、バラの他に赤い実が印象的な『西洋ウメモドキ』です。別名『ウィンターベリー』といいます。名前の通り冬にかけての花木です。秋から冬にかけて“実”のものが流通するのですが、葉が夏頃からグリーンになり、実が赤く色づくのは寒くなってからです。
今回使っているのはウメモドキの中の『西洋ウメモドキ』で、もともとのウメモドキはもう少し実が細かいです。『西洋ウメモドキ』は海外から入って来たもので少し品種が違い、一回り大きくて鮮やかな身をつけます。
また、緑色の手を広げたような形の葉は『ヤツデ』です。こちらは年中出ているグリーンです。それから今回授業で『タイサンボク』という枝を使う練習をしたかったので、取り入れました。『タイサンボク』は枝が太く葉が大きいグリーン。葉だけ外して乾燥してもグリーンの色が残り、葉の表と裏で色が違うので、クリスマスのリース制作にも使われます」
――バラや西洋ウメモドキの鮮やかな赤色と、ヤツデやタイサンボクの緑色のコントラストがキレイです。バラには「愛」という花言葉があり、本数によって花言葉の意味が違うとお聞きしたのですが、この「西洋ウメモドキ」にも花言葉はありますか?
花キューピット株式会社広報担当・三木有子さん(以下、三木)「『ウメモドキ』や『西洋ウメモドキ』の花言葉は『知恵、明朗、深い愛情』です。実は『ウメモドキ』という名前の由来は、『葉や枝がウメに似ていると言われている』からです」
――葉や枝ですか? 「赤い実がウメに似ているから」ではなく?
三木「そうです。『葉や枝がウメに似ている』というのが由来で、花や実の方を指しているのではないそうです(笑)」
――ちょっとややこしいですね(笑)てっきり実の方が“ウメをマネしている”という意味なのかと思っていました。葉や枝はあまりウメに似ていない気もしますが(笑)
三木「赤い実の方がウメに似ていそうですよね(笑)。他にも『セリモドキ』『サクラソウモドキ』など、“モドキ”とつく植物はあるようです。またご紹介した『ヤツデ』は、葉が深く複数に切れ込んでいるため、“八つ手”の名前がついたと言われています。ただ、『8』は『たくさん』という意味でつけられていて、実際に裂ける枚数は7枚、9枚など奇数であることが多いです。中には11枚のものもあります」
――そうなのですね。花言葉だけでなく、植物名の由来も知ると面白いですね。
これからクリスマスも近づき、お花を飾ったりプレゼントしたりするシーズンです。お花を選ぶ際には、花言葉や名前の由来も探ってみると面白いかもしれません。
ちなみに、ニュース記事などでは植物の表記は片仮名で表します。今回の場合は『梅』ではなく『ウメ』です(詳しくはこちら:『檸檬』→『レモン』林檎→『リンゴ』―果物を片仮名にする理由【記者的言葉解説】)。
言葉に関する記事については「子供は”お供”じゃないから『子ども』? 漢字表記はNG?【記者的言葉解説】」もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。
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