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国会は「国権の最高機関」ではない?!…政治・政策リテラシー講座18

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー

拙記事「なぜ官僚主導になるのか?…政治・政策リテラシー講座17」で、日本ではなぜ政策形成が官僚中心、官僚主導なのかを説明しました。そのこととも関係するのですが、日本での政策形成や予算作成が、内閣つまりその実態は行政(官僚機構)によって行われています。

それは、憲法上も、また形式的には「議院内閣制」という形で、国会(立法)が行政(官僚機構)の上位に位置することになっているのですが、実際には「官僚内閣制」ひいては「官僚(行政)議院制」ともいうべき行政(官僚)と立法(国会)の逆転現象が起きていることを意味しているのです。

そのため、国会議員は、政策や法案、予算に対して影響力をもてるようになるために、できるだけ内閣のメンバーになることを望むようになるのです。内閣のメンバーとなりそのような影響力をもてることで、有権者にアピールできるので、再選がより可能になります。また自己の政治的パワーを誇示でき、より強い政治権力を得られることになるのです。

しかしながら、極端な別のいい方をすると、このために、議員の方々は、知らず知らずのうちに、議員内閣制や国会の優位性を貶めてしまっていますし、官僚機構を強化させてしまっているということにもなるのです。

このようなことは、国会内で与党を形成する政党やそこに所属する議員であればあるほど、影響力を増大させるためにそのような志向が強くなるのです(注1)。そのことが、官僚主導の政策形成の環境をさらに強化することになっているのです。

この結果というか、この現実を補強・補完する形で、国会議員にとって、政党内や国会内で経験を積み、役職を経験することは、最終的には内閣内での役職(最終的には大臣そして可能なら総理大臣になること)を得るための単なるプロセス、キャリアパスになっているのです。これがいわゆる「大臣病」(注2)といわれる言葉に表れる政治の現象につながるわけです。

三権分立が実現しているのであれば、国会の各委員会の長は、内閣の大臣に匹敵するポストのはずです(注3)。そして、もし議院内閣制が本来的に実現していれば、委員会の委員長の方が、大臣のポストより上位にあってもおかしくないはずです。が、実際にはそうなっていないのです。

要するに、日本では、制度的にもまた実態的にも、内閣(行政、その実態は官僚機構)が国会に対して優位性を有していて、実際には憲法上の「国権の最高機関」(注4)になっていないのです。

(注)野党、特に政権交代で与党になる意思のない政党やその所属議員は、このマインドに陥ることはない。しかし彼らは、国会の多数になることはなく、現在の国会(立法)を大きく変革する力にはなりえないのである。他方、過半数を占める与党およびそれに代わりうる政党に属する議員が国会でかなりの多数を占めているのは、当然である。彼らのマインドは、内閣(行政)に近づき、できればその一員になり、政策形成に影響力を行使することを目指すことになる。つまり、行政中心の政策形成の状況を強化する方向に向かうことになるのである。

(注2)「大臣病」とは、国会議員が国務大臣になりたがる志向のことを指します。

(注3)米国は大統領制を採用していて、より厳格な三権分立が実現しています。そのため、連邦議会(特に上院)の委員会の委員長のポストは非常に重要な位置づけになっています。それに対して、米国における長官(日本における内閣の大臣)などは、英語で「Secretary」と呼ばれていて、要は大統領に仕える秘書ともいうべき立場にあるのです。

(注4)日本国憲法第41条に規定されています。

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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