井上尚弥戦のKO負けから復活のロドリゲス 久々戴冠し、「統一戦の準備はできている」
8月12日 メリーランド MGMナショナルハーバー
IBF世界バンタム級王座決定戦
元王者
エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ/31歳/22-2, 13KOs)
3-0判定(120-105x3)
メルビン・ロペス(ニカラグア/25歳/29-2, 19KOs)
“悲運の元王者”がついに世界王座に返り咲いた。
プエルトリコの実力派ロドリゲスがロペスとのペース争いを制し、12回には3度のダウンを奪う完勝だった。序盤から右目が腫れ、コミッションからは「パンチによるもの」と判断されてTKO負けの危機にも晒されたが、非常事態でも最後まで冷静さを失わないパフォーマンスは見事。2019年5月、井上尚弥(大橋)に2回KOで敗れて以来、実に4年ぶりの戴冠劇である。
WBCエリミネーターで対戦予定だったルイス・ネリ(メキシコ)の体重オーバーによる試合中止、ノニト・ドネア(比国)のコロナ感染によるWBC王座決定戦のキャンセル、優勢に見えたレイマート・ガバリョ(比国)とのWBC暫定戦での不運な判定負け、ゲーリー・アントニオ・ラッセル(アメリカ)とのWBAエリミネーターでの初回16秒の負傷ドロー・・・・・・。
次々と押し寄せる不運にも負けなかった逞しいテクニシャンは、何を思ってこの日のタイトル戦を戦い抜いたのか。井上尚弥が返上したIBFバンタム級王座を取り戻したロドリゲスは試合後、数人の記者たちにその胸中を明かした。
(以下、英語/スペイン語通訳を介しての一問一答)
世界王座への復帰で「使命を果たした」
――今夜の自身のボクシングに満足していますか?
エマヌエル・ロドリゲス(以下、ER) : とても満足していますよ。それほど多くのパンチを出したわけではないかもしれませんが、的中率は極めて高かったはずです。コーナーからは11回に「倒しにいけ」と言われ、実際に12回にはKOする寸前までいきました。レフェリーはストップはしませんでしたが、自分的にはTKOでよかったと感じました。
――バッティングで負ったかもしれない右目のケガが地元コミッションにはパンチによるものと判断され、ストップの不安は感じなかったですか?
ER : 私のチームのおかげで冷静でいられました。腫れは激しくなっていきましたが、セコンドからは「何とかするから」と言われ、実際にそうしてくれました。おかげで試合はストップされずに済んだのです。
――井上尚弥戦のKO負けのあと、ガバリョ戦では優位に試合を進めながら判定で敗れました。その後、キャリアを立て直すのが至難だとは思わなかったでしょうか?
ER : ガバリョ戦のあとも、失ったものを取り戻すのが難しいとは考えませんでした。あの試合では、私が明白に勝ったと誰もが理解していたからです。その後もハードワークを続け、ここに辿り着いたことを嬉しく思っています。
――世界王座奪還という目標を果たしたことへの満足感はありますか?
ER : 使命を果たしました。メキシコでの6週間に及ぶ厳しいトレーニングキャンプが報われたのです。私は今後も長くトップに立ち続けるつもりでいることを、プエルトリコの人々にはわかっておいて欲しいです。それと同時に、行く手にはより厳しい試練が待ち受けていることも理解しています。
――今後、統一戦が目標になると思いますが、WBAタイトルはあなたが敗れた
井上尚弥選手の弟、井上拓真(大橋)選手が保持しています。井上弟との対戦を希望しますか?
ER : 拓真でも、アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ/WBC王者)、ジェイソン・マロニー(オーストラリア/WBO王者)でも、誰でも構いません。統一戦に臨む準備はすでにできています。
――1階級下にはファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)といった人気選手がいますが、バンタム級統一戦がプライオリティなのでしょうか?
ER : はい、私はサンティアゴと戦いたいです。
――女子7階級制覇王者のアマンダ・セラーノが「プエルトリコにまた世界王者が誕生した」と喜びのメッセージを送っていました。母国を代表することの喜びは感じていますか?
ER : プエルトリコが誇る5人目の現役世界王者になれたことは大変な名誉です。アマンダがそう言ってくれたのは嬉しいし、感謝しています。