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ホラー、スプラッター、SF。シッチェス映画祭の46本から厳選9作のおススメ

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
第2位『Planet B』の1シーン

スペインのシッチェスの国際ファンタスティック映画祭(10月3日~13日)に行って、今年もホラー、スプラッター、SFを見まくってきた。毎日6本、計46本見た中から、カウントダウン形式でおススメの9作を紹介する。

※今回はとりあえずのダイジェスト。詳しいレビューは今後アップしていく予定です。

第9位:『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』/アクション 

香港にあった九龍城砦を舞台に戦う男たちがやたらカッコいい。アクションも凄いが、セリフとポーズが粋で痺れる。金が正義である今、殴り合いや仁義は時代遅れなのだが、90年代半ばまでこんな世界があったのだ。

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第8位:『Continent』/ホラー

父が危篤の報を受け、農場に跡継ぎとして帰って来た娘が見たものは……。ブラジル南部には民主主義は無いのか? 大地主と小作人の間に雇用契約なんてものは無く、両者を結び付けていたのは、濃厚で双依存的な「血の契り」だった。

第7位:『Meanwhile on Earth』/SF

主人公の周辺だけの小さなお話だが、設定の面白さで引き込まれる。宇宙空間で行方不明になっているお兄さんを助けてくれるのと引き換えに突き付けられる条件とは……。SFに必ずしも特撮が必要無い、という好例。

第6位:『Rich Flu』/SF

金持ちのとんでもない生活を見せてから起こる大パニック……。こんなウイルスが流行ればいいのに、と不謹慎ながら思ったのは私だけではないだろう。『プラットフォーム』の監督の新作で、前作同様、不公平・不平等への嫌悪がよくわかる。

第5位:『Steppenwolf』/アクション

大好きなヘルマン・ヘッセの同名小説の主人公よりも、本作の主人公は「生ける屍的」だ。刹那的で行き当たりばったりで共感力ゼロの男に、「荒野のおおかみ」という名を付けるのは、生存本能がある本物の狼に失礼だと思う。しかし、自分も彼の境遇ならそうなるかも……。主人公2人の演技も良い。

第4位:『Nightbitch』/ホラー、コメディ

大好きな『ノクターナル・アニマルズ』のエイミー・アダムス主演だが、役作りでここまで違う体型を作り上げた女優魂が素晴らしい。「イクメン」という言葉に違和感を抱く女性たちが共感間違い無しの、子育てのリアルを突き付けてくる。

第3位:『Strange Darling』/スプラッター

予想外こそ面白い。先が読める物語が面白いわけがない。章立てを崩し、時間軸をバラバラにして、我われの思い込みや予断を砕いてくれる。見終わった後、いかに自分が予定調和やステレオタイプに毒されているのかを気づかせてくれるのが、快感だ。

第2位:『Planet B』/SF

どんどん悪くなる実感がある世の中。もの凄く近い未来、2039年のパリがこれほど暗い世界になっていても何ら不思議ではない。技術的にはこんな拷問は近いうちに可能で、モラルだけが歯止めになっているが、それがいつ外れてもおかしくない。

第1位:『The Substance』/SF、ホラー

断トツの1位。「『The Substance』以外ではどれが好き?」が、シッチェスに集まったジャーナリストの間で口癖になっていたほど。過去のこの映画祭で見たどんな作品よりも優れている。この作品についてはここに書いた。

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※写真提供はシッチェス映画祭

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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